イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【元ヌスラ戦線・声明】新組織・シャム・ファタハ戦線(シリア征服戦線)「10か条の憲章」

 シャリーア統治を堅持
ヌスラ戦線から新組織へと移行したシャム・ファタハ戦線(またはシリア征服戦線)は、7月28日、ジョラニ司令官の動画声明に合わせて、「我々の憲章」と題された文書を公表した。憲章は10か条からなっていて、シャリーアイスラム法)統治を基調とした新組織の指針が記されている。ーーー

「憲章」の要約です。(宗教用語が多いですが、だいたい文意はあってると思います)

慈悲あまねく 慈愛深きアッラーの御名において
シャム・ファタハ戦線

1:我々は、信仰箇条と信仰に則った公明なる道、イスラム法解釈を、コーランとスンナに拠るものとする。これらは、(ムハンマドの)教友たちとその従者(アッラーよ彼らを嘉し給え)、同じく彼らの後に続いた教導者と法学者、すなわちアブ・ハニファ、アブ・シャファイ、マリク、アハマドその他の御方々(アッラーよ彼らに慈悲を与え給え)らの、公正なるイスラム回帰の思想をもって解釈されてきたものである。

2:信仰とムスリムの聖域を攻撃する敵を我々は排撃する。これは我々の主要なる信仰義務であり、また信仰を打ち立てる形体とみなす。これには信条こそが求められ、いかなる条件でも、あらゆる可能な手段をもってなされねばならない。

3:ウンマ(=イスラム共同体)の栄光と尊厳によって、フィトナ(=迫害・内争)がなきものとなり、またアッラーの宗教が地上を治めるまで、シャリーアによる統治の確立へ向けたジハードを遂行する。

4:ジハードにおいては、我々はイスラム法に従い、また、シャリーアと現状についての理解のもとに目標へと到達するために、普遍的諸法則を考慮する。預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)に立ち返る宗教的規範やシャリーア政治の規則を満たすことに専心する。

5:イスラムの民あるいは不信仰者の民であれども、抑圧されたすべての者から抑圧を取り除くことに我々は尽力する。我々は、あらゆる可能な手段と最大限を力をもって、不正義を阻止するために尽力する。

6:アッラーが、その賢知と啓戒をもって民衆に優しくあられ、寛大かつ良き言葉で御主の箴言を民衆にお届け給うよう我々は請い求める。

7:わがウンマの法学者諸氏には敬意をもって接し、彼らの権利を承認する。彼らと協調し、従い、イスラム法解釈の関係事項において、彼らの英明なる判断を尊重する。

8:我々は、不信仰者への敵対性は明示し、彼らとの関係は持たない一方、忠実なる信仰の絆で結ばれたムスリムとは協調する。もしひとつのムスリムの性格が、悪と善、服従と不服従、慣行と改定といった両義を抱えるものならば、我々の敵対姿勢も、彼らの態度に応じたものとなるだろう。

9:我々は、分裂と諍いを拒否し、統一と調和を呼びかける。総じてはウンマの一体性、個別的にはジハード戦士たちの一体性が正しく合致し、シャリーア原則の現実的かつ正しき順守の一つの旗の下になされるべきものとみなす。

10:我々は、アッラーの御言葉を至高の規定とするために尽力奮闘し、そのためには自身のあらゆる有用な資産を投じる。アッラーがジハードに勝利をお授けになるか、我々がジハード防衛のために死するまで、我々は自身の手と言葉、同様に財貨、肉体、心、資財とをもってジハードを遂行する。

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左が7月28日のジョラニ動画声明にあわせて出された「10か条の憲章」。シャリーアイスラム法)統治を強く掲げるものの、イスラム国(IS)のように「カリフ国再興」という文言はこの文書には見られない。また、ISは欧米諸国を始めとした十字軍同盟や、自分たち以外の組織をすべてを敵とみなして打倒対象としているが、今回のシャム・ファタハ戦線「憲章」では、諸派との協調も呼びかけている。右は新組織に改名後、アレッポでのシリア政府軍との戦闘に向かう戦闘員たち。(シャム・ファタハ戦線映像)

第5条で、イスラム教徒あるいは不信仰者(非イスラム教徒)にかかわらず抑圧された住民が抑圧から解放されるために尽力する、とある。「抑圧」とはおもにアサド政権の圧政を指すと思われる。ここは、不信仰者、多神教徒を厳しく処遇するISと対照的である。

ムスリム以外の住民、キリスト教徒など他宗教の民衆も等しく保護するという方針ともとれるが、実際にこれがどこまで有効かどうかは別だろう。かつてヌスラ戦線の戦闘員は、少数のキリスト教徒などいちいち攻撃しない、と言っていたが、キリスト教徒住民はヌスラ戦線に迫害されたと証言しているので、現場では建前と実態が異なることもありうる。

反体制諸派との協調に触れている部分は、例えばクルド組織との関係なども含めて注目される。その協調が他の武装諸派と政治的、軍事的にどう連携・合意をするのかも、今後のゆくえを見るひとつのポイントではないか。

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