イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【米国防総省・動画日本語訳】「真珠湾を忘れない」~9・11事件映像重ねるアメリカ的「認識」

◆日本軍奇襲とアルカイダの攻撃を並べる米国防総省映像
真珠湾攻撃から75年めを迎えるにあたり、米国防総省は短い特集動画をあいついでYouTubeに公開している。真珠湾攻撃の記録映像や、当時の兵士の証言集などだ。そのひとつに「ネバー・フォーゲット」(決して忘れない)というのがある。これは、日本軍の真珠湾奇襲攻撃と、9・11の貿易センタービルに航空機が突入した事件の映像を交互に重ね合わせるというもの。とりあえず字幕を入れてみた。

【米国防総省・動画】「我々は決して忘れない」 (3分35秒・一部意訳)
真珠湾奇襲ではルーズベルトの演説、9・11事件ではブッシュのスピーチがそれぞれ交互に出てくる。「国土が攻撃された真珠湾9・11を決して忘れない」というのがアメリカの認識。ただし「日本の奇襲もテロも同じ」というのよりも「国土が攻撃されたとき、アメリカは不屈のガッツで立ち向かい勝利する」というのがこの映像の意図のようだが上層部がこの構成にOKしたのもまた事実。日本政府が米国防総省に対し「遺憾の意」を表明できるかどうかといえば、まあ無理だろう。

日本人の多くは、国家の戦争行為において軍艦・軍港を攻撃したのと、ハイジャック機が貿易センタービルで市民を殺したテロとは違うと思っている。でもアメリカにしてみれば、日本軍であろうとアルカイダであろうと、国土が直接的な攻撃を、それも卑怯な奇襲という形で受けたという意味では同じ扱いでもあったりする。映像の最後に出てくる戦艦ミズーリでの日本の降伏文書調印とビン・ラディン殺害に歓喜する米国民の姿を並べられると、なかなか複雑な思いだ。

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12月7日、稲田防衛大臣は来日したカーター米国防長官と会談。「日米同盟は揺ぎない。次期トランプ政権でも強化、深化していきたい」と稲田大臣。その米国防総省真珠湾奇襲とアルカイダ攻撃を重ねる動画を作っているわけで、「日米共通の価値感を確認」と言ったところで、それは日本がアメリカにあわせるもので、決してアメリカが日本にあわせる価値感ではないのだろうなと思ってしまう。(米国防総省写真)

いまとなっては保守層からも見放されてしまった「田母神閣下」が航空自衛隊幕僚長時代にアパ論文問題で更迭されたのは、「真珠湾攻撃ルーズベルトの罠」と書いたことが大きかったと思う。この時、国会でこの問題を問われた麻生首相(当時)は、答弁で「この田母神は」と名前を徹底して何度も呼び捨てにした。「アメリカ様」を怒らせたことへの慌てぶりもあるのだろう。「日米戦争はアメリカの策略」と現職幕僚の制服トップが主張したことは、アメリカにとっては、ポツダム宣言で日本が受け入れた立場に対する公然たる挑戦である。そう、アメリカは真珠湾を決して忘れないし、将来も忘れることはない。

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国防総省真珠湾75周年動画シリーズで、「見過ごされたメッセージ」というのがある。日本軍機の接近を数時間前に防空レーダーが探知したものの、担当官の報告が無視されたという証言である。「ルーズベルト陰謀論」なるものがあったとするなら、これってわざと見過ごしたのではないかとも思えてくるのだが、いまになってこれを取り上げたペンタゴンの意図が気になって仕方ない。動画リンク>>

真珠湾を訪問する安倍首相。オバマ大統領の広島訪問に応えてというのもあるだろうが、そのオバマ政権の米国防総省のこの公式動画の歴史認識を踏まえてみれば、これまでの日本の政治家たちが繰り返し口にしてきた「日米の共通の価値感」なるものは、じつは日本人がそう思ってきただけ、いやそう思おうとしてきただけなのかもしれない。

 

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