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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【元ヌスラ戦線・声明】新組織・シャム・ファタハ戦線結成に関して

 ◆シャム・ファタハ戦線、英語で声明も

ヌスラ戦線は、新組織シャム・ファタハ戦線(またはシリア征服戦線)への移行にあたり、英語での文書も公表している。同時に出された「10か条の憲章」アラビア語)とは異なり、こちらは英語で国際的なアピールを意図したものとなっている。(以下、全文です・一部意訳)

慈悲あまねく 慈愛深きアッラーの御名において
シャシャム・ファタハ戦線の結成に関して

ヌスラ戦線は、シリア革命を助け、アサド政権の専制独裁による苦難と痛苦を取り除くことを目的として、2011年に結成された。これは軍事、民間の両面で、急速に中心的存在となり、この地において、また国際的にも、大衆の支持を受け続けている。

我々の組織は孤立主義的視野に立ったことはなく、その構成員は誠実な諸派グループとすべての戦闘の前線において相互依存的関係を強化しながら、ともに戦い続けてきた。これらのグループ諸派は、非常に深く社会に根ざしており、民衆に尽くす彼らを孤立させようとする、いかなる目論見も、無駄であることは今後も自明のものであり続けるだろう。

統一と勝利の間には明白で一貫した相関関係があり、ファタハ軍の努力がはっきりと示すとおり、過去においてこれは幾度となく明らかとなってきた。

訳註:ファタハ軍・シリア・イドリブを中心にヌスラ戦線が加わる連合武装組織で、おもにシリア政府軍と戦ってきた)

我々の尽力と隊伍を統合することは、シリア革命の達成において不可欠なことである。それゆえ、この統合に到達することは、また、その過程でのいくつかの障害を克服することは、希求されなければならない最優先の課題である。

さらには、我々の大義のもとの目標獲得を脅かすような行動は、いかなる犠牲を払ってでも避けられねばならない。

これらを考慮に入れれば、真の統合において妨げとなり、また、「テロ組織を標的とする」という名目のもとに、我々の革命を弱体化させる根拠として使われることになるような不要な連携関係を解消することが、根本的に求められている。

ゆえにこのたび、我々は以下のことを決定した:

1:ヌスラ戦線の名で行なわれるすべての作戦行動の停止

2:いかなる外部的関連機関も持たない独立グループ「シャム・ファタハ戦線」の結成

シャム・ファタハ戦線の目的は、アサド政権の暴政からシリアを完全に解放するジハードを継続し、社会に治安、安定、尊厳ある生活を提供しつつ、正当で独立したイスラム政府を建設するための努力を継続することである。

社会に奉仕するための基盤や機関を提供する諸グループと協同する取り組みを続ける意図のもと、我々は新たな組織へと発展させるに至った。

この局面にあって、我々が希求することは、誠実なる諸グループ間の完全なる合同一致に必要とされる前提条件が整えられることであり、それが我々の民衆にとって真の解決の機会をもたらすものとなることである。

 先日アラビア語で出された「10か条憲章」と比べると、今回の英語声明は
1 - 「ヌスラ戦線から、シャム・ファタハ戦線に改名」
2 - 「外部機関からの独立」(=具体的に「アルカイダ」とは出てこない)
とし、各派の協調関係構築と住民の治安・秩序の回復に努め、イスラム政府実現に向けて尽力するとある。ヌスラ戦線を振り返り、「シリア革命を目的として結成された」とするが、当時のイラクイスラム国(ISI)との関係や、のちのアルカイダザワヒリ師への忠誠については触れていない。

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左が、ヌスラ戦線が新たな組織へと移行するにあたり、英語で「シャム・ファタハ戦線の結成に関して」として公表した文書。(右のシリアでの各派の勢力分布図は、日々、戦闘で変化しているので、だいたいこういう状況という目安にしてください。)

ヌスラ戦線のアルカイダとの関係解消は、ポーズかもしれないが、少なくともヌスラが共同戦線を組んで戦う諸組織にとっては、ヌスラがアルカイダとの関与があったゆえに、国外からの武器や財政的支援に国際的な規制がかかってきた状況もあり、それが好転することも期待しているだろう。

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2015年5月にアル・ジャジーラのインタビューに応じたヌスラ戦線のジョラニ司令官。このときはまだ顔を出してはいない。「我々への空爆は不当」「アメリカはアサド政権と協力している」などと答えている。(アル・ジャジーラ映像より)

アメリカは、今回のヌスラ戦線声明について、「改名しても中身が同じなら実態は変わらない」としつつも「その組織の今後の行動、目標とするものを判断材料として精査、分析する」と、関係のとり方を転換させることにも少し含みを持たせている。アメリカがIS地域だけでなく、ヌスラ戦線にも空爆を加えてきたことが彼らを締め上げ、今回のアルカイダとの連携解消を引き出したなら、戦略勝ちかもしれないが、そういう感じはしない。

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ヌスラ戦線のアルカイダとの関係解消と新組織への改名発表について、米国務省カービー報道官は、「組織呼称の変更ではなく、彼らが何をするのかをこれらを精査する。その点では、このグループ(シャム・ファタハ戦線)にいまのところ、これまでと変わったとみなす兆候は見受けられないと判断している」と述べている。(2016年7月28日・米国務省映像)

 乱立した諸派の和解・統合への道筋をつけ、より悪い敵であるISを壊滅させるために、ちょっと悪い敵とは手を結ぶ。そういうようにも見えるのだが、ウラのウラに何があるか、真相はわからない。9・11事件でアルカイダを打倒するためにアメリカは「テロとの戦い」を始め、多大な戦費と兵力を投じ、自国兵士にも犠牲も出してきた。いま、ISの登場を前に、そのアルカイダと関係を持ってきたヌスラ戦線と今後「協調」することになれば、皮肉である。

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