イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

アメリカ大統領選挙 【ドナルド・トランプとクルド人】

◆「私はクルドのファンだ」(トランプ)
クルド人は「トランプ大統領」の誕生をどう思っているだろうか。クルド人もいろいろなので一概には言えないが、SNSなどでは、意外にトランプ支持が少なくない。トランプが「イスラム過激主義テロとの対決」や「自分ならISを手早く壊滅させてみせる」と、以前から主張してきたことが理由のひとつかもしれない。クルド人はいま、イスラム国(IS)との戦争の最前線にある。ペシュメルガもシリア・クルド勢力も、毎日、戦闘でたくさんの犠牲が出ている。この切迫感ゆえ、トランプに日本人が抱く印象とは大きな温度差がある。

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写真は、シリア・クルドの戦闘員らがフェイスブック上に個人的に投稿したものを、許可をもらって掲載。これを撮ったのは、米大統領選投票日の前日という。「俺たちはトランプに投票」とニッコリ。シリアで、トランプの写真をわざわざ自分でプリントして「投票箱」を作っている。彼の場合は、「IS打倒に積極的姿勢だからトランプ支持」という。これはYPGの公式見解ではないが、彼のまわりには、トランプ支持が多いそうだ。

もうひとつ、とくにシリアのクルド人にトランプが人気な理由が、彼が、クルド人の戦いを高く評価している点がある。7月のニューヨーク・タイムズのインタビューでは、「私は、クルド人のファンだ」と答え、ほかのメディアでも、「(ISと戦う)クルド戦士には魅了されている」「私が大統領になれば、トルコとクルドの関係をとりなして見せたい」という趣旨の発言をしている。

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トランプは、ニューヨーク・タイムズでのインタビュー(今年7月)で「私はクルド人のファンだ」と語っている。ヒラリー・クリントンもクルドの戦いは評価しているのだが、SNSではISに対し、より強硬姿勢を打ち出しているトランプのほうが人気が高いようだ。

クルド人の心の根にあるのは、自分たちが世界から見放されてきたという思いだ。それがいま、「世界の脅威」となったISと最前線で戦う状況が、望まないながらも到来しまった。クルド人とその戦いは、世界から注目されるどころか、クルドこそが対ISの切り札のような構図になった。

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シリア・クルド地域に展開し、人民防衛隊(YPG)と行動をともにしている米軍特殊部隊。YPGは、クルディスタン労働者党(PKK)の関連組織である。アメリカはPKKを「テロ組織」と規定しているが、IS壊滅を最優先とするアメリカは、YPGには軍事支援をする状況になっている。トルコの圧力もあり、アメリカは、シリアでの対IS戦に支援した武器は、トルコ軍攻撃には使わないようYPGに求めている。(クルディスタン24より)

クルド人は歴史の現実も知っている。アメリカも世界も、クルドのために支援をしてくれるのではなく、自国の国益のために支援する選択をしているにすぎないということである。トルコで同化政策を強いられ、イラクフセイン政権の虐殺にさらされたとき、どれだけ声を上げようと誰も助けてはくれなかった。湾岸戦争フセイン政権打倒に蜂起したとき、アメリカが約束を反故にした結果、徹底弾圧された。

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ISの軍事拠点や車両に対し、米軍主導の有志連合軍の空爆は続いている。攻撃目標の多くは地上からの情報をもとに選定される。目標位置を司令部経由で米軍戦闘機に伝えるのはクルド戦闘員や、IS地域内で活動する地元の情報要員だ。ISは地域内のスパイ摘発を強化し、磔にして刺し殺したり、斬首して死体を晒すなど残虐な手法で処刑を繰り返している。写真はシリア・ハサカのIS拠点が空爆で破壊されるようす。空爆は一定の効果があるが、巻き添えで市民、子供も犠牲となっている現実もあり、IS壊滅の決定打にはなっていない。(有志連合軍・CJTF-OIR映像)

シリアでのISとの戦争も、いつ大国の都合で政策が変わるかもしれないことは、彼らも承知だ。裏切られることもあるという思いを抱きながらも、自分たちの暮らしてきた土地、受け継いできた言葉や文化を守るためには、いま直面する状況を最大限に利用し、自身で道を切り開かなければならないと思っている。それが分断民族クルドの置かれてきた歴史であり、悲しさであるとも言える。

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こちらは、ロシア政府系サイト・スプートニクのクルド語版(クルマンジ)の記事。「私はクルドの戦士に魅了されている」というトランプの過去の発言からの見出し。こういうのもクルド人のあいだに出回って、「親クルド・トランプ」という認識が広まっていた。ヒラリーもクルド支援の発言をしてきたのだが、「私ならISを手早く仕留めてみせる」と歯切れのいい言い方をするトランプのほうに注目が集まったようだ。(スプートニク画面より)

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