イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS・バグダディ死亡】トランプ米大統領「バグダディの死について」声明(2019/10/27)日本語訳・全文

「バグダディは犬のごとく死んだ」トランプ大統領が成果アピール
トランプ米大統領は、10月27日、特別声明を発表し、武装組織イスラム国(IS)のアブ・バクル・アル・バグダディ指導者がシリア北西部で死亡したと発表した。米軍特殊部隊が潜伏先の建物を急襲、地下トンネルに逃げ込んだところを自ら自爆死したとしている。以下、トランプ大統領の声明全文。(一部意訳)

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10月27日、トランプ米大統領は、ホワイトハウスで特別声明を発表し、「バグダディの死」について説明した。米軍特殊部隊によるバグダディ潜伏先急襲作戦が遂行されたのは10月26日深夜から27日にかけて。(ホワイトハウス公表映像より)

アブ・バクル・アル・バグダディの死に関する大統領声明
 (トランプ大統領ホワイトハウス・2019年10月27日) 

昨夜、合衆国は世界最悪のテロ指導者を正義の裁きにかけました。アブ・バクル・アル・バグダディが死んだのです。彼はISISの創始者であり、首魁でした。世界で最も残忍で暴力的なテロ組織です。合衆国はバグダディを何年も捜し続けてきました。バグダディの拘束、あるいは殺害が、私の政権にとって国家安全上の最優先事項でした。米軍特殊部隊は任務を達成するため、危険かつ大胆な夜襲作戦をシリア北西部で遂行したのです。 

米軍側に負傷者はいません。一方、バグダディ側の戦闘員とその同伴者らは彼とともに死亡しました。バグダディはトンネルの行き止まりに走りましたが、呻き、泣き叫びながら死にました。ほか、そこにいた者は降伏するか、銃で殺すかの形で、建物は制圧されました。幼い子ども11名を無傷なまま建物から移動させました。バグダディとともにトンネルに残っていた子ども3人は、死亡しました。訳注:後日、米中央軍マッケンジー大将は2名と訂正) 

我々の犬たちが彼をトンネルの行き止まり追い込みました。彼は自爆ベストを自ら起爆させ、自身と3人の子どもが死亡したのです。爆発で彼の死体はバラバラになりましたが、調べた結果、明確に身元を判明するに至りました。これまで脅威を振りまくのに必死だったあの大悪党は、米軍部隊を前に恐怖に慄きながら、錯乱と怖気のなかで最後の瞬間を迎えたのです。

わが方は約2時間にわたって建物内にいたのち、任務を達成し、急襲によって得られた高度で貴重な押収品と情報を持ち帰りました。バグダディの死は、アメリカがテロ組織の首謀者たちを徹底的に追い詰め、ISISを永続的かつ完全なる壊滅へ向けた我々の決意を示すものです。 

アメリカはどこであろうと追い詰める力があるのです。周知のように、最近、私たちはオサマ・ビン・ラディンのひときわ凶暴な息子、ハムザ・ビン・ラディンを殺害したことをお知らせしました。ハムザ・ビン・ラディンアルカイダの後継者でした。罪なき人びとを抑圧し、殺戮するテロリストたちを決して安眠させはしませんし、私たちが必ずや完全に壊滅させることをわからせるべきです。この残忍な怪物どもがその運命から逃れることはできず、神の最後の裁きからも逃れることはできないのです。 

バグダディは何年にもわたり逃亡し続けてきました。私が政権に就く以前からです。私は最高司令官として指揮し、合衆国は彼の「カリフ国」を今年の3月、壊滅しました。今日に出来事は、ISISの残りのテロリストたちを容赦なき結末に追い込むことを継続することを改めて確認するものでもあります。バグダディや彼ととともに活動した負け犬たち、-ときに自分が何をしているか、その危殆な所業や無意味さに理解の及ばない者たち-が、多くの人を殺してきたのです。罪なきアメリカ人、ジム・フォーレー、スティーヴン・ソトロフ、ピーター・カッシグ、カイラ・ミュラーの殺害については、とりわけ凶悪極まりないものでした。

