イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【YPG動画・日本語訳】シリア・クルド組織YPGに日本人(または日系)戦闘員が参加か? 

◆YPG動画に登場~イスラム国(IS)との前線地域
4月22日、シリアのクルド組織・人民防衛隊(YPG)は日本人(または日系)戦闘員と思われる青年が登場する動画を公開した。映像で青年はラシードを名乗り、タイトルにはラシード・ジャポンヤとある。(動画字幕では別表記レシット・ジャパンヤ)。名前は組織名と思われる。ジャポンヤとは日本を指し、青年が日本人かまたは日系であることを伺わせる。YPGが「日本人」として戦闘員を紹介したのはこれが初めて。

【動画・日本語訳】YPG「日本人」とされる戦闘員(2017/04/22)一部意訳

YPGの広報動画に登場したラシードを名乗る青年。映像ではアメリカ英語に近い発音で話しており、日本国籍なのか、日系で欧米など外国籍保持者なのかは不明。(YPG広報部映像)

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腕にYPG章がついているのがわかる。「YPGに加わって3カ月」と話しており、シリアでの軍事訓練期間を含めると最近、YPGに参加し、前線に配置されたのではないかと推測される。

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今年3月下旬に出た別の映像。同じ戦闘員と思われる。外国人戦闘員が複数登場する映像で、このときは名前は出なかった。(Kurdistan Qestion映像より)

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今回YPG公表の映像では、「現在、タブカ作戦に参加」としているため、ISとの前線地域であるラッカ西部のタブカ・ダム近郊のエリアにいることが推測される。

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YPGはシリア民主軍(SDF)とともに、IS「首都」ラッカ攻略へ向けた「ユーフラテスの憤怒作戦」と進めている。米軍主導の有志連合の空爆支援も受けながら、東西北の3方向からラッカ近郊に迫っている。日本人とされる戦闘員がいると思われる前線が、ラッカ西方タブカ。(2017年4月上旬頃の戦況図)

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映像冒頭で左に映っているのは、中国系英国人の戦闘員で、2年前からYPGで戦っていることが確認されている。日本人とされるラシード戦闘員(右)も並んでいることから、同じ部隊で戦っているようだ。国際義勇兵部隊には多数の外国人が参加しているが、スパイチェックや適格検査もあり、だれもが受け入れられるわけではない。また、もし日本人とすれば、外国の武装組織による戦闘行為に日本人が参加したことになり、日本を含む関係国の身元調査なども行われるだろう。

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この中国系英国籍の戦闘員は本名ホァン・レイ(黄磊)でYPG組織内部のクルド名はシパン。英マンチェスター大学出身で、国際義勇兵としてYPGに参加したとメディアは報じている。先日、SNS動画ではカタコトのクルド語で話していた。

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中国系英国籍のホァン・レイ戦闘員は、東洋系顔立ちゆえに、一部のトルコ・メディアで「YPGに日本人戦闘員」と誤って報じられたことがある。写真はトルコ・メディアの見出し。のちに中国系英国人と報道されるようになった。トルコ政府はYPGを「クルディスタン労働者党(PKK)傘下のテロ組織」とみなしている。このため、トルコを経由してYPG地域入りする外国人義勇兵志願者に対しては、トルコ国境警備隊や情報機関が目を光らせている。今後、ISを壊滅させたとしても、のちに本国に帰国する際、出身国によっては治安当局から取り調べや監視を受ける可能性がある。

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左端が中国系戦闘員ホァン・レイ。組織内部ではクルド名「シパン」を名乗っている。(シパンとはトルコ東部ヴァン湖北にある山)。右も外国人戦闘員でアメリカ、オランダ、ニュージーランド、スペインなどからの義勇兵だ。経歴も左翼活動家や元兵士などさまざま。入隊にあたっては政治思想や適性のスクリーニングがある。その後、過酷な軍事訓練、指導部への忠誠式を経て現場に配置される。YPG独特の強力な組織内部の規律や統制、オジャラン指導者に血と命を捧げる忠誠といった思想的決意などもあり、ISと戦いたいというだけで義勇兵を希望しても容易には受け入れてもらえない。今回公表された、日本人とされる戦闘員がどのような経緯、経路でシリア入りし、YPGに参加したかは不明。(ロナヒTVより)

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YPGに参加したドイツからの戦闘員。ほとんどの外国人戦闘員が英語で話すなか、この1993年生まれのドイツ人戦闘員ケヴィン・ヨアヒム(組織名ディルソズ・バハル)は流暢なクルド語(クルマンジ)を話している。「マルクス・レーニン主義を信奉し左翼活動していたが、オジャラン指導者の思想に共鳴し、YPG入隊を決意」とPKK特有の高度な政治用語も交えながら話していた。2015年7月戦死。

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外国義勇兵参加はYPGにとっては国際連帯をアピールする政治的意図もあり、広報映像に何度か登場しているが、外国人だからと特別扱いされているわけではなく、前線に配置されている。このため戦死者もあとをたたない。写真はこれまでに戦死した外国人戦闘員の一部。ドイツ、カナダ、イギリス、アメリカなど各国から義勇戦闘員が参加している。中央上の赤い四角はトルコ・マルクス・レーニン主義共産党(MLKP)からのドイツ人女性で戦死。右下の青い四角2名はYPGからマンビジ軍事評議会に配属されたドイツ人とアメリカ人でトルコ軍の空爆で死亡。YPGは社会主義的性格が強いこともあり、外国人戦闘員にも元左翼活動家などが多い。

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昨年12月末に死亡した英国人戦闘員ライアン・ロックは、ラッカ西方の前線でISとの戦闘で死亡。

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ISは「十字軍を踏みしだく」としてライアン戦闘員の遺体をIS戦闘員が踏みつける写真を12月末に公開。ライアン戦闘員の頭部の銃創が顎から上に向けて撃ち抜いたものであったことから、ISに包囲されて捕虜となるのを避けるため自決したのではないかとイギリス・メデイアは報じている。ISとの戦いに大義を抱き、多数の外国人義勇兵が加わっているが、外国人も地元戦闘員と同様に前線で戦うため戦死者があいついでおり、戦争の現実は重い。(IS映像) 一部をぼかしています

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写真はイギリスでのライアン戦闘員の葬送に集まったクルド人支援者たち。

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