イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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動画【PKK・日本語訳】クルディスタン労働者党(PKK)カラユラン司令官・ 2017 ネウロズ声明(演説)全文

◆トルコ治安部隊とPKKの衝突激化
クルドの新年ネウロズ(3月21日)を迎えるにあたり、クルディスタン労働者党(PKK)のカラユラン司令官は、ゲリラ・キャンプで演説した。2013年にはトルコ政府との一時停戦に合意したPKKだが、その後、全面戦争路線に転じ、トルコ南東部でトルコ軍や治安部隊と激しく衝突している。その背景には、エルドアン政権の強硬姿勢やシリア情勢、イスラム国(IS)の台頭などいくつもの要因がある。PKKはゲリラ部隊に加え、南東部の町々で準軍事民兵を組織し、治安部隊と衝突している。トルコ政府はPKKを「テロ組織」とし、掃討作戦を進めるが、南東部では双方の衝突で住民が巻き添えとなったり、家屋が破壊されるなど深刻な被害も出ており、国連機関は懸念を表明している。以下はPKKカラユラン司令官の声明(演説)全文。(一部意訳)

【動画・日本語訳】カラユラン司令官ネウロズ声明(2017年3月・クルド語)転載禁止

軍事教練課程を修了したPKKのゲリラ戦闘員を前に演説するムラット・カラユラン人民防衛中央隊総司令(中央)。左の女性はゾザン・チェウリク(YJA-STAR)司令官、右はイルファン・アメッド司令官。場所はイラク北部の山岳地帯カンディルにあるゲリラキャンプ。PKKは昨年、ゲリラ増員の方針を打ち出し、クルド青年に参加を促してきた。演説では今月起きたイラク・シンジャルでのクルディスタン民主党(KDP)との衝突についても言及。KDPはトルコと結んで、勢力拡大を図るPKKに対抗し、緊張が続いている。

PKKカラユラン司令官ネウロズ声明 (演説)2017

同志諸君、ネウロズの日は、わが人民の歴史において重要な位置を占めてきた。ネウロズは自由を導く吉報を伝える日であり、闘争と勝利の日であった。我々、クルディスタン・ゲリラ戦士は、オジャラン指導者と獄中の同志のために、このネウロズの日を祝う。

クルディスタン全人民、この地域の人民、すべての同志たち、戦いに殉じた烈士の家族、烈士の母たちのためのネウロズをここに祝うものである。

現代の英雄カワたる烈士マズルム・ドアンとともに、革命闘争に殉じた烈士たちを追悼し、決意をあらたにする。そして先日、烈士となったフェルゼンデ司令官、マルディン管区のソロ司令官、同志ズナリン、バハザット、ロジハットたちを追悼する。
訳注:英雄カワ=ネウロズ伝説の物語に出てくる鍛冶屋の男。暴君を倒した英雄として知られる)

加えてシンジャルで殉じ、父と兄も烈士であるオルハン・バラン、そしてチェクダル烈士を追悼する。さらに、シンジャルの英雄たち YBŞ(シンジャル抵抗隊)のアメッド・シェンガリ、ショラシ・シェンガリ、チヤ・ゼルデシュト、アリフ・シェンガリ、テコシンらの烈士同志たちを追悼する。

訳注:シンジャル抵抗隊 YBŞ=PKK系のヤズディ教徒の戦闘部隊。住民防衛などの目的で編成された。2014年、ISによるシンジャル襲撃時、クルド地域政府のペシュメルガがヤズディ住民を置き去りにして逃げ、虐殺や女性拉致を招いた。これに対し、PKKはIS地域に突撃して住民の一部を救出したことから、相当数のヤズディ教徒にPKK支持が広がった)

クルド人女性、ナゼ・ナイフ・クァワルにも追悼の意を表する。これら烈士たちは誇りであり、我々の道を照らした光であった。自由クルディスタンのもとに、烈士たちの名誉は我々の心に刻まれるだろう。

同志諸君、わが人民は2017年のネウロズを迎えた。いま、自由クルディスタンへ向けた闘争は重要な局面を突き進んでいる。
現在、わが地域では戦争が進行中である。この戦争ではクルド人民が主要な役割を担っている。この地域は再編され、クルド人民がこの地に確固とした場所を獲得することになるだろう。

自由クルディスタンを建設する時が到来したのだ。もはやこの事実を否定できる者などいない。クルディスタンを占領する植民地主義者は、この現実を十分知っている。イランは秘密裏に動くが、他方、トルコは剣を握って、公然とその姿をさらしている。

