イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)広報官アブル・ハサン・ムハジール「耐えよ。まことアッラーの約束は真実」(全文)【4】全4回 (2017/04/05声明)

◆トランプ大統領は「下劣な愚か者」【声明 4/4】(全4回)
支配地域を次々と失い、すでに壊滅も時間の問題とまでいわれ始めたイスラム国(IS)。だがムハジール声明では、いつの日かバグダッド、ダマスカス、エルサレムアラビア半島テヘラン、インタンブール、ローマを征服する、としている。荒唐無稽な「世界征服の野望」に見えるが、9・11事件のアルカイダは、欧米諸国の圧倒的な軍事力をもってしても壊滅できなかった。たとえいまISを叩けても、再び息を吹き返すかもしれない。過激主義の根を断つのは容易ではない。トランプ大統領の部分はテキスト赤文字の部分。以下全文の第4回。(おもに英語版をもとに訳出・一部意訳・コーランの引用は岩波版から)
【1】【2】【3】4】

【IS音声声明】トランプ大統領に言及した部分(1分)(一部意訳)
アブル・ハサン・アル・ムハジールの声明でトランプ米大統領に言及した部分。「下劣な愚か者」としている。(翻訳字幕は公式英語版のものを挿入しています)
イスラムアブル・ハサン・アル・ムハジール 広報官声明
「耐えよ。まことアッラーの約束は真実」(4/4)

おお、カリフ国の兵士たちよ。イスラムの民よ。犯罪と腐敗の頭目、アメリカはその力を過信し、傲慢さによって盲目となってきた。ゆえに己れの破壊と破滅の泥沼へと向かっていった。そう、アメリカはそこで溺れ死に、抜け出ることなどできぬ。どれほど、あがき、もがこうと無駄。シャムとイラクの地でその足を引きずり込まれ、死のうめきをあげることになる。

いったんイラクでの屈辱と敗北のなか逃げ出し、撤退したのちになって、いま再び侵攻したところで、我々は名誉と堅固さに満ちており、(アッラーから)約束が与えられているのであり、またアッラーのご加護のもと、現在の我らの状況は、アメリカが思い描いているのとは違うのだ。

アメリカの結託同盟も、群衆も、ハイエナどもも、直接対決から逃れることはできぬ。たとえ我らが都市、地域、町をひとつ失おうとも、それはムスリムの参集体を浄化して不浄を取り除くための試煉と純化にすぎぬ。アッラーは、ご自身がお望みになる下僕しもべをお選びになる。

これは、ただ一時いっときの引き潮の局面。そののちには、アッラーの御意のもと、バグダッド、ダマスカス、クドゥス(=エルサレム)、アンマン、ムハンマドの半島(=アラビア半島)への拡大と大いなる征服が成就されるであろう。信仰心に満ちた大隊が必ずやペルシャを襲い、(イランの)コムとテヘランを征服するであろう。 そののち、我らは必ずやローマを襲うだろう。獅子たちは、タクビル(=「アッラーは偉大なり」の唱和)を高々と唱え、コンスタンチノープル(=イスタンブール)を、戦わずして征服して見せるだろう。

これなるは我らが御主のお約束であり、預言者(祝福と平安あれ)からの吉報。まこと、一神教とワラーゥ・バラァ(=信仰への忠誠と、信仰に敵対する者への姿勢)に拠って立つカリフの地で育った世代にためのもの。御主の御為の大道で殺され、死することこそに魅了されし者たち。さあ、アメリカよ、お前に何ができるというのか? 何ができようものか? 信仰心は彼らの血となって帰結したのだ。

彼らは力と宗教の高みが何かを知った。アメリカよ、イラクで、ホラサン(=アフガニスタン地域)で、あるいは全世界で、お前たちはイスラムの民をその宗教からどれほど転じさせようとしたことか。お前たちは邪悪と堕落に満ちた人間のくずどもを傭い、ジハード戦士に対抗させようと総動員をかけておきながら、何か成果を手にできたか? そう、何ひとつたりと得たものはいない。お前たちが望んだものは、かくもむなしく、無駄この上なき徒労に終わった。

ここに在るは、爆弾を満載した車両に乗り込む者たち、最前線で戦う者たち。顎鬚が白髪まじりになった年長の者たち。その髭を血で赤く染めながら彼らは戦った。

まさしく、アッラーは我らになされたお約束に誠実であられた。そして、お前たち、アメリカよ。嘘を吐き、アッラーが我らのための地を授けた日に敗北したのだ。面目を失い、自身とその軍隊に教訓を学ばせたのだ。あまたの資財を投じ、己れの総力をつぎ込んだものの、それらは、アッラーのご加護によって、それらすべては戦利品となって、我らが敬虔なるジハード戦士の手に渡ったのである。

