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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

「クルドの星」とガンダムと~いま起きている、この戦争のなかで

◆クルド関連 ◆IS関連

イスラム国(IS)との最前線に立つクルド戦士
クルド地域を取材すると、「日本ではクルド人のこと知っているの?」とよく聞かれる。そういうこともあって、カメラバッグには「クルドの星」の表紙をいつも入れていて、「こういうマンガがあるんだよ」と教えてあげたりする。するとクルド人たちはみんな驚く。「はるか遠くの日本人が自分たちのことを描いてくれたなんて」。

クルドの星」の作者、安彦良和先生と、ある編集者の紹介で、ご自宅でお会いしたのはもう20年ほど前のことになる。先生はその時の話を「クルドの星」文庫版のあとがきに書いてくださって、とても恥ずかしかった。それ以来、毎年先生からいただく年賀状には、いつも国際情勢のことや戦火の人びとへの思いなど、自筆の丁寧なメッセージが添えられてあって、その応援にずっと励まされてきた。

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クルドの星」を手にするクルド部隊・人民防衛隊(YPG)の若い戦士(19)。安彦良和先生が見つめた戦争の特集でとりあげていただいた写真。先生が学生時代を送った青森の東奥日報に昨年掲載されたもの。

シリアでクルド組織・人民防衛隊(YPG)を取材した際、戦闘員として戦う19歳の青年が日本のことを聞いてきたので、「クルドの星」の表紙絵を見せて説明してあげた。すると彼は小さくつぶやいた。「自分はクルドの星になれるかな…」。
イスラム国(IS)との戦闘で、ほぼ毎日、彼の仲間が死んでいた。ISがわずか数百メートル先まで迫り、砲弾が撃ち込まれる瓦礫の中の最前線で聞いた彼の言葉は重く、つらかった。 

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ガンダムのシールドの上でイスラム国(IS)の説明という、すごい紙面に。ISの解説は新聞社がつけたものをハロが語っている。ISの現状とわずかに異なる箇所もあるものの、そこはガンダムシールドなので無双。

後日、その時の写真を安彦先生に私信としてお送りした。作品のイメージにも影響するので、写真は公けにするつもりはなかったのだが、先生のほうからこの話を取り上げたい、と新聞社にお話ししていただいた。 

ちょうど先生の「ガンダム作家の見た戦争」という連載が続いていて、その一部として掲載された。様々な形で戦争を描いてこられた先生の思いと、いまにつながるシリアでの戦火という趣旨の記事だった。分断民族・クルド人に悲劇に加え、この地の誰もが民族・宗派に関係なく戦乱に巻き込まれ、苦しんでいる。そうした話を、「クルドの星」を切り口につないでいただいた。

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IS拠点の建物に突撃して、制圧したYPG部隊。すぐ先にはISスナイパーが展開し、狙撃を加えてきた。(2014年末・シリア・コバニ・撮影:坂本)

自分が最初にガンダムを見たのは中学生の頃だったろうか。当時は少年向けのロボ・アニメとしてとらえていたものが、のちに戦場を実際に取材するようになってみると、安彦先生がガンダムを通して照射した「戦争と人間」の意味が少しずつわかるようになった。

これまで国際社会に見放されてきたクルド人が、ISとの戦いで世界に広く知られるまでになった。だが、そこにはたくさんの「クルドの星」の戦士たちがいて、命を落としてきた。故郷や家族を守るため銃をとり、彼らもまた誰かの命を奪うという現実。私たちと同じ時代に生きながら、いまも戦火のなかでたくさんの人びとが過酷な運命を強いられている。

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1キロ先の前線からは毎日、ISとの戦闘で戦死したクルド戦闘員の遺体が次々と運ばれ、埋葬していた。墓石もなく、道路の敷石や家の床石をもってきて、サインペンで名前と戦死日を書いていた。左の老人は息子が戦死。「誰も泣かない。泣くのはやつらを追い出してからだ」と言った。(2014年末・シリア・コバニ・撮影:坂本)

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