AKP(公正発展党)とMHP(民族主義者行動党)の戦略的狙いは、クルド人民が自由と地位を獲得するのを阻止することである。ゆえに、この2年にわたり、彼らは激しい攻撃を加えてきたのだ。
現在、オジャラン指導者に対し、世界にも類例なき隔離拘禁と精神的拷問攻撃が加えられている。同時に、わが町々、ジズレ、スル、シュルナック、ヌサイビン、ヘゼヘ(イディル)、ゲヴェル(ユクセコヴァ)、シロピ、ファルキン(シルヴァン)が破壊攻撃にさらされている。1万におよぶクルドの政治運動家が投獄された。いままさに、わが人民のあらゆる尊厳が攻撃を受けている。
これらの攻撃は、バクール(北=トルコ・クルド地域)に限ったことではない。ロジャヴァ(西=シリア・クルド地域)、そしてバシュール(南=イラク・クルド地域)でも同様である。クルディスタン自由闘争を敗北させるため、クルド人民とその革命に対し攻撃を加えているのだ。

彼らは自身を強いと思っているゆえに、我々を攻撃するのではない。自身が弱いからこそ、我々を攻撃するのだ。自由クルディスタンの到来を恐れているのだ。一方で彼らは、我々に対する戦争に勝てないと知っている。
ゆえにトルコ軍将官は、クルディスタン内のアラブ人部族やいくつかのクルド勢力と会合を重ね、彼らがロジャヴァ(シリア・クルド地域)に対して戦うよう仕向けてきた。村落警備隊の頭目たちとも会合を持ち、金銭まで提供している。

訳注:村落警備隊=トルコ政府がPKKの活動を封じるため、村落地帯でクルド人を編成し、武器を供与して地域防衛任務にあたらせている。親政府系のクルド住民のほか、拒否すればPKK支持とみなされるためしかたなく警備隊に参加する者もいる)

北部(トルコ・クルド地域)において、クルド人どうしを反目させ戦争に仕向けるためだ。AKPとMHPに主導されたトルコ国家は、幾多の工作と南部(イラク・クルド地域)での策謀をもって、クルド内戦化を企てている。

すべてのクルド人の自覚のある者たち、そして民主主義者は、植民地主義者のこの策謀を警戒せねばならない。

いまクルディスタンは自由を勝ち取る局面を迎えている。2017年のネウロズは、自由と勝利ネウロズである。今日、この日、クルディスタンのすべての政治、人民とで団結を構築し、国民民主会議として結ばれることを呼びかける。

この団結は、クルド人民と自由クルディスタンの未来を決定するものとなろう。クルド人の政治は、その手腕と対話によって解決を導くべきである。そうでなければ、MHPが主張するごとく「クルド人など踏みつぶす」が現実のものとなってしまう。

「時代遅れの者たちに、諸問題を解決できるわけなどない」と言う者もいるだろうが、これほどの恥はない。解決策は対話を通じてもたらされるのだ。攻撃や脅迫を通じてではない。

シンジャルで、戦闘行為に従事していない一般住民への発砲事件が起きた。これが許されようか。彼らはクルド人であり、ヤズディ教徒である。クルディスタンの革命を担う者なら、そしてこの国の政治家であるなら、シンジャルのヤズディ女性たちに責任を負っているはずだ。

現在もヤズディ女性はダアシュ(イスラム国)に拉致されたままである。我々がすべきことは、彼女たちを殺すことではなく、救出することである。クルドの娘たるナゼ・ナイフを殺したことをどう正当化するというのか。平和的な行進をしていただけの無防備の市民である。これはいったい何を意味するのか?
訳注:ナゼ・ナイフ=ヤズディ女性団体のメンバーで今月、PKK系団体がシンジャル近郊のハナソルでデモ行進をした際、クルド地域政府の治安部隊やペシュメルガとの衝突で死亡。PKKとクルド地域政府がハネソルの主導権を巡って対立が先鋭化。PKKは「クルド地域政府とクルディスタン民主党(KDP)が発砲して殺害」と非難)

これがペシュメルガの姿か? どうすれば司令官はそんな命令を出せるのか? これを恥でなくて何というのか? 我々は、ひとつの課題に向けて取り組んでいるのであり、これはわが人民の利益となることをすべての者が知らねばならない。

誤った政治はクルド人民とクルディスタンの利益を脅かすものとなる。ゆえに、いかなる過ちも犯すべきではない。現在の局面はクルド人民の闘争の勝利の展望を提起している。まずなすべきは、植民地主義たちの策謀に対してクルド人民が闘争を闘い抜くことである。その先にこそクルド人民の展望が切り開かれるのだ。