まこと、アッラーはご自身のなされたお約束に誠実であられ、下僕しもべたちを支え、ご自身の軍勢に名誉を授けた。アメリカよ、お前たちは嘘を吐き、敗北したのだ。徒労と困憊、悲惨の10年を経て、嘲笑のまととなったのだ。

イラクのジハード戦士を一掃し、ラフィダ(=シーア派)に主導権を引き継いだなどとお前たちは思っていたかもしれぬが、我らはラフィダや同族の輩、背教徒サハワ(=ここではイラク政府を支持するスンニ派勢力を指す)どもの喉元に、真実の剣を突き付けたのである。この者どもは、その傲慢不遜の振る舞いに見合う破滅を思い知るこことなった。自分の墓穴を掘り、住み家のベッドで殺される哀れな姿をさらしたのである。いずれお前たちアメリカが、シャムの地でクルド無神論者(=YPG)とサハワ背教徒(=ここではシリアのスンニ派反体制諸派を指す)を捨てた日に、これは繰り返されるだろう。アッラーの御意のもと、イラクでアメリカから主導権を継いだ者と同じ運命が待ち受けているのだ。

まさしく、アッラーは我らになされたお約束に誠実であられた。アメリカよ、お前たちは嘘を吐き、敗北したのだ。そしてついぞお前たちの誤りが証明された。その日こそ、幾世紀にもわたって奪われてきたウンマ(共同体)を我らが取り戻した日。ムスリムが失い、忘れられてきた制度を、アッラーのご加護のもとに我らが再興した日。

まこと、その多くが、この世界に目標を定めて以来、耳にすらしなかったもの。ゆえに、我らはカリフ国を宣言したのだ。そう、我らがカリフ国を宣言し、すべてのムスリムのためのカリフ(=バグダディを指す)に忠誠を表明したのである。それにつき従うことは、あらゆる徳にのっとった義務。御主の啓典と預言者(祝福と平安あれ)のスンナ(慣行)を確固と護持する限り、ムスリムは名誉と栄光へと導かれるのである。

アッラーの恩寵のもと、この道は明確となった。そして我らは、分派や集団や組織で分断されたような状況に戻ることはなかった。アメリカよ、お前たちには救い手などいないと知れ。地上すべての場所で、カリフ国兵士の餌食となるのだ。お前たちは完全に破綻し、末期症状は誰の目にも明らかである。

下劣な愚か者がお前たちの統治者となったことが、それを如実に示している。この男はシャム(シリア)が何か、イラクが何か、イスラムとは何かも知らぬばかりか、敵意むき出しで戦争を宣言している。 
訳注:下劣な愚か者=トランプ大統領を指す)

お前たちアメリカには、今よりさらなる苦しみを味わうかの選択肢しかない。これまでの教訓に学び、ジハード戦士のために(武器弾薬など)戦利品を残して撤退するか、あるいは過去と同じ轍を踏んで、戦場で死の泥沼に引きずり込まれるか。アッラーの御意のもと、唯一神信仰者たちが必ずやお前たちをこうした目にあわせてくれよう。

おお、預言者の半島(=アラビア半島)のスンナの民よ、諸君に慈悲のあらんことを。諸君らは聞こえぬか? 目が見えぬようになっても、心の目で見えるのではないか? 己れの一神教と信仰はどこにある? 諸君らのワラーゥ・バラァ(=信仰への忠誠と、信仰に敵対する者への姿勢)はどこにある。

諸君は、アラビア半島の圧政者ども(アッラーよ、彼らに害をなし、その治世を終わらせ給え)が見えぬか? あの者どもは、イラクのラフィダ(=シーア派)に助けの手を差し伸べ、スンナの民の地が侵奪されるのを祝福さえしたのである。 いまこそ屈辱を拭い去り、裏切りの背教徒に立ち向かうべき時ではないか? 諸君こそ、不信仰者どもを許さず、ジハード戦士に対する戦争を仕掛ける十字軍の計略をはねのけ、戦士たちを支えてあらゆる援助の手を差し伸べた者ではなかったか?

アッラーの)啓示が下され、最初に広められた地(=アラビア半島を指す)から、イラクとシャムの地のスンナの民が殺され、屈辱にさらされることになるというのか? (ムハンマドの)ご教友たち、最初の征服を成し遂げた者たちの地から、不名誉と専制と侮辱が広まることになるのか? 諸君らの熱情はどこにあるのだ?

