イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【シリア】クルド・人民防衛隊(YPG)戦闘服から見る内戦(1)写真23枚 (全3回) 

◆YPG戦闘服の変遷
シリアが内戦となり、各派の武装化が進むなかで、戦闘服も変遷をたどってきた。クルド人主体の武装組織・人民防衛隊(YPG)は、米海兵隊のデジタル迷彩MARPAT模様で知られるが、イスラム国(IS)掃討戦の過程で米軍が戦闘服支援し、マルチカム迷彩も登場。YPG戦闘服の初期から、現在に至るまでの変遷から政治関係も垣間見える。
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シリアのクルド人主体の武装組織・人民防衛隊(YPG)。半分近くが女性戦闘員で、女性防衛隊(YPJ)を構成する。(撮影:坂本)

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YPGが公開した戦闘服縫製工場。場所はシリア北東の油田の町ルメイラン。(YPG映像)

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以前、YPG司令部で聞いたら迷彩布の生地ロール原価は1メートルあたり200円前後。シリアではだいたいこの値段なので、地域差はあれど、IS戦闘服の生地価格もほぼ同じと思われる。(YPG映像)

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縫製はかりしっかりしていて丈夫。(YPGJ映像)

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シリアが内戦になると、ロジャヴァ(シリア・クルド地域)防衛部隊として、人民防衛隊(YPG)とその女性組織(YPJ)が編成される。当初は地域によっては戦闘服も行きわたらず、かき集めたジーンズや緑セーターだった。補給網が閉ざされた戦線では、こうした戦闘服で自由シリア軍、ヌスラ戦線、そしてその後のISと戦っていた時期があった。

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ルメイランの戦闘服縫製工場。戦闘服は、クルド語で「ジレ・シェルヴァン」と呼ばれる。縫製工場では量産化が進み、各戦線の部隊に供給されるように。(YPGJ映像)

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2014年9月、ISはコバニに総攻撃をかけ、町を包囲。YPG側は、徹底抗戦したが、ISの猛攻で犠牲者が続出し、戦闘員が不足。地元シリアのクルド人のほか、トルコのクルド人がトルコ国境をひそかに越えて、コバニに入った。戦闘服が足らず、一部の部隊ではトルコ軍が使う迷彩生地などを持ってくるなどありあわせの材料で戦闘服にしていた。(撮影:2014年)

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2014年、コバニの前線で戦うYPG戦闘員。ISが一斉射撃で銃弾を撃ち込んできた。戦闘服はカミシュロのある東部のジャジーラ地域から運ばれてきていたが、その中間のテルアブヤッド一帯はISが支配し、補給網は寸断されていた。(撮影:坂本)

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昨年、シリアで撮ったYPG戦闘服。デジタル迷彩パターンは米海兵隊MARPATタイプ。でも戦闘服の肩章ループ部分のあたりとかは米海兵隊とは異なっている。(2018年取材時に撮影)

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MARPATタイプ迷彩。縫製はけっこうしっかりしていて、夏用は背中裏生地がメッシュだった。

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戦闘員たちによると、メッシュのほうが通気性がよくて快適と言っていた。

f:id:ronahi:20190627202336j:plain「5.11」のロゴがあった。「5.11」関連のグッズはシリアでもイラクでも出まわっていた。だが本物の5.11製かどうかは不明。(撮影:坂本)

f:id:ronahi:20190627202354j:plainこれは上衣だが、74251で5.11サイト検索すると、タクティカルパンツシリーズの型番だった…。

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YPGの現行戦闘服の全体像。胸ポケット形状がまっすぐ。(撮影:坂本)

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こちらは新型タイプで胸ポケット形状が斜め。「これはシリア製じゃなくアメリカ製」とみんなが言っていた。アメリカがYPG戦闘服を支援しているかは明らかではないが、IS掃討作戦の一環で支援してる可能性はあると思われる。(撮影:坂本)

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新型タイプの襟首部分タグのサイズ表記はインチ。シリアは日本と同じセンチ表記なので、もしアメリカ製ならYPG戦闘服の一部をアメリカで作って支援ということに。(撮影:坂本)

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ズボン(パンツ)の太もも部分のポケット。ちゃんとしたBDUっぽい細かい仕様になっていた。(撮影:坂本)

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YPGの一部で最近採用されだした新型戦闘服マルチカム。「アメリカ製やで」と戦闘員は言っていた。これも襟首タグはインチ表記なのでアメリカの支援物資の可能性。かなり米軍の戦闘服っぽく見えるものの、肩章ループあったりと微妙に違う。胸ポケット形状は斜め。(撮影:坂本)

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マルチカムのもうちょいアップしたやつ。襟部分のタグはインチ表記。

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どのタイプのマルチカムをベースにしてるかはわからないが、こんな感じ。

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YPG戦闘服のMARPATタイプとマルチカムタイプ比べてみた。YPGは「アメリカの支援」と言っていたが、アメリカからのYPG武器支援は、トルコの強力な反対もあって、小型火器(一部中型)に限定されていて、武器以外の「戦闘服供与」はありうる。(撮影:坂本)

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国防総省会計のシリア民主軍(SDF)等への武器供与リスト。実質的にはYPGも含まれる。2017年AK47=1万丁から昨年度は2万5千丁に。戦闘服の記載はないが、昨年度だけでもPKM(X1500)、SVD狙撃銃(X95)など武器支援は増加。赤枠の「国防総省は武器流用を監視」は、米国が支援するシリア反体制派が武器転用する可能性を意識したもので、そのもっとも大きな問題が、トルコがYPGと一体とみなすクルディスタン労働者党(PKK)への流用とトルコ側の反発を意識したもの。 第2回へ >>

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トランプ大統領就任以降シリア民主軍支援は拡大。ただし対戦車誘導ミサイルなどトルコ軍の脅威となる武器は制限。写真右は米国供与の装甲車。左は有志連合でIS掃討作戦調整してきたマクガーク米特使。シリア撤退発表のトランプに抗議し辞任。トランプは「知らない人」とバッサリ。マクガーク特使が、シリアでのIS掃討戦における一連のYPG支援とその調整を進めてきた。
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