イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)広報官アブル・ハサン・ムハジール「耐えよ。まことアッラーの約束は真実」(全文)【3】全4回 (2017/04/05声明)

◆殉教称え、自己犠牲の総力戦を訴え【声明 3/4】(全4回)
昨年10月、イラク政府が開始したモスル奪還戦で、イスラム国(IS)は町のほとんどを失った。包囲された西部地域での攻防が続くなか、ISは年配・高齢の戦闘員まで投入し、自爆車両突撃を繰り返す。声明ではこうした自爆攻撃を「殉教作戦」として称賛し、自己犠牲の総力戦を呼びかけている。以下全文の第3回。(おもに英語版をもとに訳出・一部意訳・コーランの引用は岩波版から)【1】【2】【3】【4】

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モスル攻防戦では、若い戦闘員も多数戦死している。写真はISが公開したモスルでの自爆突撃で死亡したイラク人戦闘員。まだ少年の面影が残る顔だ。「モスル西部の殉教作戦で殉教した兄弟同胞アブ・タルハ・イラキ(アッラーよ、彼を受け入れ給え)」とある。(2017年・IS写真)

イスラムアブル・ハサン・アル・ムハジール 広報官声明
「耐えよ。まことアッラーの約束は真実」(3/4)

おお、リビアイスラムの兵士たち、リビアの旗手たちよ、アッラーは諸君の信仰とウンマ(共同体)にこそ、御心をお寄せになっていることを思い起こせ!

兄弟同胞たちは屈辱を受け入れることなく誓約を果たし抜いた。諸君らのゆえに、イスラムを踏みにじらせることがあってはならぬ。まこと、もし真実のもとに忍耐と不屈の心を諸君らが抱いているなら、そしてもし諸君らが確固としてあり続けるならば、アッラーの御意のもと、純然たる血肉によって満たされた若木に実る善き果実を目にすることとなろう。

これはミフナ(原註※2)の日々にあったアハマド・イブン・ハンバルアッラーの慈悲のあらんことを)についての挿話。
「アブ・アブドラ、嘘が真実をいかに覆い隠してきたか見えませぬか? すると彼はこう言った。 「いや決して!真実を覆い隠す虚偽の蔓延は、心が逸脱へと導かれるときのもの。我らの心はいまもって真実とともにある!」
原註※2:ミフナ=試練・辛苦を意味する言葉だが、カリフ・マアムーン時代にイスラム学者が逸脱学派ムゥタズィラ信仰を受け入れることを強いられたり、過酷な処罰に直面した異端審問を指す)
訳注:カリフ・マアムーンは9世紀初頭に在位したアッバース朝第7代カリフ)

諸君の兄弟同胞たちは、あとに続く者たちの手本となって重ねて実践されるべく、不屈と堅忍をもって耐え抜いてきた。 アッラーのご助力を請い、背教者どもに一時たりも安堵や安眠の余地を与えず、その代わりにあやつらを戦争に叩き込み、日々を奪い去ってやるのだと心せよ。最後は御主への義務を果たす者に帰するのだ。

イラクとシャムのスンナの民よ、おお、スンナの民よ!不信仰者の民と十字軍の国々は、その準備を整えた。アメリカはイラクとシャム(=ここではシリアを指す)の地のカリフ国(=イスラム国)に対する戦争を、そしてその覇権を及ぼしてきたあらゆる地での戦争を主導している。 ムスリムの心に燃ゆるジハードの火を消し去れるとあの者どもは思っている。ムスリムの心に立ち上った尊厳の炎を消せると思っている。イスラムの民のためのカリフ制が再興したのち、民衆は結集し、隊伍は統一され、ひとりの教導者、ひとつの旗、ひとつの目標の下に彼らの言葉が結ばれた。

今日、ここに彼らは確固として在る。イスラム国の影響が及ぶ地域を奪い取らんとあらゆる手立てが尽くされたにもかかわらず、ラフィダ(=シーア派)、ヌサイリ(=アサド政権・シリア政府軍)、無神論者(=クルド組織・人民防衛隊YPG)に抗する諸君の幾百の砦と堅固なよろいはまだ尽きてはいない。

十字軍どもがモスルとタラファルに群れなして集結し、これに抗してカリフ国の最も高貴なる息子たちが、いずれの地も防衛し、守り抜いてきたかを諸君は目にし、聞いたことだろう。 息子たち、すなわちムハジリーン(移住者=外国人戦闘員)とアンサール(擁護者=地元戦闘員)による大いなる献身犠牲を知らぬ者はないはずだ。諸君は彼らの勇敢さを目にしてきた。

彼らは、アッラーの恩寵のもと、アッラーの大道に己れの命をいとも安く差し出し、アッラーのご満悦のために死んでいった。これは世界各地の集簇から選ばれたイスラムの息子たちの規範となり、目標となった。 

