イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【クルド・YPG声明全文】米国がYPGへの武器支援を承認~イスラム国(IS)掃討戦

◆トランプ政権、ラッカ攻略戦を加速
5月9日、米トランプ政権は、イスラム国(IS)と戦う主要勢力のひとつ、クルド組織・人民防衛隊(YPG)への武器供与を承認した。今回の決定で、ラッカ攻略作戦がさらに加速することになる。この報道についてYPGのレドゥル・ハリル報道官は10日、声明を発表し、「(アメリカによる支援承認の)決定を歓迎する」とした。以下は全文。(一部意訳)

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5月10日に発表されたYPG報道部声明。アメリカは、これまでYPGが事実上主導するシリア民主軍(SDF)を構成するシリア・アラブ連合部隊への武器支援についてのみ公表してきた。今回のアメリカの決定で、YPGをテロ組織とみなすトルコの反発が必至だ。一方、米軍がYPGと連携して進めるISの「首都」ラッカ攻略戦はさらに加速することになり、また将来的にはロジャヴァ(シリア・クルド地域)のクルド暫定地域が、アメリカによって「承認」されることにもつながってくる。

米国のYPG武器支援決定についての声明(2017/05/10)

今回、米ホワイトハウスがYPGに公式に武器を提供するとした決定は、遅くなりはしたものの、ダアシュ(=イスラム国)やあらゆるテロ集団と戦うわが部隊が、信頼を寄せられた存在であることを示すものとなった。

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人民防衛隊(YPG)レドゥル・ヘリル報道官

この5年半にわたるテロに対する我々の戦いにおいて、わが部隊自身の戦いと、国際有志連合軍の支援によるもの、その両面でいくつもの勝利が獲得されてきた。

YPGが全世界、とりわけ国際有志連合軍に示したものは、我々がテロリズムに抗して戦っている主要勢力であるということである。アメリカの今回の決定以前は、わが部隊は長きにわたり装備不足に直面してきた。

アメリカのこの決定をもって、わが部隊に対する、事実と異なる批判はまったくの意味を失った。
我々はこの歴史的な決定がわが部隊のさらなる戦いを強化させるものとなると確信している。この決定がテロリズムに対する民主勢力にとって迅速かつ重要な成果をもたらすものとなるからである。

わが部隊はこの歴史的な決定を歓迎し、すべての人民がともに自由に暮らし、国際有志連合軍の支援のもと、暗き諸勢力を打ち負かすものとなることを宣言するものである。

人民防衛隊(YPG)報道部
レドゥル・ハリル
2017年5月10日

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アメリカがSDFに供与した装甲車。YPG戦闘員が使っている。アメリカはNATO同盟国でもあるトルコに配慮し、YPGへの武器支援については明確にはしてこなかった。トルコはYPGを、「トルコで非合法武装闘争を続けるクルディスタン労働者党(PKK)傘下のテロ組織」とみなし、YPG地域への砲撃を続け、アメリカにはIS掃討戦でYPGを主要勢力とすべきではないとアメリカに強く求めてきた。(YPG映像)

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これまでにアメリカが供与した装甲車を含む武器・弾薬は「SDFを構成するシリア・アラブ連合部隊への支援」という建前だったが、戦闘現場ではYPGも使用してきた。写真はYPG女性部門YPJが使うアメリカの装甲車。YPJの緑の旗が付けられている。最近は公式映像でも、YPG・YPJが使っているようすを公表するようになってきた。(YPJ映像)

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ラッカ西部のタブカ攻略作戦でユーフラテス川を渡る装甲車。(YPG映像)

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アメリカのYPGへの武器支援は、装甲車、ブルドーザー、小火器、弾薬などがおもなものとなる。アメリカの懸念のひとつは、供与した武器をYPGがトルコに対して使うことである。アメリカもYPG側には対IS戦にのみ使用すること約束をさせ、モニターするとしている。写真は対IS戦と、YPGへの武器支援について説明する有志連合軍ドリアン報道官。(CJTF映像)

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エルドアン大統領の訪米直前の発表となったこともあり、トルコ・メディアはトランプ政権のYPG支援決定を大きく伝えた。YPGの今回の声明では「アメリカのこの決定をもって、わが部隊に対する、事実と異なる批判はまったくの意味を失った」とある。これはYPGと対峙するトルコを念頭に置いている。

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トルコは、YPGがシリア北部で支配地域を固定化することはトルコの安全保障を脅かすとして、YPG地域に繰り返し砲撃を加えてきた。また、IS掃討の名目で「ユーフラテスの盾作戦」を展開し、スンニ派武装組織を支援する形でシリアに越境して軍事介入。実質的にはYPGの地域拡大を狙っていた。写真はシリア、アル・バブでの戦闘でISに奪われたトルコ軍戦車と装備。(2016年12月・IS系アマーク通信映像)

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写真はシリア北部に派遣されている米軍戦闘装甲車。トルコ軍はYPG勢力地域に空爆や砲撃を断続的に加えている。一方、YPG側もトルコ軍に砲撃。米軍はYPGに抑制を求めつつ、同時にトルコ軍も牽制する形で、一部部隊がトルコと接する国境線地域に展開した。トルコ軍が識別できるよう米軍戦闘車両は大きな星条旗を掲げている。(ロジャヴァ・ニュース映像)

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