イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS声明・日本語訳】イスラム国(IS)広報官アブル・ハサン・ムハジール「耐えよ。まことアッラーの約束は真実」(全文)【2】全4回 (2017/04/05声明)

◆「不撓不屈で戦え」と鼓舞【声明 2/4】(全4回)
今回(4月5日付)のイスラム国(IS)広報官アブル・ハサン・ムハジールの音声声明は約36分。IS幹部の音声声明は25分前後が多いなか、非常に長いスピーチになっている。昨年、空爆で死亡したアドナニ広報官の声明と同様、詩を盛り込むなどして格調をもたせようとしているが、どこまで戦闘員を鼓舞できるのは不明だ。「忍耐・不屈の心で戦え」が繰り返され、シリア・イラクで支配地域を失いつつあるISの現状を物語るものとなっている。以下全文の第2回。(挿入されている詩はうまく訳せません。すみません。おもに英語版をもとに訳出・一部意訳・コーランの引用は岩波版から)【1】【2】【3】【4】

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今回のムハジール声明は、ISの月刊誌ルミーヤにも転載された。英語のほかに、ドイツ語、フランス語、ロシア語、ウイグル語など多言語で刊行され、ネットで流通している。欧米などでの襲撃を呼びかける記事が目立つ。(画像は今年5月発行のルミーヤ第9号)

イスラムアブル・ハサン・アル・ムハジール 広報官声明
「耐えよ。まことアッラーの約束は真実」(2/4)

おお、カリフ国の兵士たちよ、イスラムの獅子たちよ。アッラーの慈悲と天国はただ願えば成就されるものではなく、またアッラーがお約束になったことを信じ、誠実で、忍耐強くあり、不撓不屈をもって臨む者でなければ、アッラーはお赦しと多大なる慈悲をお授けにはならぬのだと知れ。 御主の御言葉を知らぬことはなかろう。

【まこと、アッラーは(天上の)楽園と引換えで、信徒たちから彼ら自身とその財産とをそっくり買い取り給うた。アッラーの道に奮戦し、殺し、殺されておる彼らじゃ。これは律法トーラー、福音、およびコーランにも(明記されておる通り)アッラーも必ず守らねばならぬ御約束。だいいちアッラーより約束に忠実なお方がどこにあろう。されば汝ら、そういうお方を相手方として結んだこの取引きを有難いと思わねばならぬ。まったくこの上もない身の幸いではないか】(悔悟章:111節)

アッラーが)買い給うた創造物の間の本質とは、アル・クルトゥビ(アッラーの慈悲あれ)がお述べになったごとく。
「彼らにとってより有益であるか、あるいは少なくとも利益において同等のものが彼らのもとに残される対価として与えられる」
訳注:アル・クルトゥビ=アブ・アブドラ・アル・クルトゥビ=13世紀、コルドバ(現スペイン)出身のイスラム学者で、コーラン解釈書などを手掛けた)

ゆえに崇高なるアッラーがご自身の下僕しもべたちから、その遵奉の証しとして彼らの命と富の破壊を、そしてアッラーのご満悦を求めて殺されることを望む彼らの存在を買い給うた。彼らがもしこれらをなすならば、アッラーは天国をそのお引き換えの対価としてお与えになった。 これぞ比類なき、何物にも代えがたい価値に満ちた大いなる報償。ゆえにアッラーは彼らが取引きと買い給うた物について知ること - すなわち下僕しもべはその命と富を帰服させ、それに代えてアッラーは報奨と寵愛をお与えになる、と、ご明示なさった。これが、買い給う、と呼ばれるものである。

おお、カリフ国の兵士たちよ、諸天と地上を司る御主にかけて、この取引きの契りは、有益に満ちたものである!アッラーの御意のもと、我らは決して止まらぬし、退きもせぬ。ゆえに、敵に立ち向かうときは、(アッラーに)誠実であれ。アッラーにまみえることを愛す者は誰あろうと、アッラーもその者にまみえることを好まれる。これは有益この上なき取引き。つまり、アッラーに信を置く下僕しもべが、アッラーの御言葉を至高に掲げ、シャリーア(=イスラム法)を成就させるために、己れの命をいとも安く、アッラーの大道のために差し出すべくアッラーがとくにお取り計らいになったもの。

アッラーの大道を進むジハード戦士が目指す到達点とは、御主のご満悦、お赦し、ご寛容、成功のご受領、御主の祝福を授かること、ただそれのみである。 これはアッラーがお命じになることを成し遂げ、御方に禁じられたことを避け、アッラーの宗教があらゆるいっさいとなるまで、そしてこの地上すべてがアッラーシャリーア(=イスラム法)によって統治されるまで、いかなる場にあってもアッラーの敵どもと戦うことをもってしてなされるのだ。ジハード戦士が生きるならそれは名誉にのうちに生き、もしジハード戦士が死するなら威厳に満ちて死することだろう。

