イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS動画・日本語訳】昨年「イスラム国」(IS)入りしたタジキスタン元特殊部隊司令官ハリモフ大佐

◆米国務省が3億円の懸賞金かけ追う男
8月30日、米国務省は、武装組織イスラム国(IS)に参加したとみられるタジキスタンの元特殊部隊OMON司令官ハリモフ大佐に関する情報提供に懸賞金を出すことを発表した。「拘束、居場所特定につながる情報には300万ドル(約3億1000万円)までの懸賞金(報奨金)を出す」としている。ハリモフ大佐がIS入りしたと伝えられたのは、昨年5月。IS系メディアに本人が登場し、大統領や閣僚を批判し、自国兵士に向けてメッセージを発している。以下はその映像。(一部意訳)

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【動画・日本語訳】「おお、心の在り処を変えし者よ」(2015/05)(転載禁止)
ハリモフ大佐は昨年5月初旬にタジキスタンで姿を消し、同月末にはIS映像に登場。撮影場所はシリアと思われる。映像が公開された昨年5月末は、ISが「国家」を宣言してからまだ1年が経っておらず、ISが高揚していた時期で、支配地域への「移住」を積極的に呼びかけていた。大佐がヒジャブイスラム女性がかぶるスカーフ)について強調するのは、当時、タジキスタンヒジャブ問題が焦点化していたからだろう。ヒジャブを販売する商店への当局の締め付けがあったのもこの時期だ。大佐は狙撃の名手として知られ、映像でも狙撃銃を携え、トマトを撃ち抜く「腕前」を披露している。ISメディア機関のひとつ、FURAT(フラットは、ユーフラテス川を意味する)は、各地からの外国人戦闘員が個別で登場する映像が多い。

IS映像で大佐が、自国軍の兵士やロシアのタジク人に向けて訴えかけた意味は大きい。タジキスタンでは旧ソ連の宗教抑圧、そして民族独立したソ連以降の政権下でのイスラム政策など、兵士たちの心には民族や宗教のさまざまなアイデンティティが交錯する。そこに治安機関として影響力のあった人物が、政府内の秘密を「暴露」し、ジハードやIS入りを呼びかけた。特殊部隊責任者だった大佐がIS入りしたことの軍事的側面での影響よりも、タジク人を含む中央アジアムスリムが過激主義に感化される懸念のほうが深刻ではないだろうか。

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写真左はタジキスタンのラフモン大統領と一緒に写るハリモフ大佐。大佐のIS入りはタジキスタンでも大きく伝えられ、父親や兄がメディアのインタビューで複雑な心情を語っている。(地元メディア写真から)

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SNSなどで出回っているもので、ハリモフ大佐がIS支配地域内に入った昨年5月以降に撮影された写真・映像と思われる。IS内では、組織名アブ・マリク・アル・タジキを名乗っているようだ。

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国務省「正義への報酬プログラム」はハリモフ大佐の拘束・居場所特定につながる情報の提供を呼び掛け、懸賞金は300万ドル(約3億1000万円)までとした。米国は昨年9月、ハリモフ大佐を「特定国際テロリスト」に指定。またタジキスタン政府からも指名手配されている。正義への報酬プログラムでは、ISのほかにも、米国に脅威を及ぼすとみなされた各派組織の主要幹部もリストに挙げている。アルカイダ指導者ザワヒリ容疑者には2500万ドル(25億8000万円)、IS指導者バグダディ容疑者には現在1000万ドル(約10億3000万円)までの懸賞金がかけられている。正義への報酬プログラムは各国語で提供されており日本語もある>>  (米国務省公表写真)

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国務省公表のハリモフ大佐のその他の写真。短期間でIS地域入りし、ISは宣伝映像に登場させている。映像で大佐は繰り返して「イスラム」を強調し、また、大臣を名指しで罵っている。だが、本当に「信仰心」が過激主義に行き着いたのか、自国での失脚など別の要因があるのかなど、大佐がISに入った経緯は不明だ。東洋系の顔立ちは、どことなくくまだまさしにも似ているようだ。(米国務省公表写真)

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ISに参加したタジク人。すべて自爆車両突撃で死亡。BBCは、治安機関の情報として、200~500人前後のタジク人がISに参加と伝えている。中央アジアからの戦闘員は、ISだけでなく、ヌスラ戦線(現シャム・ファタハ戦線)などの別の武装各派にも加わっており、戦闘員となっているタジク人はさらに多いと思われる。

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