アッ・スィディクとオマル・アル・ファルークの末門たちはどこにいる? アブ・バシールとアブ・ジュンダルの末門たちはどこにいる?
訳注:いずれも預言者ムハンマドの教友、初期イスラム入信者たち。とりわけアッ・スィディクはムハンマドに従い最初にイスラムに入信したアブ・バクルを指し初代正統カリフ。オマル・アル・ファルークは、イブン・アル・ハッターブで第2代正統カリフ

おお、2つの聖地(=メッカとメディナを指す)の一神教の兄弟同胞たちよ。フィトナ(=迫害・内争)を引き起こす圧政の兵士どもや邪悪な学者らを排除せよ。指導者どもや閣僚らを排除せよ。この宗教を支え、兄弟同胞を防衛する諸君の憤激を見せつけてやるのだ! スンナの民に降りかかった苦境は、確実に終わりを迎えようとしている。スンナの民の淑女たちは喪亡と災禍の苦難に打ちひしがれてきた。いかなる障害も、頑迷固陋な愚か者も諸君らの前に立ちはだからせてはいけない。 

モスル、タラファル、ラッカ、アレッポ、そしてイスラム国のすべての前哨地にい
るカリフの兵士たちよ。いま我々は、歴史の大いなる段階、ジハードの歴史のなかに置かれていることを知るのだ。これはウンマイスラム共同体)にあって最も重大な局面であり、歴史の転換点でもある。 ゆえに、この信義に応える民となれ。アッラーの御意のもと、諸君らはこの重責を担うことができるまさにその民であるのだ。自身にふさわしき装備をなせ。その最良たるものはワクワである。
訳註:タクワ=アッラーを意識し畏れ、またその下に自己を自覚すること) 

そしてアッラーのご助力を請い、惰弱に陥るな。 慈悲深きアッラーに心をしっかりとつなぎ留め、そのご助力とご支援を請い求めよ。崇高なるアッラーはお近くにおられ、アッラーを呼ぶ者があったとき、必要なる形でお応えになる。アッラーは邪悪を取り除き、その下僕しもべにはふさわしき態度でお接しになる。

イブラヒム・アル・ハリル(=アブラハム)を火からお救いになった御方は他に誰あろうか? ムサ(=モーセ)のために海を割り、慈悲と恩寵をもって、その下僕しもべ、ユヌス(=ヨナ)を改心させ、またムハンマド(祝福と平安あれ)を支えたのは、どなたであったか?
今こそ忍耐、忍耐。不屈、不屈。信頼、信頼である。

【汝ら、信徒の者、忍耐強くあれ。互いに忍耐を競い合え。己が護りを固うせよ。アッラーを畏れかしこめ。さすれば汝らやがて栄達の道に行くであろう】(イムラーン家章:200節)

そして御主のお言葉を振り返り、とくと考えよ。
アッラーおそれまつっておりさえすれば、必ず出口をこしらえて下さろう、思いもよらぬ方から結構なものを授けて下さろう。もともとアッラーに一切を委ね申した人間は、もうアッラーだけではほかに何も要らぬはず。望むことは必ず果たし給う。アッラーはすべてのものに限度というものをつけ給うた】(離縁章:2-3節)

おお、カリフ国の軍勢よ、名誉の守護者、自身の宗教とウンマイスラム共同体)のために復讐を果たす者たちよ!我らは諸君をどう見てきたか。威力の者たち、勇猛の者たち、栄光の導き手たち、守りにあっては威厳に満ち、対峙するにあっては忍耐強くある者たち。これよりほかにどう見ようか。

さあ、御主との約束たる、擁護と勝利、屈強なる決意を成就させよ! 最大限の差響と最も過酷な痛苦に己れを引きあてよ。殺され、死ぬのは一度限り、だがそのあとの名誉は永劫残るのだ。

罪深き不信仰者どもを地獄絵図の中に叩き込むまで、一握りほどの土地からも退いてはならぬ。あの者どもを家で、路地で、路上で待ち伏せにするのだ。橋に爆弾を仕掛け、奇襲ののちにさらに奇襲を。あの者どもを捕らえ、包囲し、それぞれの前哨地で対峙して構えよ。