今日は重要な日である。わが人民のすべてが、この大いなる日を祝っている。とりわけアメッド(ディヤルバクル)と、バクール(トルコ・クルド地域)全域において、AKP-MHPのファシスト集団に対するネウロズの炎を高く燃やし、結集し、自由と民主主義のメッセージを届けるのだ。

同志諸君! この大いなる祝福の日に、アポロ軍事キャンプ、マハスム・コルクマズ教育隊、ハキ・カレル教育隊での教練が達成された。今年は、ここを含む12の教育隊で軍事教練が達成された。教練を通じ、自由クルディスタン・ゲリラ戦士の強化と高度な専門技能が獲得されることを願っている。21世紀のゲリラは、現代的な技術を戦術に応用し、大いなる創造性のもとに勝利を勝ち取る。

この4年、我々は人民防衛軍(HPG)の再編を進めてきた。この軍事教練修成をもって、再編工程も最終段階を迎えつつある。ゲリラ戦士は、クルディスタンの人民をいかなる場所でも防衛する使命がある。この歴史的局面にあって、戦闘現場で不屈の姿勢を貫かねばならない。

オジャラン思想と自己犠牲精神で武装されたクルディスタン自由ゲリラ戦士は、烈士チヤゲル、アザッド・シセル、デヴリム・アメッド同志らの遺志を受け継ぎ、2017年の戦いを担い、勝利の年へと導くだろう。

「PKKは3月、4月には敗北し、消え失せるだろう」などと敵は主張している。わが人民が知るべきは、AKP国家は心理戦争を仕掛けているのであり、その9割は虚構に満ちたものということだ。
クルディスタンの自由への前進を止めることなどできない。この歴史の流れを変えることは誰にもできない。勝利はわが人民のものである。
敵は我々に戦いを挑みかけている。だが、我々にはこの戦争への準備ができている。ここの同志たちは軍事教練を達成した。司令官たちは、黒海、デルシム(トゥンジェリ)、アメッド(ディヤルバクル)、ボタンの各戦線での戦闘任務を切望している。

我々と敵の間に誰かが割って入ることはありえない。トルコ国家主義やAKP-MHPファシスト集団が我々との戦いを望むなら、彼らと我々の間にクルド人は割って入るべきではない。

クルディスタンに自身を捧げた戦士たる我々は、この戦争で失うものなどない。わが人民の利益を守ることが目的であり、この歴史的局面において、その使命を果たすものである。

マハスム・コルクマズ、ハキ・カレルの各軍事キャンプにおけるオジャラン思想に基づいた軍事教練は、勝利の礎石を築くことになろう。

この信念のもと、今日、軍事教練を達成した同志たちを祝い、勝利を願うものである。2017年のネウロズから始まる新たな闘争は、オジャラン指導者の釈放とクルディスタンの前進を領導するものとなる。ネウロズの炎が、自由へ向けた歩みを切り開くだろう。未来はわがクルディスタン人民のものである。

ネウロズ万歳!
オジャラン指導者万歳!
わが命と血はオジャラン指導者のために!
オジャラン指導者なくして我々はない!

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トルコでは治安部隊とPKKの衝突が続く。今回のカラユラン声明に出てくるトルコ南東部マルディン県ヌサイビンは激しい戦闘が起きた町のひとつ。戦闘で住宅地が広範囲に破壊され、家を失う住民があいついだ。(2016年・クルド・メディア写真)

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国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は今年3月、トルコ南東部の人権状況に関する報告書を発表。トルコ治安部隊とPKKとの衝突とその掃討作戦の過程で多数の住民が家を失い、2015年7月~2016年12月までに35万人余りが避難生活を余儀なくされ、深刻な人権侵害が起きているとした。報告書では、マルディン県ヌサイビンで破壊前と破壊後の写真を比較。(OHCHR報告書写真)

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図はクルディスタンにおけるPKK系組織の相関図。PKKはクルディスタンでの戦いを「植民地主義の占領による収奪と民族存在・文化抹殺攻撃」と規定し、これに対する闘争を、クルディスタン自由闘争と呼んでいる。ロジャヴァ(シリア・クルド地域)での戦いも、こうした思想が色濃く反映されている。オジャランが提唱した民主的共同体連合(デモクラティック・コンフェデラリズム)によって各地の政治組織が包括される、とする思想に基づいて関係性が構築されている。アメリカはPKKを「テロ組織」と規定する一方、IS壊滅作戦でPKK系のシリアの人民防衛隊(YPG)が主導するシリア民主軍(SDF)に軍事支援するなど複雑な状況となっている。

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