イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【シリア民主軍SDF声明全文】イスラム国(IS)最終拠点バグーズの制圧とIS掃討戦勝利【写真12枚】

◆シリアのIS拠点壊滅~あらたな局面へ
3月23日、シリア民主軍(SDF)司令部は、シリア・デリゾール南東部バグーズのIS最終拠点を完全制圧したとして声明を発表した。以下はSDFによるIS拠点制圧と掃討戦勝利声明の全文。

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IS壊滅戦の勝利を宣言するシリア民主軍(SDF)。声明を読み上げるのはマズルム・アブディ(マズルム・コバ=シャヒン・ジロ)SDF総司令官(2019年3月・写真:ANHA通信)

シリア・バグーズ制圧とIS掃討戦勝利声明
シリア民主軍(SDF)
(2019/3/23)

シリア民主軍総司令部の名において、また我々と塹壕をともにして戦ったすべての諸連合を代表し、いわゆる「イスラム国」組織が壊滅し、バグーズ地域の最終拠点で終止符が打たれたことを、きょう、我々はここに宣言する。

2012年、2013年の英雄的な抵抗戦の過程で、わが地域部隊が限られた資力となっていたなか、我々の地域は2014年初頭に攻撃にさらされ、同じ地域の諸勢力のなかにあっては、なかでもダアシュ(IS)の猛攻が先鋭化した。
訳註:SDFが結成されたのは2015年10月で、「2012年、2013年のわが地域部隊の抵抗戦」と言及している部分は、SDFを実質的に主導するクルド・人民防衛隊(YPG)の戦いを指す)

これらの攻撃はもっとも流血に満ち、残虐で、広範囲に及ぶものであった。なかでもコバニ攻防戦は、テロリズムに対する全世界的な抵抗の象徴であり、IS敗北への転換点となったことは特筆すべきである。

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シリア民主軍(SDF)マズルム・コバニ(シャヒン・ジロ)総司令官。
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5年にわたる戦いを経て、いま、ISの物理的な敗北と、人類に対するISのあらゆる目論見が終焉したことをここに我々は宣言する。

ISとアルカイダに対する戦争を通じ、我々が成し遂げた成果、すなわちシリア北部の諸々の構成体のすべての住民、およそ500万人をテロの一群から救い、シリア国土の5万2千平方キロを解放し、テロの脅威を排除したことを誇りとするものである。

この勝利には高い代償も払わなければならなかった。1万1千人を超えるわが軍の司令官、戦闘員が戦いに殉じ、ISの標的となった民間人も犠牲となり、また2万1千人の戦闘員が負傷した。 

この場において、これら英雄たちを我々は忘れてはならず、戦死烈士たちを追悼し、また戦傷者の回復を願うものである。彼らの犠牲なくしては、この勝利は勝ちとることはできなかった。同様に、テロに対する戦争に貢献したすべての勢力、とりわけISに立ち向かった国際有志連合に深い感謝を表したい。

テロに対するこの戦いでシリア民主軍が勝利に至ったおもな要因は、その民主的な姿勢、民主的国民の原則の貫徹、女性解放、諸人民の共存と同胞精神の原則であった。その原則はクルド人、アラブ人、シリア正教徒、アッシリア人トルクメン住民、チェチェン人、チェルケス人、国際義勇戦士たちをシリア民主軍の旗のもとに結集させるものとなった。

シリア民主軍が解放された地域の住民を支援すべく、行政機関や治安機構を設置し、整備した。これら機関は、これらの地域が民主的かつ公正な選挙を通じて行政・立法評議会を再建できるよう、地域の安定を創出することとなろう。

これに関連して、我々はダマスカス中央政府に向け、対話プロセスを選択し、シリア北東部での選挙によって選ばれた自治行政機構の承認と特定実力組織たるシリア民主軍の受け入れを土台とした政治解決のための具体的なステップを開始することを呼びかける。

またトルコに対し、シリアに内政問題に干渉せず、安全を継続的に脅かすのをやめ、シリア領内、とりわけアフリンから撤退し、相互信頼と良き隣人関係にもとづいて、この地域の懸案の諸問題解決への手段としての対話を受け入れるよう求めるものである。

最後に、ISのテロリズムに対する我々の戦いは、完全なる勝利が獲得され、その存在が徹底一掃されるまで続くものであると確認する。

同時にまた、我々は、テロリストに対する戦いのあらたな段階が始まったことを国際社会に宣言する。、これらは、我々の地域と全世界にとっての深刻な脅威であるISスリーパーセル潜伏といった軍事的脅威を完全に排除することを目的とし、国際有志連合軍と連携した軍事・治安作戦の継続をもってなされるものである。