ヨルダン人パイロットが檻の中で焼殺される映像を(ネットで)見せるといった衝撃的な公開殺人、そしてエジプトやリビアでのキリスト教徒の殺害、ヤズディ教徒の集団虐殺など、ISISは歴史上、最も残虐な組織と位置付けられるでしょう。改宗の強制や、斬首前にオレンジの囚人服を着せるなど、いずれもが世界に(ネットで)公開されてきました。これらはすべてアブ・バクル・アル・バグダディの所業によるものです。彼は悪辣で暴力に満ちた男であり、それにふさわしい死に方をし、死に際しては臆病に怯え、走り回り、泣き叫びました。

この急襲作戦は完璧な形で遂行され、各国と人びとの承認と支援がなければ達成されなかったでしょう。ロシア、トルコ、シリア、イラクに感謝したい。また私たちに特定の支援をしてくれたシリア・クルド勢力にも感謝したい。この非常に成功裏に達成された作戦の道のりを支えてくれた偉大なる情報機関のプロたちにも同様に感謝したい。昨夜の作戦に参加した兵士、海兵、航空兵、海兵隊員に感謝したい。諸君は世界でも最良のメンバーである。マーク・ミリー将軍と統合参謀本部に感謝したい。またこの作戦の成功に欠かすことのできなかった合衆国政府の他の諸部局で活動するプロフェッショナルたちにも感謝を表明したい。 

昨夜は、合衆国、そして世界にとって大いなる夜でした。あまたの災厄と死をもたらしてきた残虐非道な殺人者は、二度と罪なき男女、子どもに危害を加えることのできぬよう、実力をもって抹殺されたのです。彼は犬のごとく死にました。彼は臆病者のごとく死にました。いま、世界はより安全となりました。
アメリカ合衆国に神の祝福のあらんことを!

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バグダディが潜伏していた場所は、シリア北西部イドリブ県ハレム近郊バリシャ村。トルコまでは約5キロの距離。クルド主導のシリア民主軍(SDF)情報部門が米情報機関などに連携して情報提供し、潜伏場所を特定したとされる。

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バグダディ潜伏先の急襲作戦は米軍特殊部隊が遂行し、ヘリ8機が投入された。中央下に建物に突入する特殊部隊が見える。建物内にはバグダディ側の警護要員のほかバグダディの妻と子どもがおり、妻は死亡。現場にいた児童11人は保護、バグダディとともにいいた子ども2人が爆発で死亡と報道では発表されている。(米国防総省公表映像より)

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ホワイトハウスの緊急対応室(シチュエーションルーム)でバグダディ急襲作戦の状況を見守るトランプ大統領。ペンス副大統領とエスパー国防長官や軍高官ら。(ホワイトハウス公表写真より)

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バグダディ潜伏先を急襲した米軍特殊部隊は軍用犬を投入。トンネルでバグダディを追い詰めた、とされる。トランプ大統領ツイッターで写真を公表し、「素晴らしい仕事をしてくれた」とその活躍を称讃。

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オバマ政権時の2011年には米軍特殊部隊がパキスタンアルカイダビンラディン殺害作戦を遂行し、成功している。(オバマ大統領ビンラディンの殺害声明)トランプ政権は大統領弾劾の動きや来年の大統領選挙などもあり、IS指導者バグダディ死亡は大きな政治アピールともなった。写真は今年3月、ISがシリア南東の最終拠点、バグーズで敗北した際、オバマ時代と最新のIS勢力を示す地図の比較を見せ、自分が大統領に就任し、ISを壊滅させたアピールするトランプ大統領。(2019年3月・ホワイトハウス公表映像より)

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左はスピーチ中にIS勢力図の比較地図を持ってこさせたところ。当時、遊説先などあちこちで見せてまわり、地図がしわしわになっている。地図の上の赤い部分がかつてISが支配していたエリア。「私の政権が“カリフ国”を壊滅させた」とし、自身の成果を強調。(2019年3月・オハイオ州の戦車製造工場での演説・ホワイトハウス公表映像より)

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バグダディ追跡にはシリア・クルド勢力主導のシリア民主軍(SDF)が米情報機関と連携し、潜伏先特定につながったとされる。トランプ大統領場バグダディ死亡を「成果」とアピールするが、10月上旬にトルコがシリア北部クルド地域に越境攻撃した際は、IS掃討戦で協力したSDFを見放し、結果的に「裏切る」形となった。クルド側が今後、アメリカにどのような姿勢をとるかも注目される。写真は今年7月、シリアを電撃訪問したマッケンジー米中央軍司令官(右)とマズルム・アブディSDF司令官(左)。(2019年7月・SDF公表映像より)