イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【イスラム国(IS)機関誌・日本語訳】「我々はなぜお前たちを憎悪し、なぜお前たちと戦うのか」(2)ダービク15号

コーランを持ち出し独自の解釈で攻撃を正当化
前回に続いて、イスラム国(IS)機関誌、「我々はなぜお前たちを憎悪するのか そしてなぜお前たちと戦うのか」の後編。ISはコーランの文言をこじつけて憎しみを煽り、殺戮を正当化する。機関誌だけをもって、彼らの思考回路を読み解けるものでもないだろうが、その思想・世界観に感化され、各地で襲撃事件があいついでいるのもひとつの事実だ。前編とあわせてお読みください(一部意訳しています)

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ダービク15号は、キリスト教世界とその価値観を批判し、ISが解釈した神の摂理、世界観を「説明」している。いずれも同じ号に掲載された写真。右下の斬首刑は「剣はアッラーの法のひとつ」などと説明している。一部をぼかしています。(写真はDabiq 15号より)

前編からの続き)「我々はなぜお前たちを憎悪し、なぜお前たちと戦うのか」(2)

3:一方、無神論者どもについて、我々がお前たちを憎悪し、戦争を仕掛ける理由は、お前たちが自身の創造者そのものを信仰しないからである。 いかに緻密至極に万物が創造され、全能なる法則統治があらゆる事象おいて驚異的かつ徹頭徹尾に貫かれているか、お前たち自身が見てきたはずだ。にもかかわらず、お前たちはこれらは不規則的な現象の結果として起きたことなどと主張する。これらの事象は偶発的な結果なのではない。その一切が全能至賢の御主(アッラー)の創造物として我々が日々、見ているはずの驚異的な明証がありながら、お前たちはこれを受け入れることを非難し、嘲笑し、排斥されるべきものとして扱ってきたのだ。

【一体彼ら自身、無から創り出して戴いたのではないか。それとも、自分が創造主だとでも言うのか】(山章:35節)

そしてお前たちが創造者を信仰せぬことが行き着くのは、審判の日さえも信じぬ状況であり、「人生は一度限り」などとする主張なのだ。

【信仰なき者ども、わしらが(死後)喚び起こされるなどということは絶対にありはせぬとうそぶいておる。言ってやるがよい、「いや、いや、必ずお前たち、喚び起こされるぞ。そして自分の(現世で)して来たことを一つ残らず(アッラーから)聞かされるぞ。それくらいアッラーにとっては、いと容易やすいこと」と】(騙し合い章:7節)
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4:我々がお前たちを憎悪するのは、イスラムに対しお前たちがなす罪ゆえであり、我々の宗教になす犯罪の数々ゆえにお前たちに戦争を仕掛けているのだ。 我々の信仰教義を嘲り、ヌーフ(ノア)、イブラヒム(アブラハム)、ムーサ(モーゼ)、ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)を含めたアッラーの預言者たち侮辱し続け、コーランを燃やし、シャリーアの法統治を公然と非難中傷することを続けるのなら、我々も報復を続けるまでだ。それはプラカードのスローガンなどによってなされるのではなく、銃弾とナイフによってなされることを知れ。
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5:我々がお前たちを憎悪するのは、イスラム教徒に対しお前たちがなす罪ゆえである。それらは、世界各地でわが民に対する無人機ドローンや戦闘機による爆撃や殺傷行為の数々、お前たちの傀儡者がイスラム教徒から侵奪し、その民衆を抑圧し、拷問にかけ、真理を求める者には誰あろうと戦争を加えている、一切の罪を指す。 ゆえにして、お前たちが我らの民たる男女や子どもを殺戮するのを阻止するために、また、お前たちが投獄し、拷問してきた民を解放するために、そしてこれまでお前たちがやってきたことの一切によって苦しんできたあまたのイスラム教徒のための復讐をなすために、我々はお前たちと戦うのである。
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6:我々がお前たちを憎悪するのは、我々の地を侵略するからであり、そこから撃退し、追い出すために我々は戦うのだ。お前たちから奪還すべき地がわずかにでも残っている限り、すべてのイスラム教徒にとって課せられた義務としてジハードは続く。 ここで知っておくべきことは、お前たちの外交政策の結果が我々の憎悪を生み出したとする議論があるが、これはお前たちに憎しみを向ける理由としては第一義ではなく、従ってこれまで上記で述べてきた理由のなかでは一番下位に並ぶものだ。

