イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【スペイン・IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)バルセロナ同時多発襲撃事件・声明(全文)

◆爆弾製造失敗し、暴走車両での襲撃に変更か
8月17日、スペイン・バルセロナとカンブリスで市民を狙ったとみられる同時多発襲撃が発生。事件後、イスラム国(IS)が声明を公表した。声明では「十字軍とユダヤ人を120人を死傷させた」とあり、おもにキリスト教世界・西欧社会を指す十字軍に加え「ユダヤ人」と声明に掲げられた点が、これまであいついだ欧米でのテロ事件の際に出された声明と異なっている。(一部意訳)

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スペインでの連続襲撃事件のIS声明。アラビア語と英語で出された。英語は「イスラム国兵士」、アラビア語では「カリフ国兵士」と若干違うもののほぼ同じ。声明が出されたヒジュラ暦1438年ズルカーダ月26日は西暦2017年8月18日。事件の翌日に直ちにIS公式声明が出されている。

【速報】イスラム国兵士がスペインでの攻撃で
十字軍・ユダヤ人120人以上を死傷せしめる

[スペイン] 1438年ズルカーダ月26日(ヒジュラ暦

アッラーのお力添えのもと、火曜日、2つの潜行部隊からなる複数のジハード戦士たちがスペインの十字軍の集団を標的とした同時多発戦を敢行した。第1部隊のジハード戦隊はバルセロナのラス・ランブラスにおいてバンをもって標的を狙った。戦士たちはまた警察検問所において警官2名を轢いた。ラス・ランブラス広場付近の「バー」を小型武器をもって急襲し、内部にいた十字軍とユダヤ人に苦しみを味合わせ、殺害した。

他方、沿岸の町カンブリスにおいて別働部隊がバンで複数の十字軍を轢いた。この祝福されし攻撃戦は、十字軍同盟の市民、120人以上を死傷させる戦果をもたらした。すべての栄誉は、アッラーとその使徒、信徒にある。だが多くの者はこれを知らない。万有の御主、アッラーにすべての称讃あれ。

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IS機関紙アン・ナバア(第95号)が、バルセロナ襲撃事件後に掲載した記事。サグラダファミリア教会の写真が挿入され、「イスラム国兵士がユダヤ人と十字軍の集まる所に攻撃を敢行」とある。事件が起きたのは各国の観光客でにぎわうバルセロナの繁華街で、ユダヤ教イスラエルの関連施設が標的にされたわけではない。事件で犠牲となったのは、スペインのほか、イタリア、ポルトガル、アメリカ、オーストラリアなど多数の観光客が含まれていた。アン・ナバアの紙面にはサグラダファミリア教会の写真が挿入されている。

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バンは大勢の人通りでにぎわうランブラス通りを約550メートル暴走、13人が死亡した。

【動画】バルセロナ・ランブラス通り
バルセロナ・ランブラス通りでの襲撃当日の映像。(YouTube

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ランブラス通りでバンを暴走させ多数の市民を殺傷したユヌス・アブヤクーブ(22)。1995年モロッコ生まれで、バリセロナ北の町リポイで育った。現場から逃走し、途中で車を奪って運転手を殺害。事件から4日後、バルセロナ西南のスビラッツで警官によって射殺された。リポイは主犯格とされるアブデルバキ・アッ・サティがモスクでイマムをしていたと報じられている。

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一連の襲撃事件に関係した容疑者は12人とみられるが、警察は捜査を続けるとしている。地元メディアの情報を総合すると、アルカナーの爆発で死亡したアブデルバキ・アッ・サティ容疑者が主犯格とされ、ほかは若い青年が目立つ。リポイはアブデルバキがモスクでイマムをしていたとされる場所。兄弟や親戚など、近しい関係のなかで襲撃グループが形成されていたことがうかがえる。(容疑者の年齢はメディアによってわずかな相違あり)

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バルセロナ襲撃から数時間後、カンブリスでも車両による襲撃事件が発生。容疑者は5名で、ユヌス・アブヤクーブの弟フセイン(19)と、その親戚のオマル(21)、モハメド(24)ヒシャミ兄弟が含まれていた。。63歳の女性1名が死亡。警察は容疑者5名を射殺(うち1名は病院で死亡)。写真は容疑者が警官に射殺される映像。ランブラス通りとカンブリスでの車両ともにレンタカーだった。

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バルセロナとカンブリス襲撃の前夜、アルカナーで爆発事件が発生。大量のガスボンベや爆薬原料などが発見されたことから、警察はテロに関係する爆弾製造過程での誤爆とみて捜査。現場で死亡した2人のうち、1人はかつてモスクでイマムをしていたアブデルバキ・アッ・サティ(写真右上)とみられ、犯行グループの組織化で中心的役割を果たしていたとされる。警察当局は昨年起きたブリュッセル連続自爆事件にもアブデルバキ容疑者が接点を持っていたのではないかとして捜査を進めている。爆弾製造でサグラダファミリア教会を狙う計画もあったが、この誤爆発のため、残りのメンバーが車両暴走による襲撃い至った可能性を地元メディアは報じている。

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いずれも警察当局の手配写真。左はランブラス通りで襲撃事件を起こし、現場から逃走したユヌス・アブヤクーブ(4日後に警察が発見し、射殺)。右はユヌス・アブヤクーブを含む一連の事件に関与した容疑者らの一部。写真の4人はすべて警察が射殺。

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スペインでの襲撃事件の10日前、ISメディア部門ハヤートが出したプロパガンダ映像では、オーストラリア出身とみられる戦闘員が英語で、「十字軍の地を戦場にせよ」「トラックで群衆に突っ込み、路上をやつらの血で満たしてやれ」などとテロを扇っている。かつてはIS地域への移住呼びかけが多かったが、シリア・イラクのIS支配地域への入域が困難になると、おもに欧米などでの襲撃を扇動するメッセージが増えるようになった。顕著なのは、ナイフや車両暴走、放火など「誰でもできるテロで市民を標的とせよ」としている点である。(2017年8月・IS映像)

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事件翌日のスペイン新聞各紙。黒い喪章で犠牲者を追悼し、「テロに抗して団結」「テロに屈しない」などの見出しで、テロに立ち向かう決意を示している。


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