バグダッドの、そして南北の、キルクークの、サラハディンの、ディアラの、ファルージャの、アンバルのこの国(=イスラム国)の男たちよ。さらなる突撃をもって、薄汚きラフィダ(=シーア派)とスンニから転向した不浄な背教徒たるアッラーの敵に、存分に思い知らすのだ。あの者どもに、苦痛と死の毒杯をたっぷり味合わせてやれ。諸君らこそ戦いに生きる者、敵を叩きのめす者! 御主からの正しきお導きを求め、信念を寄せ、信頼せよ。一切はアッラーの御手のうちにある。

ホラサン(=アフガニスタン地域)、イエメン、シナイ(=エジプト地域)、リビア、西アフリカ、すべての地で、アッラーのご加護のもと、諸君の国家(=イスラム国)の秀でた支えとなるべく、諸君らは戦いを止めることはなかった。

いざ、アッラーの敵、罪深き不信仰者とその手先たる背教徒に抗するその戦いを拡大させよ。 諸君らが照らし出すこの戦争を通じて、しっかり知るのだ。諸君らはイラク、シャムの「イスラムの地」に対する不信仰者諸国の攻撃に抗し、結託同盟や結集した軍勢を打ち負かし、この地を防衛し抜いている。

アメリカ、ロシア、ヨーロッパの地にいる誠実なる唯一神信仰者たちよ。カリフ国の護持者たちよ!敵に抗し、たゆまぬ進撃を心に誓った者たちよ。今日、諸君らは偶像多神崇拝者どものまったき只中にいる。この重大なる局面にあって、決意込めた準備をなし、己れが果たす奮闘に誠実であれ。敵に対するこの戦いは、容易に成就される応報をともなう一大総力戦であることを心に刻め。 あの者どもを諸君のカリフ国、イスラムの地に近づけぬよう奮闘せよ。

預言者(祝福と平安あれ)のお言葉を思い起こすのだ。
「不信仰者と、その不信仰者を殺す者は、地獄の劫火の中でまみえることはない」ハディースムスリムによるアブ・フライラの伝承)

おお、アッラーよ、不信仰者に災厄を下し給え。あの者どもは、皆の者をあなたの大道から外れさせようとする者ども。あなたの使徒たち(=ムハンマドを始めとしたこれまでの預言者を指す)を受け入れず、あなたの盟伴の者たちに抗し、戦う者ども。

アッラーよ、あの者どもの治世に不和をもたらし、内部に反目と憎悪のいさかいを引き起こし、その足元を揺るぎ崩し給え。あなたの威力を、罪なす者の頭上にとめどなく雨あられのごとく打ち降らし給え。

おお、アッラーよ、あなたの宗教と兵士たちを支え、あなたのお言葉を高みに昇らせ、あなたの旗を高く掲げさせ給え。おお、真理の神よ。

アッラーをおいて、その権能と威力に並ぶものなし。
万有の御主、アッラーにすべての称讃あれ。

◆声明【1】に戻る <<    【1】【2】【3】【4】

f:id:ronahi:20170523162641j:plain

アドナニ広報官のあとを継いだアブル・ハサン・アル・ムハジールとはいったい誰か。今もって謎だが、様々な憶測が飛び交っている。ムハジールとは通常、外国人戦闘員を指すので、少なくともシリア・イラク出身ではないだろう。米アトランティック誌は写真左のテキサス出身でシリア入りしたヤヒヤ・アブ・ハサン(本名ジョン・ジョルジェラス)の可能性を指摘している。一方、中東調査機関MEMRIは、IS関係者のSNSによる情報として写真右アブ・ワヒブ(右から2番目・昨年死亡)と並ぶ3人のいずれかではないかとする未確認情報を紹介。特定を避けるために声明が音声変換処理されていたとしても、張りのある特徴的な声だけに、上記の写真からはどれも合致しそうにはない。正体は不明だ。

f:id:ronahi:20170523155508j:plain

ムハジール声明が掲載されたルミーヤ。米兵の写真が挿入され、キャプションには「やつら(米兵)は負傷するか、死体となるか、精神疾患となって帰還するのみ」とある。(ルミーヤ第9号より)

f:id:ronahi:20170523154857j:plain

シリア・ラッカではクルド組織・人民防衛隊(YPG)主導のシリア民主軍(SDF)が米軍と連携してラッカ攻略の「ユーフラテスの憤怒」作戦を展開している。これに対しISはラッカの軍事キャンプでの訓練のようすを公開し、徹底抗戦で臨む構えを見せている。(IS機関紙アン・ナバア第79号より)

◆声明【1】に戻る << 

◆IS・イラク・シリア・クルド情勢の
新着記事はツイッターで案内しています>>