これが幾代のなかで至高を極めた世代であり、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)のご教友たち、そしてこのウンマ(共同体)のサラフたち(=初期イスラムの信奉者)のありようであった。 そしてこれぞ諸君の預言者(祝福と平安あれ)からのもたらされた吉報のうちにあるもの。

彼はこうお述べになった。
アッラーはご自身の大道のために出撃する者には誰あろうと保証なさった。『私への信仰を抱き、わが預言者たちを護持して、わが大道のジハードを成すためにこそ、その者は出撃する。ゆえにその者に授けられし対価とは、その者が得る報奨か戦利品を授けられること、すなわち天国へと迎え入れるか、あるいはその者が元の住み処へと帰還すること』 
ムハンマドの魂がその手中にある御方(=アッラー)にかけて、アッラーの大道では負傷は止むことなく続き、審判の日が来たるとき、その負傷は止むこととなろう。その色は血の色、だが香りは麝香ジャコウのごとし。 この私、ムハンマドの魂がその手中にある御方にかけて、これがムスリムに苦難が強いられたのでなければ、アッラーの大道のために出撃する分隊の背後にはとどまることはないだろう。
だが、私には(自分で引き連れて)運べるだけの装備蓄えを探すことはできぬし、彼らも同様に十分な装備蓄えはない。私と離れることは彼らにとって過酷なことであろう。この私、ムハンマドの魂がその手中にある御方にかけて、私が好んでやまなかったのは、アッラーの大道で戦い、殺され、なおも戦い、殺され、さらに戦い、殺されることである」ハディースムスリム:アブ・フライラの伝承)

おお、民よ、これぞ不屈の心で耐える逸話ではなかったか? 諸君らの耳に報せは入らなかったか? どの報せなのか? まことわが御主にかけて、どの報せであろうか? 試煉が過酷を極め、不信仰の民と人類最悪の者どもが趨勢を握っているとき、ぬかるみに落ち、信仰の民の真理から道を踏みはずした者に言ってやれ。あの者どもの耳が聞こえなくなるまで、そして恐怖、テロと狂乱の戦慄で満たされる時まで。信仰の民とは有徳が何たるかを命じ、悪徳を封じる者、十字軍ヨーロッパに対し警鐘と訓戒をもってその門を叩き警告を下した者たち。

あの者どもは、これらが死の伝令たることを知っていた。アッラーの恩寵のもと、信仰心からなるキャンプが打ち立てられ、それは挫けず聳えている。不信仰者どものキャンプが逸脱に向かい、堕ちて失敗したのとは違うのだ。

どこに行こうとも、(リビアの)シルトの地の人びとについて語られる。ムハジリーン(=移住した外国人戦闘員)について、アンサール(=地元の出身者や戦闘員)について、その最良、かつ純真なる者たちについて語られる。彼らはリビアの大地に一神教の御旗を高々となびかせ打ち立てた者たちであり、アッラーとその使徒に遵従を奉じ、分裂や不和を断ち、隊伍を結集し、自身の言葉のもとに馳せ参じることを選んだ者たちなのだ。

かくして、彼らはムスリムのカリフ国とイマム(=教導師)に忠誠を表明し、アッラーはこの者たちに様々な場を開き、供した。アッラーシャリーア(=イスラム法)の統治のもと、その御教みおしえを成就させ、ハッド刑を施行し、有徳を命じ、悪徳を封じたのであった。
訳注:ハッド刑コーランなどに規定された、身体罰を含む刑)

これに対し、傲慢不遜なるあの者どもは怒りに打ち震えた。十字軍諸国は総結集をなし、準備を整えた。イスラムとその民との戦争をもって、あの者どもに支援を与え、同盟や配下としてとりたててやろうと希望を抱かせることを通じてである。その作戦と動員結集のほとんどを請け負ったのが、悪魔の同胞たる今世の異端の輩徒どもだった。

ゆえにカリフ国(=イスラム国)に抗する戦争のために、十字軍諸国は、総力、力量、ファトワ(宗教令)までも手駒として傭い込んだ。この者どもが棄教行為を認め、十字軍の手先となったのである。まるで尊き聖なる血を売り渡したがごとくに。 アッラーのご加護のもと、カリフ国の兵士たち、そして秀でて(敵を)征服してきた者の末裔たちは、この地域が直面した最も熾烈なる猛攻のなか、確固として立ち向かった。その不屈さは聳える山々のごとくであった。彼らがその宗教ゆえに威厳に満ち、信仰心によって高みに立ち、己れ自身を、家族や富を、そして子供たちを犠牲に捧げたゆえであった。

すべての確信と不屈の念をもってこの御言葉を唱えながら。
【言ってやるがよい、「お前たち、我々が(どうかなればいいと期待しているが、)結局それも2つに1つ、どちらにしても我々には最良の運になるだけのこと(=勝利を獲るか、さもなくければ殉教者として死ぬことになるから)。だが、我々の方でも期待しているぞ。アッラーが、御自ら、或いは我々の手を通じてお前たちを懲らしめてくださることを。ま、待ってみるがいい。我々も一緒に待ってみよう】 (悔悟章:52節)

