イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【動画+写真34枚】イスラム国(IS)戦術分析(17)◆戦闘員養成4・各地に広がる軍事キャンプの脅威(アフガニスタン編)

◆シリア・イラク越えアフガンへ~タリバンとも衝突【動画+写真34枚】
イスラム国(IS)が活動するのは、シリア・イラクだけではない。これまで、エジプト、リビアアフガニスタン、イエメンなどにも浸透を図ってきた。軍事キャンプでの戦闘員養成は、拠点構築の足掛かりを作るうえでも重要な任務と位置付けられている。今回はISがホラサン県と規定するアフガニスタン地域(とパキスタン国境地帯)の軍事キャンプ。

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【IS動画・日本語】ホラサン(アフガン地域)軍事キャンプ 一部意訳・転載禁止
2015年11月に公開された動画で、ISが「ホラサン県」とする地域にあるアブ・オマル・バグダディ軍事キャンプ。場所はアフガニスタンまたはパキスタン国境地帯の山岳部と推測される。アブ・オマルは、イラクイスラム国(ISI)の指導者で、2010年、米軍・イラク軍の合同作戦で死亡。動画のタイトル「そして、備えよ」はコーラン・戦利品章から。

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動画に映っていたキャンプ。黒い隊旗にはアブ・オマル・バグダディ軍事キャンプとある。前回の動画と同様、コーランの一節【かれらに対して、できる限りの武力と 多くの繋いだ馬をもって備えよ。それによってアッラーの敵、あなたがたの敵に恐怖を与えよ】(戦利品章:60節)が引用されている。これはIS軍事キャンプに共通しており、ジハード戦士養成の精神的支柱のひとつに据えられている。(2015年・IS写真)

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砂漠や平地が多いシリア・イラクと違って、アフガニスタンでは山岳地帯や渓谷が軍事拠点の特徴。山岳地帯が多く、海のないアフガンだが、迷彩服が青い海上仕様になっている意図は不明。このキャンプでは緑の迷彩服が教官のようだ。(2015年・IS写真)

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これまで取り上げたイラクでの軍事キャンプでの戦闘員の動作や訓練の流れと共通する部分が多い。指導要員がアフガニスタンに入り、一定の軍事教練マニュアルに沿って訓練メニューを作っている可能性が高い。(2015年・IS写真)

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戦闘訓練の基本メニューはイラク・シリアでの軍事キャンプとほぼ同じようだ。このキャンプでは対人格闘術としてカラテスタイルのほかに、ボクシングの要素も取り入れているようだ。手前の戦闘員はキャメルバッグ水筒システムを背負っている。(2015年・IS写真)

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写真はコーランを手にする戦闘員。動画にも出てきたが、ISは軍事訓練を単純な軍事技術や格闘術の習得するだけでなく、イスラム教義・信仰など精神面の教練も支柱のひとつとしている。教義の独自解釈で無差別殺戮を正当化したり、自爆攻撃を「殉教」などとして宗教的意味を持たせるプロセスが徹底的に教え込まれる。(2015年・IS写真)

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訓練の最終段階では組体操で仲間の意志一致を図る。これは、イラク、シリアの軍事キャンプでも共通している。だいたいタワー3段。死をも恐れぬジハード戦士でさえ3段というのに、日本の小・中学校ではタワー5段も。仲間で達成感を共有すると同時に、誰かに見せるというメンタリティーには共通する部分があるかも知れない。(2015年・IS写真)

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これは同じ時期に公表された別のキャンプ。中央にある隊旗にはアブ・ムサブ・ザルカウィ軍事キャンプとある。ザルカウィはヨルダン人で、イラク聖戦アルカイダを率い、イラクで起きた香田証生さん殺害事件にも関与したとされる。2006年、米軍の空爆で死亡。(2015年・IS写真)

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エルボーパッド、ニーパッドまで装着。ブーツやチェストリグは真新しく見える。(2015年・IS写真)

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個人装備一式が、常時運用されているものか、撮影用に揃えたものか、アフガン政府軍のものを奪ったかは不明だが、こうした映像がもたらす宣伝効果は高い。シリア・ラッカのIS軍事訓練施設に収容され、脱出した少年の証言によると、新品の戦闘服一式が全員に配られ、その翌日、IS撮影班がやってきたたということなので、このアフガン・キャンプもメディア戦略を意識したものではないだろうか。(2015年・IS写真)

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対空機関砲の講習。ここでの迷彩服は、青が教官のようだ。(2015年・IS写真)

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これはホラサンにあるまた別のキャンプで昨年11月に公開されたシェイク・ジャララディン軍事キャンプ。アフガン・ナンガハルで米軍の空爆によって死亡したイスラム法学者シェイク・ジャララディンの名を冠したのではないか。IS軍事キャンプは、米軍の空爆で狙われるため常設した場所ではなく、移動していると見られる。(2015年・IS写真)

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同じくシェイク・ジャララディン軍事キャンプ。左に立つ男は教官のようだが。黒い肌は地元のアフガン人には見えない。IS本体から派遣された指導官とも推測される。(2015年・IS写真)

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正拳突き。(2015年・IS写真)

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やはりこのシェイク・ジャララディン軍事キャンプでもブーツは真新しく見えるので、このときの整った装備は撮影用に準備されたのではないか。(2015年・IS写真)

