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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

日本語訳【イスラム国(IS)機関誌】バングラデシュ・ダッカ襲撃事件「グルシャン攻撃戦の殉教戦士たち」ルミーヤ第2号 (前編) Rumiyah

ダッカ襲撃事件を「十字軍との戦い」と規定
武装組織イスラム国(IS)は、10月4日、機関誌ルミーヤ(Rumiyah)第2号を公開、今年7月バングラデシュ・ダッカで起きたレストラン襲撃事件に関する文書を掲載した。日本人を含む29人が犠牲となった事件を「十字軍との戦い」と規定し、戦闘員5人についても触れている。コーランの一節を都合よく抜き出し、宗教の名の下に民間人の殺害を正当化するプロパガンダ文書であることに留意した上で、ISの思考を知る資料としてお読みいただきたい。一部意訳・IS側のルミーヤ編集部註と、訳註(坂本)とがあるのでご注意ください  
前編後編

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ISが新たに発行した機関誌ルミーヤ第2号。複数の言語で同時発行されている。第1号は9月5日、第2号は10月4日発刊。これまでのダービク誌を引き継ぐものか、別系統で発行されるのかは不明。ルミーヤとはローマを指す。ISが「ローマ征服」を掲げる意味については、戦術分析「IS機甲旅団」の動画(2分45秒め) >>>

グルシャン攻撃戦の殉教戦士たち(前編)

カリフ国ベンガルバングラデシュ)の軍事・兵員地下作戦の前司令官
アブ・ドゥジャナ・アル・ベンガリ(タミーム・チョウドリー)


十字軍同盟の戦闘機やドローンが、イラク、シリア、リビアを始めとしたカリフ国(=イスラム国)の各県下のムスリムを爆撃し、恐怖を与え続けるなか、世界各地のムスリムの兄弟姉妹同胞たちは、痛苦をもってこうしたニュースに接してきた。それは預言者(ムハンマド)が仰せになったごとくである。

「信仰者(=ムスリムのこと)は、その愛、慈悲、心情を分かつ一心同体の存在である。身体の一部の器官が不調となれば、それは身体全体に跳ね返り、不眠や高熱を引き起こす」ハディース:ブハーリ・ムスリムのヌアマーン・ビン・バシールによる伝承)

これらのムスリムが理解したことは、ムスリムに残忍きわまる空爆の命令を下す十字軍の指導者たちは、得体の知れぬ空間から生まれたのではなく、彼らの民主制度、あるいはその結果を承認した市民たちの祝福をもって、指導者の地位の座についたという事実である。

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この文書の筆者名のタミーム・チョウドリーは1986年、バングラデシュで生まれたとされる(カナダ出生説もあり)。カナダで育ち、2011年にオンタリオウィンザー大学を卒業。2013年ごろバングラデシュに戻り、7月のダッカ襲撃事件の作戦指揮をした黒幕といわれ、8月にバングラデシュ警察部隊が潜伏先を急襲し、死亡。この文書が本人によるものであれば、死亡する前に書かれたと思われる。

こうした戦闘機やドローンが投下する爆弾の莫大な費用の大部分が、いわゆる民主国家の「無辜の市民」が払った税金から賄われていることを、ムスリムたちはまたはっきりと認識している。他方、これら「市民」は、その民主主義による政治政策の正当性のもと、自身の政府が遂行する、イスラム教やムスリムに対する戦争に、自分たちの税金が投じられていることも十分承知しているのだ。

かくして、ムスリムの心にまぎれなく刻まれたことは、十字軍の戦闘やドロ-ンによる、カリフ国の各県での住民や財産に対する抹殺攻撃は、まさに「民衆の力」、すなわち、十字軍国民の「無辜の市民」の力を意味し、彼らこそ、その責めを直接的に負っているということである。(※1)

ルミーヤ編集部註※1:ここで筆者が強調しているのは、イスラムムスリムに対し戦争を仕掛けている十字軍の民主国民たる「市民」の血と富は、他の不信仰者「市民」より以上に流血に値するものであり、すでに流血はムバーハ(許可される選択)と規定されているということである。詳細は、ルミーヤ誌第1号「不信仰者の流血は認められしもの。ゆえに彼らにその血を流させよ」参照)

 アッラーはこう仰せになった:

【彼らと戦うがよい。きっとアッラーは汝らの手で彼らを罰し、彼らを辱め、汝らを助けて彼らを撃ち、そして信者たちの胸を癒してくださろう。心に積もる恨みを晴らして下さろう。アッラーは御心にかなうものの悔悟を赦し給うだろう。アッラーは全知、英明であられる】(悔悟章:14 – 15節)

また、かく仰せになった:

【そして多神教徒が皆で汝らと戦うように、(汝らも)皆で戦え。アッラーは、御主を畏れる者とともにおられることを知れ】(悔悟章:36節)

オマル・イブン・ハッターブは、ある殺人事件についてお知りになったとき、こうお述べになった。「もしサナアの者がその殺人に協力したのなら、私はすべての者を殺したことだろう」ハディース、マリクの伝承)

かくして、1437年ラマダン月27日の夜、ベンガルのカリフ国の兵団は、十字軍どもにその罪をあがなわせるべく、ダッカ・グルシャン地区ホーリー・アーティサン・ベーカリーのレストランに5人の殉教騎士からなる突撃決死隊(イングマスィ)を送ることを決定した。

アッラーのご助力によって与えられた機会のもと、レストランの不信仰者を殺す資質を備えた突撃決死隊の兄弟同胞たちは、バングラデシュの背教兵士多数を殺害、負傷させ、背教兵士に包囲されるなか、12時間以上にわたって十字軍所有のレストランを制圧し続けたのち、殉教を達成した。(※2)

