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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS動画・日本語訳】イスラム国(IS) ドイツ・アンスバッハでの自爆攻撃

◆IS、さまざまな人生のパターンにつけ入り感化も
7月24日、ドイツ・バイエルン州アンスバッハで、地元音楽フェスティバル会場を狙った自爆攻撃が起き、12人が負傷した。容疑者ムハンマド・ダリル(27)はシリア人と見られ、自爆現場で死亡した。武装組織イスラム国(IS)系のアマーク通信は、事件後、容疑者の男が攻撃前に自分で撮影したと見られるメッセージ映像を公開。18日のヴュルツブルクでの事件と同様、今回の犯人も、ISに忠誠を表明する映像を残している。

【動画・日本語訳】ドイツ・アンスバッハでの自爆攻撃(一部意訳)
映像はIS関連機関アマーク通信が自爆事件後に公開したもの。「指導者バグダディと広報官アドナニにあらためて忠誠を表明する」とあり、以前からISに関与していたとも受けとれる。

前回のヴュルツブルクでのナイフ襲撃と今回の自爆攻撃が異なるのは、事件から2日後(26日)にウェブ上に掲載されたIS機関誌アン・ナバアが、このシリア人の男について詳細に記述した記事を公表したことだ。アン・ナバアによると「シリア内戦前にイラクイスラム国(ISI)に参加し、その後、諸組織でアサド政権と戦った。シリア・アレッポで砲弾で負傷し治療のため国外に出国。再度、ISでの戦線復帰を願うも、国境警備が強固になり、シリア入りは果たせないままだったが、今回、ISの呼びかけに応えて、襲撃に至った。ドイツ警察には家宅捜索されたが、アッラーのご加護で爆弾は発見されなかった」などとある。

f:id:ronahi:20160729161427j:plain事件後に出されたIS機関誌アン・ナバア(第40号)。アンスバッハ自爆事件のシリア人、ムハマド・ダリル容疑者はISIを含む武装諸組織での戦闘歴があったと記述。組織名アブ・ユスフ・アル・カラールだったとしている。

ISはいま、組織を最大限に誇示しようとしているので、こうした記事の内容は留意すべきだが、仮に記述が事実とすれば、難民を偽装し、組織の司令が出ると行動を起こす「スリーパー・セル型」のような攻撃が再び起きることもあるだろう。

ただ今回、自爆攻撃を敢行したムハマド・ダリルは、1年前に難民申請を却下されたものの、一時滞在を認められていて、その期間に何度か自殺未遂をしたり、精神科に入院歴もあったと言われている。フランス・ニースで暴走トラック大量殺戮事件で警察に射殺された容疑者のときは、飲酒や乱れた生活が報じられた。

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今月、あいついだドイツでの襲撃事件。ドイツ政府や警察は、事件の公表には慎重で、「ISの過激主義を背景としたテロ」と事件を安易に結び付けないようにしている。一方で、難民を感化させるような過激主義的傾向に対しては専門アドバイザー機関と連携してカウンセリングにあたる取り組みもすすめている。写真右は、7月24日のアンスバッハ音楽祭会場攻撃で、死亡した容疑者が所持していたと見られるリュックサック。(地元メディア映像) 

日ごろから信仰心が強い人間が過激な行動を起こすのでは、と思いがちだが、じつは、宗教と縁遠い生活をしていた人間が、突然、事件を引き起こすこともありうる。自暴自棄、自殺願望、あるいは、これまでの現世の俗事にまみれた人生を罪とし、「殉教」という形で免罪、清算すれば「天国に行ける」と考える者もでてくる。前回記事でも触れたがドイツ移民難民局の過激主義防止パンフレットには「身近な人が自分のこれまでの生活を呪うような言動をし始めたら、危険な兆候のひとつ」とある。ISはあらゆる人生のパターンにつけ入り、過激主義のスイッチを入れる装置を、ネットやコミュニティに仕掛けようとしているのではないか。

f:id:ronahi:20160729161915j:plainドイツ政府は、難民を装った過激主義者の流入問題に対し、「難民にまぎれて入り込んだ犯罪者や過激組織メンバーは直ちに強制送還措置をとる」としている。だがすべての難民を短期間で「判定」するのは容易ではない。難民として庇護を受けて助かった多くの命もある。過激主義対策と人道のはざまで、ドイツ政府の難民政策は揺れている。(写真はドイツ連邦政府サイトより)

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