イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【シリア民主軍SDF声明全文】イスラム国(IS)ラッカ西方、タブカ・ダムを制圧【写真14枚】

◆ISはダム決壊の恐怖煽り住民一時パニックに
シリアでイスラム国(IS)との戦いを展開するシリア民主軍(SDF)は、5月12日、ISの実質的な「首都」、ラッカから約40キロ西方のタブカ地域とタブカ・ダム(ユーフラテス・ダム)からISを排除したとする声明を発表した。ラッカ攻略を目指す「ユーフラテスの憤怒」作戦においてタブカ・ダム一帯を制圧したことで、軍事的要衝のひとつを確保したことになる。トランプ政権は、米軍地上部隊の増派を決定したほか、SDFを主導するクルド・人民防衛隊(YPG)への武器支援を表明し、作戦は非常に速い速度で進んでいる。(一部意訳)

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ラッカ西方のタブカでIS掃討作戦の勝利を宣言するシリア民主軍(SDF)合同部隊。(2017年5月12日・SDF写真)

「ユーフラテスの憤怒」作戦・タブカの解放について
シリア民主軍(SDF)
(2017/05/12)

タブカの町を解放する作戦は、わが部隊と国際有志連合軍の連携により3月21日に開始された。

詳細かつ慎重な作戦計画のもと、わが部隊はダムの東部方面に展開した。タブカ軍事空港において、作戦での2つの基軸部隊が合流した。第1段階が開始され、町全体を包囲した。

作戦の第2段階では、わが部隊が3方面から町に進撃し、敵の防衛ラインを突破した。ユーフラテス・ダムの構内と周辺の村々において犯罪集団(=IS)を包囲した。

敵は、繰り返して住民を人間の盾とし、わが軍部隊は慎重かつ警戒をもって臨みながら、作戦を継続した。これによって、作戦の進行が阻まれることとなったが、 数日ののち、わが軍部隊は、住民から敵戦闘員を分断し、敵を戦意喪失に追い込んだ。テロリスト多数がわが部隊に降伏した。

このタブカ解放作戦によって、ダアシュ(=IS)犯罪集団が、シリア民主軍(SDF)の英雄的抵抗戦の前に持ちこたえることができないということがあらためて示された。

敵の多数が失望のうちに降伏し、また、ダム管理棟構内において民間人に偽装して身を隠そうと試みた戦闘員など、わが部隊は多数を拘束した。民間人にまぎれて逃亡しようとした試みはいずれも失敗に終わった。彼らがいかに姑息であるか、自身の身を守るためにあらゆる手を使う集団であるか、が明らかとなった。

5月10日、我々はタブカの町を解放し、ユーフラテス・ダムから犯罪集団を一掃し、地域住民を救出した。町の解放作戦のあいだ、わが方の戦闘員を支えてくれた、タブカの名誉ある住民に感謝を表明する。また、この地域の地元の青年たちがわが部隊に加わり、組織し、自身の地域の防衛に立つことを呼びかけるものである。また、タブカ解放作戦において強力に支援をしてくれた国際有志連合にも感謝を表明する。

住民に対しては、作戦の最終的な完了、町からの地雷などの爆発物の撤去を終えたのちに、タブカの町を、タブカ市民評議会、ならびにその評議会の下に設置される治安部門に引き渡すことを約束する。

ユーフラテス・ダム運営機構は、シリアの国民機関であり、この機関はすべてのシリア全土の領内に奉仕する機関たることを我々はここに表明する。

タブカ作戦において命を落とした英雄的な烈士たちに敬意を表し、タブカとケレチョホの戦闘で殉じた烈士たち、すべての自由のための戦士たちに、この勝利を捧げるものである。

シリア民主軍(SDF) 総司令部
「ユーフラテスの憤怒」作戦室
2017年5月12日

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タブカはシリア政府軍の軍事空港があった場所。2014年8月、ISとの戦闘で捕虜となった政府軍兵士がISによって集団処刑される事件があった。少なくとも160人以上が殺害されたと報じられている。一部をぼかしています。(2014年・IS映像