いっさいを叩きのめし跡形も残さぬほどの戦争において、およそ半年あるいはそれ以上にわたって死闘が戦われるなか、彼らは十字軍の従僕どもを失望の淵へと叩き込んだ。
訳注:ここではイラク・モスルで昨年10月にイラク軍が開始したモスル奪還作戦での攻防を指している)

イスラムの男たち、そしてカリフ国の兵士たちは、没命果たし、自身の誓いを成し遂げたのち、御主のもとへと旅立った。これぞ我らが彼らに見たもの。アッラーこそがその審判者。

【それもただ、彼らが偉い有難いアッラーを信じているというだけで、その腹いせにやったこと。天と地の一切を統べ給う御神なのに。だが、アッラーはどんなことでもすっかり見ていらっしゃる】(星の座章:8-9節)

ジハード戦士のウンマ(共同体)の不屈さは、大いなる差響となった。彼ら戦士たちは、アッラーの大道で、殺され、また死ぬことをこそ望んだのだった。忍耐と堅忍のもと、アッラーの御法に統治されるあらゆる地から退くことなく、そして、万有の御主たるアッラーを信じぬ者どもに屈服することなく。この者たちこそ忍耐、堅忍、不断の警戒、自己犠牲の信仰心を体現して見せた者たちであった。 彼らは己れの血と魂をいとも安く(アッラーに)差し出し、売ったゆえに、イスラムの民が(アッラーに)誠実なる息子たちを認めるべく、その身をもって成就させた者たち。アッラーの御意のもと、ウンマが尊厳と主権、勝利と統合の地々を結ぶ橋梁となることだけを願い、その他の一切を拒んだ者たち。
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ここにあるは2つの道: 我らが手にする勝利か、
あるいは、最も清き住み処たる永遠の御園
我らは結集した幾千の戦士たちや
英雄となった千の戦士たちとともに戦ったのでなく
我らがともに戦いしは、この御教みおしえ(=宗教)のため 
これぞ皆が参じたその最初の日々に
導き手から勝利を約束されしもの
彼ら、戦いへの固き決意をよろいとしてまとった者たち
あらゆる術策弄したなかで満たされた真実の力から
戦慄与え、山々を薙ぎ崩す先へと進み征く彼ら
彼らの結束、ゆるぎなく、怯えや劣勢よせつけず
真理を好む者誰あろうと、流れる血は付きもの
最も高み大志抱く者誰あろうと、必ずやそこに至れり *****************************************
おお、カリフ国の兵士たちよ、心せよ、心せよ、諸君の敵に寛容になってはならぬ。我らは、かように諸君を指導してはこなかったはずだ。 これぞまぎれなく不信仰者の国々が思い知ったこと。その頭目こそアメリカ。イスラムムスリムに対する戦争を仕掛け、自らその淵に堕ちながら、-アッラーの恩寵のもと-いかなる勝利も獲得することもできなかった。

一方、今日、我らはアッラーの恩寵のもと、新たな時代に至った。カリフ国の国家機構が立ち現われ、その興隆の時を迎えたのだ。 ゆえに不信仰者どもがあちこちで怒りを燃えたぎらせ、わめき散らそうとも、アッラーの権能と威力によって、映し出されるのはあやつらがさらす恥のみ。アッラーこそ、我らをお満たしになる、最も信ずべき御方。

まこと、アッラーこそ、あの者どもに立ち向かう我らの擁護者。そう、まこと、アッラーこそ、あの者どもに立ち向かう我らの擁護者なのだ。来たる大いなる決戦の端緒にあって勝利を授かる者は、忍耐と誠実の者。性急慌ただしき者にあらず。教訓は最後になってのみようやく知ることができる。 

◆声明【3】につづく >>   【1】【2】【3】【4】

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声明では「シャリーアイスラム法)を成就させる」と出てくる。ISはコーランを独自解釈し、シャリーアを布告して統治。強盗は死刑、窃盗は手の切断刑など公開の刑執行を行なった。ISにとって「宗教を打ち立てる・成就させる」というのはアッラーが授けたシャリーアに則った統治を完成させ、同時に敵にジハードをもって戦うということである。写真はモスルでの手切断の刑。(2017年・IS映像)

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ISのシャリーア解釈によって、同性愛者とされた者は建物からの突き落としによって処刑された。落下したあと、戦闘員らがこぶし大の石を投げつける。茶色いベストにはイスラム国・ニナワ県・ヒスバとある。ヒスバは宗教警察を指す。(2015年・IS写真)同性愛処刑については過去記事参照>>

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声明にはリビア・シルトが出てくる。写真はシルトでのISの車列。カダフィ政権崩壊後の混乱のなか、ISはリビアでも勢力拡大を図った。一時はリビアに3つの「県」を持つまでになったが、米軍の空爆リビア統一政府軍の攻勢で多くの拠点を失った。昨年、シルトの中心部からISは排除された。(2015年・IS写真)

◆声明【3】につづく >>

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