イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【イスラム国(IS)】新指導者への忠誠表明で結束誇示(3)シリア各地からの忠誠

◆正体不明の新指導者への求心力は未知数
武装組織「イスラム国(IS)」がバグダディの後継として発表した新指導者。だが、これまでのところ公式には「アブ・イブラヒム・アル・ハシミ・アル・クライシ」の名前しか明らかにされていない。新指導者への忠誠キャンペーンを展開するISだが、正体不明の人物を「カリフ」と発表しても、どれだけ各地のIS戦闘員やシンパから求心力が獲得できるかは未知数だ。今後のISがどのように新指導者像を作り上げていくのか、その動向が注目される。
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【忠誠表明地域一覧】 IS新指導者発表から1か月間の各地からの忠誠(バイア)表明一覧。(すべて把握していないので一部抜けている地域があるかもしれません) 忠誠表明で広範なネットワークを誇示したISだが、短期間に各地に一斉に指示を出して戦闘員を動かすのは、各国の捜査当局に情報網を把握される危険もある。それでもあえてこうした行動に出た。意図のひとつは結束と勢力の誇示、そしてもうひとつが「後継カリフが各地の支持を得ており、宗教的に正統」とする既成事実づくりもあったのではないか。(一覧は2019年11月時点の情報)

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【シリア(ハイル=デリゾ-ル)】 シリア・デリゾールに残存するISによる新指導者への忠誠表明。ISは昨年3月、シリア南東バグーズのシリア民主軍(SDF)との戦闘で最終拠点を失ったものの、残存部隊が潜伏し、各地で自爆攻撃や暗殺を続けている。デリゾールは東部が民主軍、西部をシリア政府軍が固めている。ISは両方に攻撃を仕掛けている。写真中央の自動小銃、ステアーSUGをシリアのIS戦闘員が手にする姿は珍しい。左後ろの男の腰には自爆ベルトが見える。(2019年11月7日・シリア・IS写真)

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【シリア(ラッカ)】 ラッカではシリア民主軍(SDF)に対する攻撃だけでなく、地元の行政当局関係者も「背教徒」として標的となっている。自爆攻撃だけでなく、暗殺戦も頻発。また農村の畑の焼き討ちも起きている。潜伏するISの残存地下部隊は、ハラヤ・ナイマ(=スリーパー・セル)と呼ばれる。(2019年11月7日・シリア・IS写真)

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【シリア(バラカ=ハサカ)】シリア東部ハサカでの攻撃対象は、シリア民主軍(SDF)と人民防衛隊(YPG)。ISはSDF・YPGともに左翼志向の強いクルディスタン労働者党(PKK)が母体となっていることから、「PKK無神論者」と呼ぶ。(2019年11月9日・シリア・IS写真)

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【シリア(バラカ=ハサカ)】写真の左から2番目の男はスプレッサー(サイレンサー)をつけた銃を手にしている。消音銃による暗殺戦は顕著で、行政職員も標的に。(2019年11月9日・シリア・IS写真)

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【シリア(ホムス)】 シリアのデリゾールとタドムル(パルミラ)を結ぶ地域スフナ一帯では、小規模部隊を維持し、シリア政府軍への奇襲戦などを繰り返す。(2019年11月7日・シリア・IS写真) 2015年にISがスフナ制圧した当時の写真>>

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【シリア(ハウラン=ダラア)】 シリア南西部ダラアにはIS系武装組織ハリッド・イブン・アル・ワリード軍が活動してきた。2018年中頃にシリア政府軍の攻勢で組織は敗退。その後、ISはダラア、クネイトラ、スウェイダ一帯のエリアをハウラン県(州)と呼ぶ(2018年7月頃に初めて登場)。IS統治実態はないが、シリア政府軍へのゲリラ攻撃を続けている。(2019年11月5日・シリア・IS写真)

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【シリア(ハウラン=ダラア)】 かつてのようにISが町を統治したような状況はすでにないが、シリア政府軍へのゲリラ攻撃をこの一帯で続けている。手を重ね、新指導者に忠誠を誓う写真が各地であいついでいることから、写真撮影のアングルまで指示が及んでいるとみられる。(2019年11月5日・シリア・IS写真)

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【シリア(アレッポ)】 アレッポ近郊のISの活動としては1月にマンビジで米軍に自爆攻撃をかけ、米兵らが死亡、トランプ大統領のシリア撤退政策にも影響を与えた。(2019年11月12日・シリア・IS写真)

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【シリア(アレッポ)】 10 月、クルド主導勢力のシリア民主軍(SDF)エリアをトルコ軍が越境攻撃し、トルコが後押しする自由シリア軍系の反体制派組織が国境地帯で勢力を広げた。米軍はシリア北部から部分撤収を開始し、代わって一部地域にはシリア政府軍・ロシア軍が展開。勢力地図が刻々と変わる混乱の隙をついて、ISが再び勢力を活発化させる懸念も出ている。(2019年11月12日・シリア・IS写真)

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【「ISは永劫残り続ける」】 これは昨年3月にシリアのIS最終拠点バグーズが陥落する直前にISが公開した映像。「シリア・イラクでISが拠点を失おうとも、国境を越えた別の地でジハードが続く」とした暗示的な言葉になっている。ISのスローガン、バーキヤ(残り続ける)とタタムダッド(広がり続ける)のごとく、各地に過激思想や運動は伝播して残っていく可能性があり、壊滅するのは容易ではない。(2019年3月・IS映像)

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