イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【シリア】クルド・人民防衛隊(YPG)戦闘服から見る内戦(3)写真19枚 (全3回)

◆ISとの戦いのなかで
世界各地で無差別市民殺傷事件を引き起こしたイスラム国(IS)。各国がIS対策を進めるなか、シリアの最前線で戦ってきたクルド・人民防衛隊(YPG)。IS掃討作戦では、米軍は規模を限定しつつもYPGに武器や物資を支援した。そのなかには戦闘服も含まれる。IS掃討戦で存在感を高めたクルド勢力だが、YPGとシリア民主軍(SDF)のこれまでの戦死者は約1万におよび、大きな犠牲も払ってきた。シリア・クルド勢力の戦闘服から見る内戦、第3回。
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昨年取材した写真。パターンと形状の違う戦闘服で並んでもらって撮った。中央と左がポケット斜めタイプで、MARPATタイプとマルチカムタイプ迷彩。デジタルパターンでも中央と右とでは微妙に違う。右の色合いはAOR2っぽい。いずれも斜めポケットタイプが新型でアメリカの支援物資ということだった。(2018年10月撮影)

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2014年末のコバニのYPG部隊。当時の戦闘服や武器が足らなかった頃と比べると、いまでは米軍がIS掃討戦でクルド勢力を支援するようになるなど、政治状況も大きく変わった。ただしIS壊滅させたのち、アメリカがシリア・クルドとの政治関係をどうするのかは不明。「国なき民・クルド」は、大国からの「裏切り」を繰り返し経験してきた歴史がある。(撮影:坂本)

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ISが急速に台頭したなか、欧米でYPG・YPJが政治的な注目を浴びる。2105年2月、YPJナスリン・アブドラ司令官は、フランス大統領官邸エリゼ宮に招かれ、戦闘服でオランド大統領(当時)と会見。この年の11月、ISによるパリ連続襲撃事件が発生、フランス軍がIS掃討戦をさらに強化。有志連合としてIS拠点空爆のほか、シリア・クルド地域にも地上部隊を派兵する。一方、トルコは対峙してきたクルド勢力の影響力拡大に危機感を募らせ、IS掃討と地域保全の名目でのちにシリア北部に軍事侵攻する事態に。(2015年2月・フランス大統領府写真)

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整列するYPG・YPJの戦闘員。(撮影:坂本)

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いろいろ写真を紹介したなかで、最強のレア写真ならこれ。YPJ女子さんの靴下撮らしてもらった。ウサギさんなどのキャラで、顔部分に唇が縫い込んでプチ立体仕様デザイン。YPJ全員ではないものの、シリアでは流行ってるらしい。こんな小さな足の女性も銃を持って熾烈なIS掃討作戦で戦っている。(撮影:坂本)

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これはマンビジの前線で見かけたペンギンさん。

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「レア写真やで」で終わらせないよう、気になったので、市場に行って同じ靴下探してみた。シリア製の靴下だった。日本円換算で約90円。とりあえず数種類購入。(撮影:坂本)

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どうぶつ靴下の下にはシリア製の謎キティちゃんも。(撮影:坂本)

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YPG戦闘員は運動靴。PKK共通が多い。トルコMEKAP(メカップ)社の茶色シューズが有名で「PKK制式靴」とまでいわれるほど。トルコ南東部ではこの靴を所持してて拘束された例も。トルコ政府はMEKAP社に圧力をかけ押収などしてきた。写真左YPG・写真右PKK。(撮影:坂本)

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靴下撮影に協力してくれたYPJ女子さん。

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「女子の靴下かわいい」でない、戦争の現実も伝えておきたい。2015年のIS映像でシリア・ハカサの戦闘。ISが殺害したYPG・YPJ戦闘員の死体を積み上げている。YPJ女性戦闘員と思われる。いま我々と同じ時代を生きる彼ら・彼女らが、戦いの只中にあり、今日も命を落とし、また同時に誰かを殺している(写真一部ぼかし)

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シリア・コバニにある「戦死烈士追悼墓地」。ここだけでも毎週のように戦死者が運ばれてきて、家族がときおりやってきて死んだ息子や娘を偲ぶ。そして彼らが殺す敵にも同じように家族がいる。いまも続く戦争の現実。(撮影:坂本)

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シリアでは多くの住民が戦火にさらされ、故郷を追われた。誰もが否応なく銃をとって戦場で戦っている。YPJ女性戦闘員セルヒルダン(本名エルミン・19歳)はこの写真を撮った3週間後、ISとの戦闘で戦死。コバニの村出身で故郷守りたいとの思いからYPJに入隊。透き通るような緑の瞳だった。(2014年12月・撮影:坂本)

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クルド・YPGが実質主導したシリア民主軍(SDF)は、シリアのIS掃討作戦で大きな役割を果たした。3月にIS最終拠点バグーズはSDFに制圧されたが、スリーパーセルや潜伏要員が爆弾事件や暗殺を繰り返している。こうした状況に合わせ、特殊部隊・地域防衛など任務や地域の役割ごとに部隊再編が進められている。(2018年3月・SDF映像)

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中央の星条旗記章をつけているのはシリア駐留米軍。軍事教練を終えたSDF部隊の編成式などを視察するなどしている。IS掃討戦で政治的影響力を確立しようとするクルド勢力。大国に裏切られてきた国なき民・クルドは、国連にも頼ることはできない。国際社会での存在意義や政治的地位を獲得するためには、多数の戦死者という多大な犠牲を自ら払うしかなかったのが、クルド民族の悲劇でもある。(2018年3月・SDF映像)

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戦闘服も部隊の任務によって異なっている。この砂漠迷彩の戦闘服は、自主防衛隊(HXP・デファイ・アルダアタ)で、おもに地域・地区の防衛を担う。クルド人、アラブ人地域のそれぞれで編成が進む。内戦で経済が破綻したなか、給料がもらえる防衛組織は町や村の若者にとっては収入源の確保につながる。貧困が過激主義組織台頭の一因ともなってきた側面があるので、生活の安定は、治安維持にとっても重要である。(2018年3月・SDF映像)

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地域安定を最優先にして即席で兵員を養成すると、兵士の規律や風紀の乱れなど問題も起きる。SDFは憲兵隊(インズバット・アスケリ)を編成。部隊内部の規律監視にほか、問題行動を起こした兵士への住民の苦情を受付するなどしている。戦闘服は砂漠デジタル迷彩。戦闘服は砂漠デジタル迷彩に赤いベレー。(2018年4月・SDF映像)

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3月末、IS拠点バグーズを制圧し、ラッカで戦勝パレードをするYPG・SDF。ハンヴィ(左)もIAGガーディアン装甲車(右)もアメリカからの支援。とくに右のIAG装甲車は、IS壊滅を公約にしたトランプが大統領就任直後に供与されたことから「トランプからの贈り物」と呼ばれる。(2018年3月・SDF映像)

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SDFが公開したデリゾールでの軍事教練隊開設式。トランプ大統領は、IS壊滅が迫った昨年末、シリアから米軍撤退を表明し、これがマティス国防長官辞任のきっかけともなったと報じられた。その後、イラン情勢もからんでトランプ大統領は一部の米軍部隊駐留継続に方針転換。アサド大統領やイラク政府と関係を強めてきたイランの中東での影響力伸張を、シリア北部に米軍が駐留基盤を維持することでくさびを打ち込む形で牽制することもできる。YPG・SDFの支援関係は、米国・イラン・ロシアなどの国際関係に影響されるものとなっている。(2018年4月・SDF映像)

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