ムハジール(=外国人戦闘員)の兄弟同胞と競うかのようなアンサール(=地元戦闘員)を目にしたことだろう。アッラーが導く成功と寛大さのもと、殉教突撃作戦には若者だけでなく年配の者も加わった。彼らは皆、互いに競いあうかのごとくでさえあった。
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その栄誉を目に刻んで死にゆく若き者たち
あるいは、歴戦の年長の者たち
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さあ、アメリカよ、惨めな最期を遂げるがいい! 若きも老いも、競うようにアッラーの大道に己れの命をいとも安く差し出すウンマイスラム共同体の民)は、決して敗北せぬ。来世と、(アッラーのための)善果にこそ関心を見出す世代は、決して屈服することなどない。 さあ、立て、スンナの民よ。兄弟同胞を支え、隊伍に加わるのだ。アッラーにまみえる満悦を得るため、各自が態度を示すのだ。さすれば、アッラーも諸君らにご満悦なさるだろう。

まこと、十字軍と不信仰者の国民どもは、今日いまも悪あがきと手捷い策謀をめぐらし、進撃している。それは諸君らの地、― おお、イラクとシャムのスンナの民よ-を空無化させ、ラフィダ(=シーア派)、ヌサイリ(=アサド政権)、クルド無神論者(=PKK・YPG)どもの支配下に置くことを企図しているのだ。

あの者どもはつねに知っている。自分たちに敵対する最もやっかいな存在は諸君ということを。また同様に、湾岸諸国とその周辺地域の棄教政府と同等のミニ・ユダヤ国家とその手先どもにとって(諸君らが)最も危険な存在であるということも知っている。同様にまた、侵奪したムスリムの地から得られる権益と利潤を、あの者どもは案じている。

あの者どもはウンマに対し、幾世紀にもわたって悪辣な鉄爪を掻き立ててきたのだ。かくて、いまこそ、その鉄爪を撥ね返し、引き剥がさねばならぬ。これはアッラーの御意のもと、信仰心と不屈の心、信頼や忍耐、そしてカリフ国の息子たる決意をもってなされねばならぬ。 これこそ天与の約束。それを受け入れようと拒もうと、企図しようと計略めぐらそうとも、アッラーがお命じになる布告以外の何物でもないのである。そう、アッラーがシャムとその地の民に確約されたごとく。

我ら、御主(アッラー)にしっかりと心を寄せれば、アッラーは我らをお見捨てにはならぬ。 アッラーの使徒(=ムハンマド)は仰せになった。
「汝らは軍勢となる。シャムの軍勢に、イラクの軍勢に、イエメンの軍勢に」。 イブン・ハワラはこう述べた。 「おお、アッラーの使徒よ。(どこへ行くべきか)私にお選びくださいませ」 彼(=ムハンマド)は仰せになった。 「汝が向かうはシャムの地。そうでない者はイエメンでその地の川の水を飲め。まことアッラーはシャムの地とその民を我に保証し給うた」
ハディース:イブン・ヒバンの伝承)

アッラーの御意のもと、シャム、イラク、イエメンであろうと、カリフ国の権威のおよぶムスリムのいかなる拠点であろうと、ムスリムの軍勢は己れの地を決して捨てぬのだ。 そして不信仰者の政治家たちやその十字軍の主人どもが、神がなされた約束を打ち負かし、結果はすでに見えているなどと考えるのなら、そして戦場、地域、都市、町でイスラムの息子たちを殺すことで成功すると考えるなら、それは誤りである。

自身の約束を果たし、誠実であった者たちこそ、そのふさわしき場での死を願い求めながら尽力奮闘したと我らが彼らを受けとめ-そしてアッラーが彼らの審判者-それゆえに彼らは出撃したのだ。

おお、十字架の信仰者ども、もはや手遅れ。まことアッラーはご自身の下僕しもべたちになされたお約束をお果たしになる。

アッラーがお約束なさったぞ、お前たちのうち、信仰に入って正しい行ないに励む者は必ず地上の継承者としてやろうぞ、継承者を立てて来た例にならって、と。そしてまたそういう者どものために、特にその嘉し給うた彼らの宗教をゆるぎない基礎の上に据え、今まで散々怖い目に遇ってきたかわり、今度こそ安心を授けてやろうぞ、と。「あの者どもはわしを崇めておる。わしのほかは何者をも拝んではおらぬ」。それでもなお信仰に背くうような者があれば、それこそまことに罪深い人びと】(光章:55節)

シャムのスンナの民よ。アル・バブの町やその近郊地域で、不信仰者の結託同盟がなした悪行の数々を見ただろう。同様に背教徒に成り下がった「兄弟同胞」のトルコ軍や、不義と低俗と裏切りの輩徒たるサハワ(=スンニ派反体制勢力)の捨て犬どもが、スンナの民に対して遂行した虐殺を目にしてきたことだろう。 町はロシア、アメリカ、そしてその手先となった背教徒どもの爆撃で甚大な被害に苦しむこととなった。町にはムスリムたち、そのなかには女性、子供、老人がいたにもかかわらず、あの者どもは慈悲の心さえ見せなかった。