ルミーヤ編集部註※2:作戦の最終的な集計は、アメリカ、イタリア、日本、インド、バングラデシュの不信仰者24人の死亡であり、バングラデシュの背教官憲と兵士50名以上を負傷させた)

 アッラーが彼らを殉教者としてお受け入れになることを請うとともに、彼らの行動が、ベンガル、そして世界の別の地域の唯一神信仰者たちをさらに奮起させることを願うものである。

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ISが関与する襲撃事件は、これまでにも続いてきた。これはルミーヤ誌が掲載した図で、「作戦の成果」を時系列に並べている。昨年10月、日本人、星邦男さんが殺害された事件も含まれている。(上から2つめの丸印)そして7月のダッカ襲撃事件(グルシャン攻撃)に至った。図拡大

いくつかの標的を周到に調査したのち、十字軍所有のホーリー・アーティサン・ベーカリーのレストランがこの祝福されし作戦の対象として選定された。十字軍諸国の市民、その他の不信仰者国民が頻繁に出入りする場として知られていたというのが理由である。

ここは、十字軍どもが集って夜通し酒を飲み、悪行をなす場所であり、彼らを待ち受けるアッラーの懲罰から一時的に遁れんとする場であった。

ラマダン月27日(訳註:2016/7/1)の夜が選ばれたのは、ジハード戦士同胞たちに、およそ大いなる報奨が授けられるものとなるからであった。

アッラーはこう仰せになった:

【みいつの月の夜こそ千の月にもまさるもの】(みいつ章:3節)

 (訳註:みいつ(アッラーのご威光)の夜=ライラトル・カ-ドルは、ムハンマドに最初の啓示が下った夜で、聖月ラマダンの最後の10日のうちの奇数夜の5日。その夜は千の月=約83年間よりもまさるとされる)

 作戦のあいだ、殉教騎士たちは、ムスリムを不信仰者(十字軍、異教徒、背教徒)と、明確に分けることを最大限に注力し、レストランにいた者たちに、ムスリムなら若者であろうと年配者であろうと誰もが知っているイスラム教に関する基本的な質問をおこなった。

 イスラムの信仰が示された者は、尊厳と慈悲のもとに扱い、不信仰者であると明らかになった者はアッラーの使徒(=ムハンマドと、そのご教友たちの例に従って、過酷かつ厳しい姿勢をもって処遇した。

ムハンマドアッラーの使徒なり。彼とともにいる者は不信仰者に対しては強く、くじけず、お互いの間では優しく親切である】(勝利章:29節)

アッラーはまたこう仰せになった:

【信仰する者よ、汝らに近い不信仰者と戦え。そして汝らが手ごわい相手だと知らしめてやるがいい。アッラーは御主を畏れる者とともにおられることを知れ】(悔悟章:123節)

グルシャン攻撃は、ベンガルのカリフ国兵士たちによる十字軍に対する最初の攻撃ではなかったし、また、まぎれもなくこれが最後の攻撃でもないのだ。

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ISは以前から機関誌ダービクのベンガル語版を発行するなど、バングラデシュ向けのメディア戦略にも力を入れてきた。

アッラーは仰せになった:

【聖月が過ぎたなら、多神教徒は見つけ次第、殺してしまうがいい。ひっ捉え、追い込み、いたるところで待ち伏せよ。しかし、もし彼らが悔悟し、礼拝の務めを果たし、喜捨をよろこんで出すならば、その時は彼らに道を開け。まことアッラーは寛容にして、慈悲深い御方であられる】(悔悟章:5節)

 十字軍の国民に知らしむべきは、彼らがイスラム国と戦う限りは、(十字軍国の)市民は、ベンガルの地において、おそらく厳重に「警備された」地区内にあってさえ、いかなる安心も安全も享受はできないということである。

 この地のカリフ国兵士の体に血が一滴でも残る限り、十字軍国民には安全などない。ジハード戦士たちは、「警備の欠陥と盲点」を洗い出し、アッラーの御許のもと、十字軍どもがどこであろうと見つけられるよう、とくと待ち伏せるのだ。

 この地が、十字軍どもや不信仰者から浄化され、アッラーの御法が確立されるまで、十字軍の市民、すなわち専門家、旅行者、外交官、服飾品業者、宣教者、スポーツチームなど誰であろうと、ベンガルの地で見つけ次第、ジハード戦士たちの標的となるだろう。

 無力なバングラデシュの背教治安機関による、まやかしの約束で安全と信じ込まされている十字軍国民は誰であろうと、アッラーの御許のもと、重い代償を支払うであろう。チェーザレ・タヴェッラは警告に過ぎなかった。グルシャン攻撃はほんの一部でしかない。アッラーの御許のもと、さらに起きることは、最悪の事態であり、より熾烈なものとなろう。

【いずれにしろ、アッラーは、こうと思い立ったことは完全に成就し給う。だが多くの者はこれを知らない】(ユースフ章:21節)

 (訳註:チェーザレ・タヴェッラ=2015年9月にダッカの路上で殺害されたイタリア人。ISが犯行を認める声明を出した)

 IS・ダッカ・グルシャン攻撃戦【後編】に続く>>

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襲撃事件が起きたのは7月1日夜。翌日、治安部隊が突入した。死者は29人(うち民間人22名)。左は、占拠されたレストランの窓際に立つ戦闘員と見られる人物。銃のようなものを構えているようだ。右は突入する治安部隊装甲車。(地元メディア映像) このIS記事の文中ではダッカでの襲撃事件を実行した5人を、イングマスィ(突撃決死隊)戦士と表現している。イングマスィ戦術については以前書いた「IS戦術分析」の解説記事を参照。記事参照>>>

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