イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画】イスラム国(IS)空爆被害を報復襲撃の根拠に

◆外国人戦闘員が出身国の言葉で扇動
世界各地であいつぐイスラム過激主義者による襲撃事件。イスラム国(IS)が直接関与したもののほかに、ネットでISの呼びかけに呼応した者が単独で行動を起こす「一匹狼型決起」がある。テロ扇動の理由付けのひとつとなっているのが、IS支配地域での空爆に対する報復だ。ISは空爆被害とその復讐心を煽り、ジハードにためのIS地域への移住招請や欧米など各国での決起扇動の根拠として利用してきた。外国人戦闘員らが、自国の同胞に向けて、それぞれの言葉で呼び掛ける手法は、ISプロパガンダの「スタイル」でもある。

【IS動画】シリア・ラッカ「フランス軍機の空爆の実際」(一部意訳)

2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロ事件の直後にISラッカ県広報部門が出した映像。テロへの報復としてフランスはIS拠点への空爆作戦を強化した。爆撃の数日後には、ISが宣伝映像を公開し、実際の空爆現場から「空爆は市民や民間施設を標的」などと戦闘員がフランス語でメッセージを発している。(シリア・ラッカ・2015年11月・IS映像)

【IS動画】イラク・ジャジーラ県・戦闘員が空爆批判メッセージ (一部意訳)

これもパリ襲撃事件の直後に公開された映像で、イラク北部の戦闘員がメッセージを出している。この当時はまだシリア・イラクのIS地域への移住と、各地での決起を同時に呼び掛けていた。映像にはオーストリアチェチェンの出身と思われる戦闘員がそれぞれ登場している。のちにトルコの国境警備が強化され、IS地域入りが難しくなると、「いまいる地域で単独で決起せよ、市民を狙え」と扇動することが多くなっていった。「ジャジーラ県」はISがニナワ県を勝手に分断して作った「県」で、イラク北西部のタラファルとシンジャルを含む地域にあたる。(イラク・ジャジーラ・2015年11月・IS映像)

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【パリ・バタクラン劇場襲撃】2015年11月13日、パリで連続襲撃事件を引き起こしたIS。ニュース映像をプロパガンダ動画に挿入し、襲撃を称賛する映像をあいついで公開。写真は襲撃されたバタクラン劇場から脱出しようとする市民。

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【IS・パリ襲撃犯・アブデルハミド・アバウド】パリ連続襲撃事件の主犯格とされるアブデルハミド・アバウド(組織内部名アブ・ウマル・アル・ベルジキ)。モロッコ系移民としてベルギー生まれ。シリア入りしたのち、再びベルギーに戻り、パリ襲撃を指揮。事件から5日後、潜伏先のアパートで警察特殊部隊に包囲され、銃撃戦ののち死亡。当時28歳。この写真は事件後にISが公開した映像から。「お前たちが我々を空爆し、ムスリムに対する戦争を続けるなら、我々は世界各地でお前たちと戦い続ける」としている。(IS映像)

ISは、自分たちに仕向けられている空爆はすなわちイスラムムスリム住民への攻撃という認識であり、空爆をする限り、我々の戦いは続くのだとする。

だがISが掲げるのは「アッラーの大道のジハードで、シャリーアイスラム法)による統治をこの地上に打ち立て、預言者の道たるカリフ制を成就させるまで戦う」ことである。これに敵対するとISが一方的にみなせば、それはすなわち「アッラーの敵」となり、攻撃対象となる。ゆえに有志連合が空爆をやめれば、各地でのテロをしなくなるというわけではない。

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【ISISが支配していたリビアスルトで、パリ襲撃事件直後に作戦成功を祝って住民にお菓子を配る戦闘員。支配地域各地からパリ襲撃に関する映像や写真報告などのプロパガンダを短期のうちに公開する「手際の良さ」である。中央の統制力とメディア戦略の周到さがうかがえる。(2015年11月・リビア・タラブロス・IS写真))

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【ISイスラム国に敵対する国際同盟」としてISは繰り返し宣伝映像で非難してきた。ISの規定では日本もこのなかに含まれている。(IS映像)

シリア・イラクのほとんどのムスリム住民は、自分たちの空爆被害の復讐に欧米で市民を殺してほしいとか、無差別テロをすればこの戦争が終わるなどとは思っていない。

ISは6月の広報官声明で、いまの過酷な戦いを、「アッラーが与えた試練」と呼びかけた。だが、宗教・宗派の違いを認めず独善に陥り、殺し合いを続けてきた「人間のごう」こそが、神が人間に問い、克服せよと与えた試練なのではないか、とさえ感じてしまう。

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【IS】ISにとっては国連も「不信仰者の民ども」による国家連合という認識。自分たちに歯向かう全世界が敵である。(IS映像)

空爆被害を利用したテロ扇動映像に加え、ISのプロパガンダはさらに過激化していく。のちに空爆現場で斬首や銃殺する「処刑スタイル」が次々と増えていった。
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