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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS動画・日本語訳】歌から読み解くシリア・イラクでの戦争(20) 「勝利に満ちたわがイスラム国よ」(ドイツ語)

◆歌から読み解く戦争 ◆IS関連

◆バグダディ師への忠誠を強調
前回取り上げた、アブ・ハジャール・ハドラミの「ヌスラに挨拶を」には、イスラム国(IS)版の歌詞がある。ヌスラ戦線でなくISを称えるもので、曲調自体は同じだ。今回の映像は、それにさらにドイツ語によるアレンジバージョンを加えたものである。

【動画・日本語訳】「勝利に満ちたわが国よ」(ドイツ語) 一部意訳・転載禁止

2015年7月に公開されたISのドイツ語ナシード。「わが国」とはイスラム国を指す。外国にアピールすることを意識し、ドイツ語歌詞に英語字幕もつけられている。最後に唱和する「バヤア」は、IS思想の精神的支柱をなす重要なもの。イラク人の友人を相手に、「細かすぎて伝わらないモノマネ」でこのバヤアを唱和したことがあるのだが、「そんなのイラク人でも知らないよ」と、頭を抱えられた。以後、そのモノマネは封印することに。クルド・人民防衛隊(YPG)を意識した映像が織り込まれているので、YPGの交戦エリアのシリアのラッカやハサカで戦闘に関与した人物が制作に関わったのではないだろうか。

イラク各地の地名が盛り込まれたアラビア語版の歌詞と異なり、ドイツ語版では、バグダディ師をカリフとする「イスラム国」を称え、忠誠を唱えようというメッセージが貫かれている。

歌の最後では、熱狂のなかでバヤアが唱和される。とにかくIS戦闘員ならこの忠誠は必ず唱和出来ないといけない。日本軍の軍人勅諭・聖訓五箇条のように使われる。「IS戦闘員だった」とメディアの報酬目当てに登場する怪しいニセモノ戦闘員も、これを暗誦させれば本物かどうかわかるかもしれない。

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歌の最後には、ISの忠誠式の様子が映し出される。これはIS戦闘員が入隊時や出撃前におこなう儀式で「バヤア」と呼ばれる。右手を重ねあって、指導者バグダディ師への忠誠を誓う。「死の忠誠」とあり、敵前逃亡や降伏することなく死ぬまで戦うことを表明する。(IS写真・2015年・イラク・アンバル) IS忠誠式とは>>

ISは戦闘員たちにこの忠誠の誓いをさせて、突撃させている。外国人戦闘員は、「戦って死んで天国に行く」と信じてISに加わったので、バグダディのために死ぬのは「本望」だろう。

だが、地元のイラク人やシリア人の若者たちには、戦乱で困窮した家族を養うために、わずかながら給料が出るからと、しかたなく加わった者もすくなくない。各地で住民殺戮を繰り返すISとはいえ、末端の地元戦闘員が置かれた個々の事情も考えると、複雑な思いでもある。

(歌には日本語の翻訳をつけましたが、わかりやすいように意訳した箇所もあります。特定の勢力の宣伝に荷担することを意図するものではなく、いま起きている戦争のひとつの側面を歌から読み解くという趣旨で掲載しています)

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