たとえお前たちが我々への爆撃や投獄、拷問、誹謗中傷、我らの土地の侵奪をやめたとしても、我々はお前たちを憎悪し続ける。それが事実なのだ。お前たちがイスラム教を受け入れるまでお前たちへの憎しみをやめぬというのが、我々の一義的な理由だからである。 ジズヤ(人頭税)を支払い、イスラム統治の下で屈辱を噛み締めながら生きることになろうとも、我々はお前たちを憎悪し続ける。我々との協定を受け入れた不信仰者に対しては、戦うことは止める。お前たちもそうするなら、我々も戦うことは停止するだろう。だが、お前たちを憎悪すること自体をやめはしない。

我々がお前たちと戦うのは、単にお前たちを罰し、阻止するためだけでないと知れ。

この現世における真の自由をお前たちに知らしめることであり、来世での救済を導くことである。それは、お前たちが担ぐ特権聖職者と代議員たち、気まぐれと欲望に隷属している状態からの自由であり、お前たちの創造主のみ崇拝し、その使徒に従うことからの救済である。

我々がお前たちと戦うのは、お前たちを不信仰の暗闇からイスラムの光明へと導くためであり、この現世にためだけに生きる束縛から解放するためである。さすれば、お前たちは現世の祝福と来世の至福のいずれをも無上のものとして得られるだろう。 まさに我々によるテロリズムや戦争行為や無慈悲さ、冷徹な残忍さといった言辞を、お前たちに対して厳然と登場させたこと、これが問題の事実的核心である。

リベラルなジャーナリストらは、我々が一連の行為をなすのは、我々の行動に何らの大義もなく、論理性を欠く単なる怪物集団ゆえのことだとお前たちに思い込ませようとするだろう。だが事実は、西側世界がもう何年も前に終わったと思っていたはずの、我々の計画づくの戦争を我々はお前たちに仕掛け、さらにはそれを拡大させることを継続するということである。

我々は、お前たちをさらなる窮地へと引きずり入れる。そう、お前たちがとっくに逃れたと思いこんでいた濁水の闇中深くから、抜け出せなくなっていることをひたすら思い知らせてやる。そして、我々なりの方途をもってお前たちにその脱出口は明示する一方、我々はこの戦いを毅然と遂行するのだ。 これら「卑劣なテロリストたち」が、お前たちのカフェラテとティンバーランドのような企業を理由にして、お前たちに憎悪を向けていると信じ続けようと、それはそれでかまわない。
訳註:カフェラテとティンバーランド=ここでのカフェラテはスターバックスを指し、ティンバーランドはアウトドア・ブーツで知られるTimberland社のこと。イスラム過激主義者などからは、両社ともイスラエル支持企業とみなされている。)

そして勝ち目なき戦争に勝てると思い込みながら、膨大な戦費を投じ続けるがいい。お前たちがイスラムを受け入れるまで、我々はお前たちを憎悪することを決してやめぬ現実を受け入れて自覚し、この戦争とテロルの泥沼から抜け出すために、我々が明示してやった出口にたどり着くまで、我々はお前たちと戦い続けるだろう。その出口とは、まさに、我らが御主(アッラー)が、聖書の民(訳註:ユダヤ教徒キリスト教徒)にお示しになったもの、すなわちイスラム帰依か、ジズヤ(人頭税)支払いか、我々からわずかながら猶予を与えられる手段としての、一時的な停戦措置の受け入れかである。
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同性愛を人間摂理からの逸脱とし、同性愛者を狙ったフロリダ銃乱射事件を正当化する主張を展開するIS機関誌。ISは、コーランの力強い一節だけを都合よく持ち出して、不信仰者(非イスラム教徒)と戦う根拠にしている。だが、例えば、先日のヌスラ戦線の新組織移行の際のアルカイダ副官の声明では、「戦いを挑んでくる者には戦え。だがこちらから不義をしかけてはならぬ。アッラーは不義なす者を好まれぬ」といったコーランの一節が、ヌスラ戦線が新組織で他派との協調路線を受け入れる根拠として使われている。(写真はDabiq 15号より)

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キリスト教同盟の「十字軍」がイスラムへの戦争を続けるゆえに憎悪し、戦うのだ、とするダービク記事。激しい表現が使われてはいるが、「ローマを征服してやる」と宣言していた2年ほど前と比べると、最近の文章は一部トーンダウンしたようにも見える。あえて穿った読み方をするなら、「停戦を受け入れるから、我々への攻撃、爆撃をやめてくれ」と読める。(写真はDabiq15号より)

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