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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画+写真30枚】イスラム国(IS)戦術分析(18)◆戦闘員養成5・各地に広がる軍事キャンプの脅威(イエメン・リビア編)

◆各地に拡散したIS軍事キャンプ【動画+写真30枚】
2014年にはシリア・イラクにまたがって広大な地域を支配下に置いたイスラム国(IS)。その後、イラク政府軍やシリアのクルド組織・人民防衛隊(YPG)の攻勢を受け、現在、ISは後退局面にある。一方で、ISはイエメン、リビアアフガニスタンといった政権基盤が弱いイスラム圏で、権力の真空状況に付け入る形で拠点作りを進めてきた。シリア・イラクでISが壊滅したとしても、別の地域でISが活動を続ける可能性もある。今回はイエメン・リビアに広がる脅威を軍事キャンプから考察。

【IS動画・日本語訳】イエメン軍事キャンプ(2015) 一部意訳・転載禁止
シリアから遠く離れた場所ながら、イエメンでも軍事教練の基本メニューは共通しているようだ。前回のアフガニスタン軍事キャンプ同様、専門の軍事教官が派遣されていることが伺える。この映像は2015年4月公開で、ドローンが空撮に使われている。砂漠の射撃訓練という単調な映像だが、低空飛行による空撮やアングルを変えて撮ったりと工夫が凝らされている。ワイヤレスマイクも使い、V字型に整列した戦闘員がひとりづつメッセージをつないでいく演出まで計算している。

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ISが最も勢いがあった2014年夏頃は、シリア・イラクで掌握していた地域の面積をあわせると、日本の半分近くに及ぶほどだった。さらに、エジプト、イエメン、リビアアフガニスタン、西アフリカ、北コーカサスチェチェン・ダゲスタンなど)に地下拠点を作り、その一部を「県」(ウィラーヤ)として宣伝してきた。ほかにもバングラデシュ、インドネシア、フィリピンなどにも浸透を図ろうとしている。シリア・イラクでISを叩けば壊滅するのではない。政情不安や混乱が続く「権力の真空地帯」にISが入り込めば、あらたな拠点となる可能性がある。(地名の呼び名など細かいところが間違っていたらすみません。だいたいあってると思います)

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【イエメン・サナア】 冒頭で紹介した動画が公表されたのは、2015年4月。イエメンでは政府軍とフーシ派勢力が衝突し、サナアを占拠、大統領の辞任など政権が崩壊するなか、アルカイダ勢力も加わって騒乱が続き、フーシ派が「政権掌握」を宣言した時期である。さらにサウジアラビアも軍事介入している。そうした混乱状況のなかでISも拠点作りを進めていた。アルカイダ勢力に比べると規模は小さいが、プロパガンダ映像のレベルはアルカイダをしのぎ、宣伝効果は高い。(2015年・IS映像)

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【イエメン・アダン】 写真はアデン地域のシェイヒン軍事キャンプ。イエメンはアルカイダ勢力基盤だった。現在もアルカイダはイエメンでの存在感は優位にあるものの、ISはシリア・イラクでの台頭のなかイエメンにも勢力浸透をはかってきた。ISは治安機関に対する襲撃や自爆攻撃も繰り返し、メディア部門を通じて「戦果」を報じている。(2015年・IS写真)

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【イエメン・アダン】 シェイヒン軍事キャンプ。ISがクオリティの高い動画や写真報告で軍事キャンプの映像を数多く公表し、スンニ派に結集を呼びかけた意味は大きい。(2015年・IS写真)

