イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【シリア・クルド】イスラム国(IS)掃討作戦~シリア民主軍(SDF)報道官、トルコに逃れ、米国の武器供与の内情「暴露」(2)写真8枚

元SDFタラル・セロ「すべてはシアターショーだ」
イスラム国(IS)掃討作戦が続くなか、突然、姿を消し、トルコに事実上「亡命」したSDFのタラル・セロ司令・報道官。シリア北部でアメリカがYPG・SDFにどう関与しているのか、など「内部情報」をトルコメディアで暴露した。ロジャヴァ(シリア・クルド地域)の情勢をめぐって、アメリカ、クルド、トルコとのあいだで熾烈な駆け引き、情報戦、工作が渦巻く。
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アナドル通信によるインタビューではタラル・セロは「(シリアSDFで起きていることは)すべてシアターショーだ」と話す。アメリカとPKKでシナリオを作って筋書きのもとに進められているという意味だ。アフリンについての言及もあり、トルコによるアフリン侵攻を正当化させる狙いも見え隠れする。アナドル通信はトルコの公式通信社であり、過去には米軍がシリアで設営した軍事基地の位置を公開し、これに対してアメリカが懸念を表明するなど、トルコの情報戦の一端を担って来たメディア機関でもある点も留意しておきたい。(アナドル通信写真より)

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タラル・セロがアナドル通信インタビューで証言したPKKに関する内容部分。この図(拡大)はあくまでも彼の証言情報をもとに作成したもの。インタビューではPKKとアメリカがいかに裏で動いてきたかが強調されている。米共和党保守派重鎮マケイン上院議員のシリア入りや、「IS以後」の道筋についてCIAが提案したりと、アメリカがクルドカードを使い画策しているとする。なおSDF/YPG側は「”証言”はトルコ当局の筋書きにそったでっち上げ」としている。ロジャヴァ(シリア・クルド地域)情勢をめぐって、アメリカ、クルド、トルコとのあいだで熾烈な駆け引き、情報戦、工作が渦巻く。 PKK全体の組織構造図 >>

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アナドル通信インタビューを受け、トルコ・メディアは、「SDFはPKKの隠れ蓑とタラル・セロが暴露」などとあいついで報じた。「資金はPKKから、指令はカンディルから、武器はアメリカから」などのトップ見出しが並ぶ。カンディルとは、イラク北部のPKK拠点で、最高幹部らがいる山岳地帯。(写真はいずれも12月3日付トルコ紙)

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タラル・セロは、「SDF結成時にシャヒン・ジロと会い、指示を受けた」とも証言。シャヒン・ジロはのちにSDF司令官となるが、元PKK司令官としてカンディルにいたとされる。2017年4月にシリア北東部ケレチョホをトルコ軍機が爆撃し、多数のYPG戦闘員が死んだ際、現場を米軍司令官が視察(写真左)。その横で被害状況を説明したのがシャヒン・ジロ(写真中央)。写真右の女性はラッカ攻略作戦でクルド・女性防衛隊(YPJ)の指揮をとるロジュダ・フラット司令官。(VOA映像より)

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シャヒン・ジロ(本名フェルハッド・アブディ・シャヒン)はトルコ当局からは「テロ組織PKKメンバー」として最重要指名手配のひとりにリストアップされ、日本円で約1億円の懸賞金がかけられている。トルコメディアは「PKKテロリストと米軍司令官が一緒に」などと伝えた。米国旗をつけているのが米軍司令官。シャヒン・ジロが公式にメディアの前に登場したのは、このときが初めてではないだろうか。(左・VOA写真 右・トルコ内務省の指名手配写真)

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ケレチョホ事件以後、トルコ・メディアは、シャヒン・ジロのPKK時代の写真を使って、SDF・YPG・PKKが米軍と結びつきを深めていると繰り返し伝えてきた。そうしたなかで今回出たのがのタラル・セロの「シャヒン・ジロとPKKのつながり」の証言だった。写真左は90年代のオジャランPKK指導者で、後ろにいるのがシャヒン・ジロとされる。写真右は過去にクルド系ロジTVが放映したPKK時代のシャヒン・ジロ。

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ラッカ攻略作戦でアメリカが武器供与するにあたり、「“アラブ連合組織に支援“という口実を作ってクッションにする」のはブレット・マクガークのアイデアだった、とタラル・セロは「暴露」。マクガーク(写真左)は、有志連合軍に派遣されている米大統領特使。写真右アメリカがIS掃討作戦のためにSDFに供与した装甲車両。SDFへの武器供与はトランプ政権になってから一気に拡大した。

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シリア・クルド側がIS掃討作戦を通じてアメリカと結びつきを強める一連の状況が大きな切迫感となっていたトルコにとって、今回のタラル・セロ「寝返り」事件の利用効果は高い。SDF側は、「タラル・セロと家族がトルコ情報機関に度重なる圧力、恫喝を加えられてきた」とし、証言内容はでっち上げとしている。トルコ、クルドアメリカの熾烈な情報戦、工作合戦は続く。詳細は次回(SDF写真)

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「ユーフラテスの憤怒」作戦・これまでの流れ(おもな声明一覧)
第1段階・開始声明 (2016/11/06)    第2段階・開始声明 (2016/12/10)
第2段階・戦果報告 (2017/01/16)    第3段階・開始声明 (2017/02/04)
第3段階・第2攻勢 (2017/02/17)    第4段階・開始声明 (2017/04/13)    
タブカ・ダム制圧声明
(2017/05/12) 
ラッカ突入・大攻勢戦開始声明
(2017/06/06)
ラッカ解放・勝利宣言 (2017/10/20)