イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS動画・日本語訳】イスラム国(IS)スペイン出身戦闘員がバルセロナ襲撃を称賛

◆「アンダルースの地を取り戻す」とテロ正当化
イスラム国(IS)は、8月17日にスペイン・バルセロナで起きた同時多発テロについて、事件を称賛する動画を公表。シリア・カイル県広報部門の制作で、スペイン出身の戦闘員がメッセージをスペイン語で発している。カイル県(またはハイルと発音)はISが勝手に作った県で、シリア東部デリゾールにあたる。映像に登場する戦闘員2人も、デリゾール県下にいると思われる。

【IS動画】バルセロナ襲撃を称賛するスペイン出身戦闘員 (一部意訳)

バルセロナ襲撃事件から6日後の8月23日にIS地域カイル県(またはハイル県=デリゾール)広報部門が出した映像。スペイン出身とみられる戦闘員2名が登場し、ベルセロナ・テロを称賛している。映像に挿入された宗教歌(ナシード)はフランス語。これまでフランスでの襲撃事件の際にIS動画でよく使われてきたもの。スペイン語ナシードがなかったため「代用」ではないか。かつてはシリア・イラクでのジハードに参加せよ、と呼びかけが多かったが、IS支配地域に入ることが困難になったなか、各地での襲撃テロを扇動する手法が目立つようになった。(シリア「カイル県」・2017年8月・IS映像)

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IS映像で、戦闘員のひとりはアブ・ライス・アル・クルトゥビとテロップが出てくる。「クルトゥビ」は、スペイン南部コルドバ出身を指す。このIS映像が出ると、登場した戦闘員についてスペインメディアが報道。( La Sexta TVより)

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エル・パイス紙が報じたところでは、アブ・ライス・アル・クルトゥビの本名はムハンマド・ヤシン・アハラム・ペレス(22歳・写真左)で、父アブドラ・アハラム(42)はモロッコ出身で、テロ組織関与容疑で逮捕。12年の刑を受け、ジブラルタル海峡をはさんだ北アフリカのスペイン飛び地セウタの刑務所で服役中。母トマサ(写真右上)はアブドラと結婚した際に改宗。アブ・ライス(ムハンマド・ペレス)は、2014年にきょうだい5人と母トマサとともにシリア入りしたとみられる。左の写真はフェイスブックにアップされたもの。右はスペイン・メディアが報じた、子供時代とされる写真。

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2014年の時点で、スペイン・メディアはISに関係するスペイン出身者の女性らについて報じている。右端がアブ・ライス(ムハンマド・ペレス)の母親、トマサ・ペレス。

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アブ・ライス・アル・クルトゥビは、映像のなかで「アンダルースをかつてのようにイスラムの地として取り戻す」と述べている。かつてスペイン中南部地方は、アル・アンダルースとして約500年間にわたってイスラム圏であった。スペインテレビTele5は2015年に、スペインからシリア入りした「ジハード志願戦闘員」を取り上げた番組を放送したが、そこにはアブ・ライス(ムハンマド・ペレス)のフェイスブック写真も出てくる。

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ISプロパガンダ映像が出ると、スペイン語圏でたちまちにしてネットでネタにされ、パロディが拡散。アブ・ライスのクソコラ・グランプリとなった。

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映像に登場する別の男は、組織内での名前、いわゆるクンヤが「アブ・サルマン・アンダルーシ」とあるので、スペイン南部アンダルシア地方出身と推測される。この戦闘員の本名は不明。(2017年・IS映像)

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今回のIS映像に挿入されている音声スピーチは、昨年空爆で死亡したアブ・ムハンマド・アドナニ広報官の2016年5月声明「生き長らえる者も明証によって生き長らえさせるためである」から。十字軍の地(おもに欧米など)での市民殺戮を呼びかけた。「たとえ石であっても、敵地で投げつければジハード戦士を支え、大いなる効果がある」などと扇動。とくにこの声明以降、自爆や銃撃以外に、トラック、ナイフ、斧を使った市民殺傷テロがヨーロッパ各地であいついだ。「2016/05/21・アドナニ声明」全文 >>

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映像のタイトルの「猛雨の始まり」(または「最初の大雨=アウル・ガイス)とある表現は、ISによる2015年パリ襲撃声明や今年6月のテヘラン襲撃声明でも使われた言葉。イラク人にそのニュアンスをきくと、ISが声明の文脈で使う場合は、戦いの端緒を開く恵みの大雨であり、また、最初のしずくの一滴一滴がいずれ猛雨となる、と、さらなる攻撃や次に起きる大きなことを「良き予兆」として示唆している、ということらしい。

イスラム軍】ナシード「アウル・ガイス」(字幕なし)

この「アウル・ガイス」という歌があって、ISじゃないですがシリア「イスラム軍」のビデオクリップ。この歌自体は普通に親しまれている曲で、武装組織だけでなく一般歌手が歌うものもある。「最初の大雨」というのは、大地への恵みであったり、いい兆し、あるいはこれから何か良いこと、大きなこと起きるときに使われる表現なので、過激主義の歌というわけではない。


スペイン・バルセロナ襲撃IS声明全文 >>

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