一方、クルドの無神論者ども(=人民防衛隊YPG)と、同様にヌサイリども(=アサド政権)は、町の周辺の村々に対し、スンナの民に対する猛攻撃を加えながら、激烈なる総攻勢を仕掛けた。邪悪と不徳の「イスラム学者」ども(アッラーよ、彼らを呪い不名誉を与え給え)は、(一連の攻撃について)いかなる非難や批判や怒りも表明しなかったし、なによりあの者たちはそうしたことをするような人間ではなかったのだ。

ジハード戦士を侮辱し、あらん限りの罵詈雑言をもって非難するときばかりは、あの者どもは一致結託する。アッラーにかけて言おう。あの者たちは、十字軍によって研ぎ出された槍先の刃に他ならない。その槍先は誰に向けられているか。ウンマを以前の状態とかつての栄光のうちに取り戻し、全世界的な不信仰者の徒党各派に抗して戦い、痛苦を思い知らせる者に向けられているのだ。あの者どもこそ、ウンマに寄りかかりながら、他方でムスリムに対する戦争を仕掛けている輩徒である。

ゆえに、シャムのスンナの民よ、諸君らに望まれていることは何なのかを理解せよ。まことにしてイスラム国は、誠実さにあるいは悔悟のうちに(この国に)やって来るいかなる者の前でも1日たりとも扉を閉ざしてはいない。諸君らが願うのは、善きこと、名誉となることただそれのみ。

すでに諸君らは、アレッポの町を棄て去った棄教集団サハワどもから苦しめられた。カリフ国と戦うために、ドル紙幣の背後で駆けずり回り、アレッポで戦うことなしにヌサイリども(=アサド政権軍)の前に降伏した者たちである。

今日、あやつらがやっていることは、アル・バブから追われたり殺されたりした住民の家からの略奪。破壊しつくされた町の家々の瓦礫の下にははまだ住民の死体が残されたままというのにである。最も卑しく、下劣、堕落、背信の極みをを尽くし恥辱をさらす者どもであり、これほどの罪は不信仰者に並ぶものだ。

明日、停戦をもたらし、それを維持するようなこれらのごとき者どもが、ヌサイリ体制(=アサド政権)に休息の機会を与え、カリフ国(=イスラム国)に対する戦闘の各前線を統合してヌサイリのパートナーとなり、テロに対抗するため行動をともにすることになっても驚くことではないだろう。「戦線」「委員会」「運動」を名乗り、その日ごとで異なった様相や姿勢を見せ、カメレオンの色のごとくに外見を変える者どもなのである。

これらのすべての者どもは十字架の盾であり、ヌサイリの守護者であり、諸君らが直面する苦難や窮状の根源なのだ。 おお、シャムの地のスンナの民よ、諸君らにあるのは、アッラーをおいて、カリフ国のみ。すなわち諸君が栄誉を戴く地を守り、窮状からの救済のすべとなり、名誉と尊厳を防衛するどころ

ゆえに、諸君の高潔さを示す場へと来たれ、栄光を示す場へと来たれ、諸君に命を与え、アッラーの罰から救うどころへと来たれ、ジハードに、前線防衛に来たれ。諸君が道に迷い、不名誉と屈辱をまとったゆえに、これまで顧みこるとのなかった信仰のへと来たれ。

わが御主にかけて、諸君らは戯れに創造されたのではない。まこと諸君には御主とまみえる約束があり、アッラーに審問を受けることになっている。さあ、その審問の準備をなすのだ。

◆声明【4】につづく >>   【1】【2】【3】【4】

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声明では、年配・高齢の戦闘員による自爆突撃を称えている。激戦で戦闘員が消耗するなか、年配の地元戦闘員が自爆車両で突撃する例が増えている。写真は4月に公開されたモスルでの攻防戦で、年配の戦闘員がイラク軍車両に自爆攻撃する映像。ドローンを使って車両を目標に誘導し、同時に撮影録画して、宣伝映像で公開している。写真左の黄色い箱の部分が起爆装置。(2017年・IS映像)

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ISの戦いが総力戦になるなか、支配地域では新たな看板が登場している。年配者を含めた広い世代に戦闘員招集を呼びかけていて、兵員登録事務所の電話番号「133」が記されている。写真の老人は中国からIS入りしたウイグル人ウイグル人戦闘員の過去記事>>(アン・ナバア第79号より)

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今回のムハジール声明で機関誌ルミーヤに掲載された写真。米兵と並ぶイラク兵の写真のキャプションには「背教徒は十字架の従僕となるためその宗教を売った」とある。(IS機関誌ルミーヤ第9号)

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