シリア民主軍(SDF) 総司令部

2019年3月23日

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シリア東部デリゾールからさらにイラク国境近くにバグーズはある。SDFは2017年10月ラッカ攻略後、デリゾールへとISを追撃し、バグーズ南部のユーフラテス川べりで包囲した。(勢力図は2019年3月下旬時点)

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シリアのIS最終拠点となったバグーズ。米軍・有志連合の空爆シリア民主軍側の砲撃などが繰り返され激戦が続いた。拠点にとどまったのはIS戦闘員のほかIS家族もいて、巻き添えの犠牲も少なくないが、被害実数は明らかにされていない。手前にISが乗ってきたたくさんの車両が見える。川の対岸はアサド政権・シリア政府軍のエリア。逃げ場はなく、ここが最終地点となった。(2019年3月:写真:YPGメディア)

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SDF側はIS戦闘員に繰り返し投降を呼びかけ、降伏する戦闘員もあいついだ。一方、外国人などIS思想を強固に信奉する戦闘員らは玉砕覚悟で戦闘を続けた。(2019年3月:写真:YPJメディア)

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IS戦闘員と行動をともにしていたIS妻や子供たちを含む住民もシリア民主軍側に収容された。IS家族、住民も含まれる。身元確認などを経て、収容施設やキャンプなどに移送された。(2019年3月:写真:SDFメディア)

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 IS掃討作戦はアメリカの武器供与や、米軍・有志連合の航空支援を受けながら進められてきた。軍用車両ハンヴィほか自動小銃・弾薬などもアメリカが供与。SDFを主導するクルド・人民防衛隊(YPG)をトルコは「テロ組織」と規定しているため、アメリカも武器供与の範囲を限定。だが「IS壊滅」を選挙公約に掲げてきたトランプ大統領になって以降、武器支援は拡大。(2019年1月:写真:SDFメディア)

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バグーズにISを追い詰め、砲撃を加えるシリア民主軍。実質的に主導するのはクルド・YPG。SDFの戦闘力なしにはIS壊滅を進めることができなかった現実からアメリカは地上部隊を派遣するなどして作戦支援、武器供与に加え、軍事訓練などで連携してきた。(2019年3月:写真:YPGメディア)

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シリア民主軍(SDF)を構成する部隊・勢力。実質的にはクルド・人民防衛隊(YPG)が主導し、中枢司令官もクルド人が多い。あくまでも主観ながら赤枠はクルディスタン労働者党(PKK)の影響力が強い組織。拡大 

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バグーズ制圧を宣言する記念式典で整列するSDF戦闘員。(2019年3月・写真:ANF通信)

f:id:ronahi:20190330125445j:plain勝利式典では米軍・有志連合代表も出席。マズルム・コバニSDF総司令官(右)とアメリカのルーボック有志連合米特使上級アドバイザー(中央)。マクガーク特使の頃からアドバイザーを務め、その後任として今年1月に着任したジェフリー特使も補佐。マズルム・コバニ(シャヒン・ジロ)総司令官については、2017年にトルコ側に「寝返った」SDF報道官の記事で詳細(2019年3月・写真:SDF映像)

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【IS映像】ISは包囲下のバグーズからISメディアで映像発信を続けた。「不屈不動の意味」と題する映像はバグーズ陥落直前のパート2まで出た。パート1では、なぎら似の男がアッラーを信じたゆえに迫害されたコーランの星座章の一節を引用して、米軍・有志連合とそれに連携するシリア民主軍を批判。外部にIS支援ネットワークがあるとみられる。(2019年3月:IS映像より)

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【IS映像】ISはバグーズの最終拠点で戦う戦闘員の様子を伝えた。銃を手にする少年とみられる姿も映る。外部にIS支援ネットワークがあるとみられる。(2019年3月:IS映像より)

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今回のSDF声明でも触れられていたように、IS拠点の壊滅は果たせてもスリーパーセルと呼ばれるISの地下潜伏要員やシンパが自爆攻撃や暗殺戦を各都市で続けている。これは今年1月、マンビジ市内のレストラン付近で米軍兵士2名含む関係者4名が死亡、死傷者あわせて16名の犠牲が出た事件。ISが犯行声明を出した。ISが完全に壊滅したわけではない。(2019年1月:写真:ロナヒTV)

「ユーフラテスの憤怒」作戦・これまでの流れ(おもな声明一覧)
第1段階・開始声明 (2016/11/06)    第2段階・開始声明 (2016/12/10)
第2段階・戦果報告 (2017/01/16)    第3段階・開始声明 (2017/02/04)
第3段階・第2攻勢 (2017/02/17)    第4段階・開始声明 (2017/04/13)    
タブカ・ダム制圧声明
(2017/05/12)
ラッカ突入・大攻勢戦開始声明(2017/06/06)
ラッカ解放宣言 (2017/10/20)