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これまでに公開されたIS映像からしか判断できないが、こうした銃を持っての基本動作は、シリア・イラクでのISキャンプでの動きと似ている。タリバン政権以降に編成され、国際治安支援部隊(ISAF)の訓練を受けたアフガン治安部隊や、フセイン政権後に米軍が訓練したイラク軍を取材したことがあるが、いずれとも違うようだ。個人的には、イラク・シリア式の基本教練に独自アレンジを加えたのをマニュアル化してアフガンにも持ち込んでいるのではないかと推測している。(2015年・IS写真)

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アフガニスタンではタリバンのほうが勢力基盤も大きい。ISは昨年初頭にホラサン「県」として認めた。山間の農村は別にして、実質的な行政機構を持つような統治地域を持っていはいないものの、「県」と扱うことによってISの存在感を示すことにもなっている。ISの浸透にともない、一部地域でタリバンとも交戦する状況となっている。(2015年・IS写真)

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シリア・イラクのIS地域へは、周辺の国境警備が厳しくなって入りにくくなっているため、アフガニスタンやその他の地域が過激な若者の受け皿となって定着する可能性もある。(2015年・IS写真)

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RPG-7ロケット砲を構える。アフガニスタンでのIS戦闘員数は、2000~3500人前後と一般メディアでは異なって報じられている。ISは戦闘員数を公表していない。(2015年・IS写真)

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シェイク・ジャララディン軍事キャンプを拠点とする部隊。山岳地帯を移動しているようだ。シリア・イラクの支配地域を失いつつあるISだが、各地に伝播したIS支部が将来の拠点となることも懸念される(2015年・IS写真)

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ホラサンは広義の意味では、イラン以東の中央アジアタジキスタンウズベキスタンなど)とアフガニスタンパキスタンの一部にかけての地域。通常、ISが使う場合は、おもにアフガニスタンとその周辺地域を指すことが多い。IS公表写真ではアフガニスタン・ナンガハルでの戦闘がよく出てくる。右写真は今年8月に米軍のドローンでの空爆で死亡が報じられたISホラサンの指導者、ハフィズ・サイード・カーン。パキスタンタリバン運動(TTP)で活動していたがのちにバグダディへの忠誠を表明し、ISホラサン県の「知事」に任命されたといわれる。

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今年2月に公開された別のキャンプ。アブ・バクル・サディク大隊・アブ・オマル・マクブル軍事キャンプとある。アブ・オマル・マクブルはパキスタンタリバン運動(TTP)広報官とされた人物。2014年10月にISに忠誠を表明した。この映像に映るだけでも、約50人がいる。(2015年・IS映像)

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とび蹴りで陶器を割るのが指導教官。空手かテコンドーの要素が取り入れられているようだ。(2015年・IS映像)

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戦闘員が正拳突きで陶器の板を割る。勢力基盤としてはタリバンに劣っても、ISはメディア戦略では圧倒的に強い。こうした映像が各国の過激な若者たちを志願に駆り立てる。(2015年・IS映像)

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腹筋を固め、その上をバイクで乗り上げ根性をつけるスタイルは、シリア・イラクでも共通している。(2015年・IS映像)

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これは突入訓練。手榴弾を投げ込んで、部隊で突入する。動きはかなり機敏だ。(2015年・IS映像)

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右手を重ねあい、バグダディへの忠誠を表明する戦闘員。アフガニスタンダリ語パシュトー語などだが、この忠誠だけはアラビア語で唱和している。(2015年・IS映像)

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映像の最後では、アフガン治安機関の情報要員を処刑する。オレンジの「囚人服」を着せられ拳銃で頭を撃ち抜かれる。ISの「処刑スタイル」とプロパガンダ手法がアフガニスタンでも統一して採用されているのがわかる。(2015年・IS映像)

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今年5月公開されたホラサンのタジク戦闘員の映像。タジク語でバグダディに忠誠を表明している。こうしたキャンプが広がれば、アフガニスタンだけでなく、中央アジアで政府機関や外国人を狙った事件が起きる可能性もある。(2016年・IS映像)

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昨年11月、ナンガハルでアフガン政府軍を襲撃するIS戦闘員。ISはアフガン政府軍・警察部隊やパキスタン軍、さらにはタリバンとも衝突している。(2015年・IS写真)

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政府軍部隊のハンヴィーを襲撃後、兵士の首をナイフで切り落とし写真を公開している。ISの「宣伝スタイル」がアフガニスタンにも及んでいる。(2015年・IS写真)

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軍事キャンプが持つ意味は大きい。ここで養成された戦闘員たちは都市部にも潜入し、自爆攻撃や外国人襲撃要員としても投入されることになる。写真は今年7月、カブールで自爆したアフガン人戦闘員。ベストに爆薬が装着され、オレンジの起爆ケーブルが延びているのがわかる。(2016年・IS写真)

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昨年8月に公開された映像。ナンガハルでタリバンに協力した部族の一団がISによって殺害される。部族のいる地域がタリバンの攻勢を受け、ISが追い出されたことへの報復とみられるが、殺された地元部族もイスラム教徒である。10人が並ばされ、地面に埋められた爆弾で爆殺される凄惨な映像だ。足元に爆弾が埋められ、オレンジの起爆ケーブルでつながれている。バラバラになった死体まで写しており、見せしめにしている。(2015年・IS映像)

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これはアフガニスタンではなく、イラクのディアラ県。昨年1月にホラサンが正式に「県」と承認された際に、各地のIS県から祝福メッセージ動画があいついで公開された。これはディアラ県戦闘員からのホラサン県への祝福メッセージ。今後、フィリピンやバングラデシュも一定の条件が整えば、宣伝戦略として「県」として認められることもあるかもしれない。(2015年・IS映像・イラク

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