イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【イラン・IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)戦闘員5名が国会議事堂・ホメイニ廟を襲撃(イラン前編)

◆イラン国内で主要機関を狙ったISの攻撃
6月7日、イラン・テヘランの国会議事堂建物とホメイニ廟を狙った同時多発襲撃事件が起きた。実行犯5名を含む23名が死亡し、負傷者50人以上を出す惨事となった。同日、ISは声明を出し、「攻撃はカリフ国(イスラム国)兵士によるもの」と襲撃を認め、さらなる攻撃を予告した。ISがイランの主要機関への攻撃を実行し、明確な声明を出すのはこれが初めてとなる。

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【IS動画・日本語訳】クルド系戦闘員、襲撃前メッセージ (クルド語)一部意訳

IS系アマーク通信が6月8日に公開した映像。イラン・テヘランでの襲撃を実行したとみられる戦闘員5人が映っている。冒頭のアッラーを称える部分とコーラン引用箇所のみアラビア語で、あとはクルド語(ソラニ方言)で話している。イランに向けて戦闘メッセージを発するならペルシャ語でいいはずだが、これは出撃を前にクルド人メンバーどうしで意志一致をしている意味もあると思われる。映像ではイランを「ユダヤの手先」とし、またシーア派だけでなく、サウジアラビアのサウド王家も批判。一方、イラン革命防衛隊は「サウジがこのテロの背後にいる」と非難し、事件後、テヘランでの襲撃糾弾デモでも同様の声があがった。ルダウ・ニュースは、襲撃実行犯のうち4名は、イラン西部ケルマンシャー出身のクルド人と報じている。(※クルド語ソラニ方言はおもにイラン北西部やイラク・クルド地域などで話されている方言。トルコ、シリアで主要なクルマンジ方言とは異なる)

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事件後にISが出した声明(6月7日)。アラビア語ペルシャ語で出されている。いずれもイランと表記せず、「ペルシャ」としている。以下は声明の要旨(一部意訳)。文末の一文はコーラン・ユースフ章:21節からの引用とみられる。襲撃を敢行したイングマスィ(突撃決死隊)については過去記事参照 >>

イスラム【速報】ペルシャ
イングマスィ(突撃決死戦士)5名がテヘラン
多神偶像崇拝者の国会議事堂とホメイニ墓を急襲  

ヒジュラ暦 1438年ラマダン月12日

アッラーの従者たる唯一神信仰者たちは、ペルシャの地のにおける不信仰とラフィダ(=シーア派)の牙城において、複数の場所で多神偶像崇拝者への攻撃を敢行した。カリフ国兵士の突撃決死戦士たち5名が機関銃と手榴弾、自爆ベストで、偶像多神崇拝者の国会議事堂と邪悪圧制のホメイニの墓を攻撃し、彼らの本拠をその不浄な血で満たし、背教徒60名を死傷せしめたのち、殉教を果たした。カリフ国は、ペルシャの地にアッラーの御法を打ち立てるまで、この地のラフィダどもに立ち向かい続け、流血の中に叩き込み、国家機関を破壊するのだということを思い知らせるだろう。これは最初の雨であり、次なる雨が待ち受けている。【およそアッラーはご自分の思うところに十分な力をお持ちになられる。だが人びとの多くはこれを知らない】 

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国会議事堂内のモニターカメラに映る襲撃犯。6月7日午前11時頃、国会建物に一般訪問ゲートから3名が自動小銃と手榴弾をもって侵入、と地元メディアは報じている。

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襲撃犯は銃を撃ちながら国会建物上階に進んだ。イラン革命防衛隊特殊部隊が投入され、午後2時に襲撃犯を射殺し、制圧。

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IS系アマーク通信が公表したテヘランの国会議事堂襲撃時の映像(6月7日付)。実行犯が携帯電話で撮影し、アップしたものと思われる。映像では「ここから出ていくと思っているのか。我々はここにとどまるんだ」という声が聞こえる。即座にIS系機関がこれを公開するなど、襲撃の際の「流れ」が出来ていたと推測される。写真の一部をぼかしています。(IS系アマーク通信)

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国会議事堂前で銃を構える警官隊。(6月7日・Tasnimニュース写真)

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国会襲撃の直前、直線距離で約15キロ離れたホメイニ廟では自爆攻撃が起きた。写真は現場での爆発映像としてFARS通信が伝えた映像。(6月7日・FARS通信JAMARANニュース映像)

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イラン情報省は、実行犯5人の死亡写真とともに氏名を公表。フェレイドゥン、アブ・ジャハド、スリアス、カユム、ラミンとある。上段中央の男は頭部だけになっているので、自爆死したとみられる。情報省は「襲撃犯にはスンニ派過激組織とつながりがあり、のちにISに加わってイラクとシリアで戦闘に従事し、昨年、イランに戻った者がいる」としている。ルダウ・ニュースは、イランのIS関連グループのリーダーだったアブ・アイシャを治安部隊が殺害したが、その後、潜伏した5人のメンバーが今回の襲撃に至ったと報じている。(写真の一部をぼかしていますが、情報省はそのままの写真を公開)

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事件後、イラン治安当局はIS関係者とされる人物らを一斉摘発。テヘランほか、ケルマンシャー州、クルディスターン州、西アゼルバイジャン州の各州などであわせて40人以上を拘束したとしている。

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治安当局は「IS関係者の一斉摘発で武器や手製爆弾、自爆ベルトなどを押収」とする映像も公開。写真が自爆ベルト。

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IS系アマーク通信は事件後、即座にテヘラン攻撃についてインフォグラフ画像を作成。「イスラム国の突撃決死戦士5名が遂行し、国会議事堂に3名が突入、ホメイニ廟で2名が自爆ジャケットで爆発」などとある。アマーク通信はIS系メディアだが、ヒジュラ暦ではなく、西暦を使っている。(IS系アマーク通信画像)

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IS機関紙アン・ナバアは事件の翌日発行の第84号誌上で「テヘラン猛攻戦」と伝えるとともに、襲撃犯5名の写真を掲載。襲撃実行から非常に速い流れで、独自プロパガンダ機関が情報を拡散させている。戦闘員が右手を差し出して重ねているのは、バグダディ指導者への忠誠と思われる。(IS系アマーク通信画像)


ISは今回、イランを突然に標的としたわけではない。これまでにも宣伝映像などを通じて、繰り返しイランを批判してきた。ISがイランとシーア派をどのように規定しているかは次回 >> 「予告されていたイラン襲撃」 >>

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