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【イエメン・アダン】 ISに使われる車にTOYOTAの文字。悲しい。日本車の間違った使い方である。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト ISに使われるカメラにSONYの文字。やはり悲しい。日本製ビデオカメラの間違った使い方である。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト】 2015年10月のイエメンのメディア活動を特集した写真。「メディア班の講習」とあり、ワークショップでチームが撮影を学んでいる。ISがメディア戦略を重視しているのがわかる。イエメンにありながらこうしたことを組織できる能力や、戦略性にも注目すべきだろう。また、捕らえた敵兵をカメラの前で斬首するISの「手法」も、共通して用いられている。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト イエメン・ハドラマウトにあるシェイク・アナス・アル・ナシュワン軍事キャンプ。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト サナアの軍事キャンプ同様、ここも共通した教練メニューがあるようだ。指導者バグダディを頂点とするIS組織の軍事部門が、運営・統制していることが伺われる。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト これはハルワラと呼ばれるアラブ式駆け足のひとつ。上半身は動かさず、膝を交互に高く上げて、ジャンプするように走る。以前、イラク軍の基地を取材したときに兵士に教えてもらったが、かなりキツかった。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト】 RPG-7ロケット砲を撃つ訓練。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト ロシア製のPK機銃。ISでは、ベー・カーとかビー・ケー・シーと呼ぶ。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ハドラマウト 銃を携えるときに、引き金に人差し指をかけず、伸ばして添えている。銃の扱いの基本だが、訓練を受けていない場合はこれができていなかったりする。こうしたところにもISの教練指導が徹底されていることがわかる。(2015年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 これは別のキャンプ。2016年12月に公開された写真。同年8月にシリアで空爆によって死亡したIS広報官、アブ・ムハンマド・アドナニの名前を冠したベイダの軍事キャンプ。早くもアドナニをキャンプ名にするプロパガンダの戦略性を感じさせる。(2016年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 これもアブ・ムハンマド・アドナニ軍事キャンプ。戦闘服一式が真新しくみえるので、撮影用に支給されたものではないだろうか。(2016年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 アドナニ軍事キャンプ。指導教官が至近距離で実弾を撃ち込んでいく。(2016年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 背面匍匐前進でも、実弾が撃ち込まれる。鬼教官である。(2016年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 タイヤを引っ張る匍匐前進。目の前に実弾。教官、鬼すぎる。(2016年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 対人格闘訓練。説明の文字には「イングマスィ課程」とある。イングマスィは以前も紹介したが、いわゆる突撃決死隊のことで、写真では突撃決死戦士の訓練をしていることを伝えようとしている。実際に突撃精鋭部隊を養成しているのか、一般戦闘員の教練でもあえてこうした表現にしているのかは不明。(2016年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 ナイフ格闘訓練。(2016年・IS写真)

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【イエメン・ベイダ】 最後はバグダディへの忠誠(バヤア)を表明して、連帯感を強める。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 ここからはリビアリビア東部「バルカ県」(=キレナイカ)のシェイク・アブ・アル・カハターニ軍事キャンプ。カハターニとは、おそらくISのリビアでの幹部だったアブ・ナビル・アンバリのことと思われる。2015年11月、リビア・ダルナの米軍の空爆で死亡している。軍事キャンプの名前は、高名な指導者や指揮官の名前を冠することが多い。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 有刺鉄線をくぐる訓練。これはIS以外にも武装各派や、イラク軍もやっているので、IS独特というわけではない。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 リビアの混乱に乗じて支配地域を獲得したISだが、一部地域では、リビアの統一政府勢力がISを駆逐しつつある。また米軍が空爆作戦を進めるなか、拠点を失うなどしているが、いまも攻防戦が続いている。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 カラシニコフ銃など各種武器の分解整備。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 「理論学習部門」とある。RPG-7ロケット砲の砲弾の種類を教えている。破片榴弾対戦車榴弾、サーモバリック弾、タンデム榴弾などの違いを学んでいるようだ。こうした映像教材を作って、プロジェクターで上映するといった体系的なメニューが軍事キャンプの教練課程に取り入れられているのがわかる。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 学習では、軍事講習のほかに、信仰・教義、シャリーアイスラム法)が徹底的に教え込まれる。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 建物の突入制圧訓練。このような攻略突撃にあたる戦闘員はムカタハミーンと呼ばれる。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 「救急救命措置の講習」とある。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 これは足の負傷時の措置と思われる。地域を越えて体系立った訓練メニューや教練課程が存在することの意味は大きい。一つの拠点を壊滅させても、いつでも各地に伝播し、すぐに戦闘員が養成される可能性がある。(2016年・IS写真)

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リビア・バルカ】 基本教練の課程を修了すると、右手を差し出して忠誠を誓う儀式がおこなわれる。ISはこれをバヤアと呼ぶ。いわゆる各国の軍隊の宣誓式にあたる。ISは何に忠誠を表明するかというと、バグダディ指導者である。彼のために喜んで命を差し出すことをともに宣言する。作戦前に志気を高める時も円陣を組んで忠誠の言葉を唱和する。イラク・シリアから遠く離れたリビアの地でもバグダディへの忠誠がなされる。(2016年・IS写真)

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