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3月末、SDFはタブカ軍事空港からISを排除し、制圧。写真は、SDF「ユーフラテスの憤怒」作戦室ジハン・シェイク・ヘメド報道官。空港として使われていた場所を確保できたことで、今後、ラッカ攻略戦において米軍ヘリの発着場となる可能性も広がった。(2017年3月末・ANHA通信映像)

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タブカでの戦闘に向かうSDF部隊。後方の装甲車両はアメリカから供与されたもの。トランプ政権になってから武器支援が拡大している。(2017年4月・SDF映像)

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出撃するSDFのYPG部隊。小火器・弾薬も有志連合からの支援に含まれている。(2017年3月・YPG映像)

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タブカでの戦闘でISから鹵獲したT- 55戦車の前に立つSDF戦闘員。戦車には「イスラム国・カリフ軍・314」とISの車体番号が残っている。(2017年4月・SDF写真)

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ラッカ西方のタブカにはアサド湖からユーフラテス川下流域に連なって複数のダムや貯水施設がある。シリア内戦でユーフラテス・ダムは、2013年に反体制派が制圧し、その後、勢力を急拡大したISが2014年頃に制圧。この当時から、下流域に暮らす住民は、ISが戦況悪化に陥った場合、ダムを爆破し、決壊させるのではないか、との懸念を抱いていた。(図は4月下旬頃のもの)

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これはIS側のタブカの写真。3月末にIS系アマーク通信が伝えたもの。左は米軍B-52戦略爆撃機と思われる。「空爆によって多数が犠牲となっている」としている。確かに子供を含む民間人も犠牲となっている。それでもIS軍事拠点と判断すれば、民間人の犠牲も想定したうえで空爆は遂行される。あらゆる戦争がそうであるように、このIS壊滅戦にもこうした現実もある。(2017年3月末・IS系アマーク通信映像)

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SDFのダム攻略戦のなか、3月末、IS側はダムの映像を公開し、「十字軍の空爆でダムや設備が損傷し機能停止」との情報を流し、さらにダム決壊の恐怖を煽った。これにより下流域の住民に一時混乱が広がり、避難しようとする者もでた。(2017年3月末・IS系アマーク通信映像)

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IS系アマーク通信はドローンでダムを空撮した映像を公開。シリア政府とロシア軍も、米軍の空爆でダムが決壊または損壊すれば、地域一帯と住民に被害が及ぶと警告。ユーフラテス・ダムはシリア最大のダムで、旧ソ連の支援で1973年に完成。ユーフラテス川の調整弁として機能しているほか、水力発電も行なっている。(2017年3月末・IS系アマーク通信映像)

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IS側はダム構内に複数の爆弾が着弾したことを伝えている。赤い丸で囲んだ部分にあるのがその一部で、これが米軍のものであるとしたら、貫通爆弾と思われる。ダム本体でなく、管理棟部分に着弾したようだ。このIS戦闘員はガスマスクを携え、腰には自爆ベルトをしている。(2017年3月末・IS系アマーク通信映像)

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この映像は、有志連合軍によるダムの空撮。黒塗りは、撮影した航空機の計器データなどが表示されているため公表時に伏せられたもの。ISの主張を打ち消すかたちで、ダム本体への損傷はなく、決壊の危険性がないとした。(2017年3月末・有志連合軍・CJTF-OIR映像)

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その後、YPG主導のSDFがISを排除し、タブカ・ダム(=ユーフラテス・ダム)を制圧。YPGとその女性部門YPJの旗を広げている。ダムからISを排除したことで、爆破決壊の可能性がなくなった。(2017年5月・DIHA写真)

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タブカでの市街戦を戦うSDF・YPG部隊。(2017年5月・ANHA通信映像)

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タブカでISの巨大な旗を引きずりおろすSDF部隊。タブカはアラブ人が趨勢の町。クルド勢力は「領土獲得」のためにこの地域を掌握したのではなく、またこの地方のアラブ人を排除しようとしているわけでもない。あくまでもラッカ攻略・IS壊滅作戦の一部である。今回の声明のなかで、安全が確保されたのちに、新たに地元で編成されるタブカ市民評議会の手にゆだねるとしているのもこのため。また、ダムはシリア全体の財産としてとどまるという趣旨のメッセージを盛り込んだのも、自派勢力の専有物とする意図がないことを明示するためである。(2017年5月・SDF映像)

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