イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【イスラム国(IS)】新指導者への忠誠表明で結束誇示(2)アフガニスタン・パキスタン・チュニジア・アフリカ

◆バグダディ「殉教者」、新指導者は後継「カリフ」

10月27日、米軍特殊部隊の作戦で殺害された武装組織イスラム国(IS)バグダディ指導者。その死はISにとって打撃となったのは間違いないが、それも想定済で、次の指導者が準備されていたのではないだろうか。イラク聖戦アルカイダザルカウィから「イラクイスラム国(ISI)」のアブ・ハムザとアブ・オマル、そしてISのバグダディと、指導者が死んで代わっても、組織イデオロギーは残り続けてきた。
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【バグダディは「殉教者」】 ISは機関紙でバグダディを「殉教者」として称讃。イラク聖戦アルカイダ機構のザルカウィ、ISのバグダディから現在に連なる系譜のなかに新指導者が位置付けている。右はIS機関紙ナバア(207号)が掲載したバグダディの「ジハード戦士・カリフから殉教者となるまでの経歴」。2014年にバグダディがカリフ制復活を宣言した際のインパクトはあまりに大きく、新指導者がバグダディを超えるほどの「カリスマ性」を持つのは容易ではないだろう。

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【「カリフ」選出と忠誠】IS戦闘員が右手を重ねあって唱和する忠誠(バイア)の言葉。(だいたいこういう感じと思います、違ってたらすみません) これはアブ・イブラヒム・ハシミが新指導者と公表後にネットに出回った画像。この文言はもともと過去のイスラムの戦いにも由来するもので、ISは勝手に自分たちの指導者の名前を挿入している。以前は黄色の部分がアブ・バクル・アル・バグダディの名で、軍事キャンプや戦闘時の突撃前の「勝鬨(かちどき)」として唱和するほか、かつてはモスクで住民がISに忠誠を誓わされる際にもこの言葉を唱和。フィリピンやアフガニスタンなどでも、アラビア語でこの忠誠の言葉を唱和している。

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【ホラサン(アフガニスタン)】 右手を重ね、新指導者アブ・イブラヒム・アル・ハシミへの忠誠を表明するホラサン県(州)のIS戦闘員。ホラサンはアフガニスタン一帯を指す。(2019年11月5日・ホラサン・IS写真)

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【ホラサン(アフガニスタン)】 ISホラサンからの新指導者への忠誠表明。アフガニスタンは、タリバン残存勢力が政権に対する活動を続けてきたが、2014年にISが台頭するとその影響はアフガニスタンにもおよび、ISホラサン県(州)として承認される(当初はパキスタン中央アジアを含むエリアもホラサンとする位置づけだった)。(2019年11月5日・ホラサン・IS写真)

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【ホラサン(アフガニスタン)】 この映像はドローンで撮影したと思われる。ホラサンのISは、アフガン政府軍や駐留米軍との戦闘だけでなく、政府機関職員、シーア派ハザラ人までも標的都市、自爆攻撃などを繰り返してきた。(2019年11月5日・ホラサン・IS写真)

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【ホラサン(アフガニスタン)】 タリバンはアフガン政府やアメリカと「和平交渉」を進める一方、ISはタリバンを「背教徒」と規定し、殲滅戦を展開。タリバン地域にいる地元部族まで襲撃対象にして部族長らを殺害している。(2019年11月5日・ホラサン・IS写真)

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パキスタン パキスタンでのISの活動はアフガニスタンを含むホラサン県(州)エリアとなっていたが、昨年5月、別途、インド、パキスタン各県(州)が登場した。アフガニスタン国境地帯での活動のほか、パキスタン西部クエッタなどで警官襲撃をするなどしている。今回の一連の忠誠表明写真では、インド県(州)は11月末までには出なかったようだ。(2019年11月3日・パキスタン・IS写真)

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チュニジアチュニジアのIS系組織は、2015年にバルドー博物館襲撃(日本人観光客3人含む22人が死亡)や観光地スーサでのホテル襲撃事件(イギリス・ドイツ人観光客含む28人死亡)を引き起こしている。昨年6月のチュニス中心部での自爆攻撃では、警官らを殺傷。(2019年11月6日・チュニジア・IS写真)

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チュニジア写右手を重ねて忠誠を誓う戦闘員。写真右から2人めの戦闘員はステアーAUGを手にしている。昨年のIS映像でも同銃が映っており、チュニジア軍の制式銃を奪った可能性。(2019年11月6日・チュニジア・IS写真)

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【西アフリカ(ナイジェリア)】 西アフリカのISは、おもにナイジェリアで勢力基盤を広げてきた。チャド国境付近の北東部で政府軍との戦闘を激化させている。(2019年11月7日・西アフリカ・IS写真)

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【西アフリカ(ナイジェリア)】 ISがシリア・イラクで拠点を失って以降、最も勢力を拡大している地域のひとつがナイジェリアである。頻繁にナイジェリア軍を襲撃しては武器を鹵獲するゲリラ戦を展開し、多様な武器を所持している。(2019年11月7日・西アフリカ・IS写真)

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【西アフリカ(マリ・ブルキナファソ)】 「マリとブルキナファソのカリフ国兵士の忠誠」とあり、どちらの国で撮影されたかは不明。IS西アフリカ県(州)とするのは、ナイジェリア、ニジェール、チャド、マリ、ブルキナファソの一帯。(2019年11月9日・西アフリカ・IS写真)

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【西アフリカ(マリ・ブルキナファソ)】 これもマリ、ブルキナファソのいずれかの国。フランス軍は、マリ、ブルキナファソニジェール、チャド一帯の地域に部隊4500人を派兵して各国の軍を支援している。同地域にはISのほか、アルカイダイスラムムスリム擁護者機構(JNIM)などが活動する。11月には、ブルキナファソニジェールの国境地帯でイスラム過激武装勢力掃討作戦を展開するフランス軍ヘリが衝突し墜落、13名が死亡している。(2019年11月9日・西アフリカ・IS写真)

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中央アフリカ 中央アフリカのISは、西アフリカよりも遅れて登場し、コンゴモザンビークでの活動が顕著になりつつある。写真はいずれの国か不明だが、コンゴではないかと推測される。いずれも政府軍への攻撃を繰り返す。またモザンビークでは、カーボデルガドで活動するロシアの民間警備会社(PMC)ワグナー・グループのロシア人要員を襲撃、殺害するなどしている。(2019年11月7日・中央アフリカ・IS写真)

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中央アフリカ 昨年4月のバグダディ声明の最後に登場した映像。中央アフリカ県(州)を示す報告書とみられるファイルがバグダディに手渡されるシーン。攻撃拡大に加え、プロパガンダ写真も増加している。(2019年4月・バグダディ声明映像より)

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