◆ラッカ全体をSDFが包囲
イスラム国(IS)の最大拠点都市のひとつ、シリア・ラッカの攻略戦を進めるシリア民主軍(SDF)は、これまでに市内の一部地域を制圧。米軍主導の有志連合の支援を受けながら、IS拠点への包囲網をさらに狭めつつある。一方、IS側は自爆車両攻撃や、スナイパーを配置して徹底抗戦を続ける。双方の戦闘のはざまで犠牲となる住民もあいついでいる。
【YPG動画・日本語訳】ラッカからの脱出住民(一部意訳)
SDFを主導するクルド組織・人民防衛隊(YPG)が公開した映像。ラッカからの脱出住民の様子を伝えている。映像には、父を失い、またISに強制されていた黒いヒジャブを焼く女性の姿が映る。(YPG映像・2017年7月20日) |
【SDF写真】ラッカ西部でBMP-1で進撃するYPG部隊。(2017年6月・SDF映像) |
【YPJ写真】ラッカ攻略は、近郊の農村地域の制圧から市内を包囲する形で進められてきた。(2017年7月・ラッカ・YPJ映像) |
【SDF写真】ラッカ市内のISはすでにSDFに包囲され、全体の4割ほどがSDF側に制圧された。(2017年7月・SDF映像) |
【SDF写真】 軍事訓練を経て部隊に編制されたSDF戦闘員。この部隊はクルド人でなく、アラブ人。シリア北部各地で増員がはかられている。(2017年6月・SDF映像) |
【YPG写真】アメリカが供与した装甲車で出撃するYPG戦闘員。トランプ政権になって以降、軍事支援は拡大し、シリアへの米軍地上戦闘部隊も増派された。IAG装甲車両の供与は、トランプ大統領就任のタイミングとも重なったことから「トランプからのクルド勢力へのプレゼント」とも報じられた。(2017年7月・ラッカ・YPG映像) |
【YPJ写真】ラッカでの対IS戦の前線で、ハンヴィーに乗り込むYPJ(女性防衛隊)戦闘員。(2017年7月・ラッカ・YPJ映像) |
【有志連合】有志連合のルパート・ジョーンズ英軍少将は、7月23日、ラッカ北方の町アイン・イサに入り、ラッカ市民評議会や住民救援機関らと会合。「SDFは信頼できるパートナーである。有志連合はSDFとともにダアシュ(IS)掃討を進める。ラッカ解放は、ISに決定的なダメージを与えるだろう」と会見で述べた。(FURAT-FM映像) |
【有志連合】 ジョーンズ英軍少将は今年2月、「ダアシュ(IS)が市民を殺戮するなら、我々はお前たちを見つけ出し、お前たちを殺す」と述べるなど、ISに対して強い姿勢で戦う決意を示している。少将が直接現地入りしてSDF・YPGの影響下にあるラッカ住民組織と会合を持ち、支援を進めることを表明した意味は大きい。ISやその共鳴者が欧米各地で過激なテロを繰り返した結果、各国は一致してIS壊滅戦を加速させ、クルド主導のSDFを支持する政策をとることとなった。逆に言えば、ISがもし欧米でテロを起こさなければ、シリアのYPG系クルド勢力に大規模な軍事支援をする展開になる可能性は低かっただろう。クルドにとってはラッカ戦で多大な犠牲を払うことは、ロジャヴァ連邦の国際的承認につながる機会ともとらえている。(SDF写真) |
【IS写真】IS側もラッカ攻防戦を独自メディアを通して動画や写真で伝えている。写真はラッカ南西地区で重機関銃を撃つIS戦闘員。ラッカの市民生活の様子を伝える宣伝は減り、戦闘報告ばかりになった。(2017年7月・ラッカ・IS写真) |
【IS写真】自爆突撃するIS車両。ドローンで撮影するだけでなく、映像をライブモニターしながら車両を運転する自爆突撃員に無線機で標的まで誘導するなどしている(2017年7月・ラッカ・IS写真) |
【IS写真】「ラッカ東部で背教徒PKKを標的」として機関砲で攻撃する様子を伝えるIS写真。ISは最近ではYPGと呼ばず、すべてPKKと呼んでいる。PKKとはクルディスタン労働者党。YPGの実質上の母体となった組織である。YPGに対しては、背教徒のほかに「無神論者集団」という呼び方もしている。(2017年7月・ラッカ・IS写真) |
【IS写真】ラッカではISの外国人戦闘員も戦っている。写真は「殉教志願戦士アブドルラザク・アル・トルキスタニ」とあるので、SDFに自爆突撃したウイグル人とみられる。(2017年7月・ラッカ・IS写真) |
【IS写真】 ラッカ県西南方面の前線では、ISはシリア政府軍とも戦っている。写真はISが公開した、政府軍と対峙する戦線。政府軍は西から攻勢をかけ、シリア中部のIS地帯に攻勢をかけている。(2017年7月・IS写真) |
住民はISに「人間の盾」として使われる一方、米軍主導の有志連合の空爆の犠牲ともなっている。トランプ政権になって以降、IS壊滅作戦が加速すると、空爆の回数も増えた。SDFは住民を避難させながら攻略作戦を進めるが、それでも爆撃で巻き添えとなる住民があいついでいる。
有志連合の空爆で巻き添えとなる住民被害については次回 >>