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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画+写真21枚】イスラム国(IS)戦術分析(15)◆戦闘員養成2(軍事キャンプ日課表)

◆軍事キャンプの日課~教義の学習に重点【動画+写真21枚】
イラクイスラム過激組織が築いた軍事キャンプはISが初めてではない。タリバン政権崩壊直後、アフガニスタンからアルカイダ組織がイラク北部の山岳地帯に流れ込み、拠点化工作を図っていた。それがひいては今日のISにも連なる源流のひとつを形作っている。ISの台頭で、軍事キャンプはイラク・シリア各地に広がった。前回に続いて、軍事キャンプの2回目。

【IS動画・日本語字幕】アル・カラール軍事キャンプ(イラク (一部意訳)
これはイラク中部ディジラ県にある軍事キャンプ。この県はISが独自に作った行政区。ディジラとはチグリス川を指す。キャンプ名のアル・カラールは、「戦場で恐れをなさぬ猛者」を意味すると思われる。

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ISがイラクで初めてイスラム過激派の軍事キャンプを設営したわけではない。これはイラク北部、クルド地域のイラン国境近くにあるビアラ村。イラクでのイスラム武装組織の最初期の軍事拠点があった場所のひとつで、2001年、アフガニスタンタリバン政権が崩壊すると、拠点を失ったアルカイダの一部がイランを経由してここに入り込んだ。クルド村になぜアルカイダがと疑ったが、実際に地元住民らに聞くと、当時、クルド・イスラム組織とアラブ人がモスクを拠点にし、山で戦闘訓練をしていた、と話した。米軍は以前から情報を把握し、2003年3月のイラク戦争開戦直後にこの村のモスクを空爆。(2004年・撮影:坂本)

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ISの前身組織イラクイスラム国(ISI)の2008年頃の映像。ISI傘下の「クルディスタン大隊」を名乗る組織がイラク・クルド地域の軍事キャンプで訓練をしている。ISは様々な潮流が合流して形成されているが、いくつかある原初組織の拠点のひとつがクルディスタンにもあった。(イラク・ISI映像)

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これも2008年頃の「クルディスタン大隊」の軍事キャンプ。戦闘服にクルド民族衣装の面影が見られる。のちにイラク聖戦アルカイダを率いたザルカウィも、クルド地域に一時潜伏していたとされる。クルド・イスラム過激派は諸派と合流し、一部が前身組織ISIに流れて、今日のISの一翼を担った。なかでもハラブジャはイスラム運動が根強く、のちのISに参加した戦闘員も多い。(イラク・ISI映像)

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これは2015年、IS関連機関がネットで配布したパンフに掲載されていた軍事キャンプ生活の日課表。シリア・ラッカから、イラクにあるアブ・ハムザ・ムハジール・キャンプ(ファルージャ県管区)とアブ・オマル・バグダディ・キャンプ(キルクーク県管区)に出された文書のようだ。中央の統制のもと、軍事キャンプ運営の統一メニューがあることがわかる。文書は「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」となっているので、ISを宣言する2014年6月以前に出された文書と見られる。

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「軍事キャンプ日課表」に記載されていたアブ・オマル・バグダディ軍事キャンプは、イラクキルクーク県管区にある。中央の黒い旗が「隊旗」。アブ・バクル・バグダディの前にISI指導者だったのが、アブ・オマル。2010年、米軍とイラク軍の合同作戦で死亡。(イラク・IS映像)

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これもアブ・オマル・バグダディ軍事キャンプ。正座しながらノートをとっている。(イラク・IS映像)

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アブ・オマル・バグダディ軍事キャンプ。ISが戦闘でボディアーマー(いわゆる防弾ベスト)を着ることはほとんどないが、ここでは着用している。ISはこうしたカバーの中に爆発物を入れて、自爆ベストにすることのほうが多い。(イラク・IS映像)

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こちらは昨年4月に公開されたシリア・アレッポ県のアアダッド・アル・ファタヒーン軍事キャンプ。(シリア・IS映像)

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訓練は「タドリブ」と呼ばれる。ここでは30人前後が訓練を受けているようだ。(シリア・IS映像)

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カラシニコフ銃を使った射撃訓練。やはり時計は右腕。(シリア・IS映像)

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機関銃の講習。ほとんどはPK機関銃。アラビア語で「P」の発音がないので、PK機銃は、武装組織各派とも「BK」(ベー・カー)や「BKC」(ビー・ケー・シー)と呼ぶ。UNHCRのシートの上にどっかりと銃を置いているのが悲しい。(シリア・IS映像)

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キャンプはIS支配地域の各県管区に置かれるが、イラク、シリアの各キャンプの映像から、基本的に統一した訓練メニューがあることがわかる。(シリア・IS映像)

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有刺鉄線の下を匍匐前進。たいてい教官が真横から実弾を撃ち込む。(シリア・IS映像)

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一連の写真には松の木などが映っていて、シリア北部の地域性が分かる。後方の丘の上にオリーブ畑が見える。前回のイラクのような大きなナツメヤシの木は見られない。(シリア・IS映像)

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常設の訓練設備のようだが、空爆が激しくなってからは場所を転々と移動させているようだ。(シリア・IS映像)

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この記事冒頭の動画には「3か月の訓練を終えた」とあるが、訓練期間については1か月~3か月など様々な情報がある。ラッカにいたシリア人青年に聞いたところ、「地元入隊組(アンサール)は2~3か月、外国人入隊者(ムハジール)のほうが地元組より少し長いらしい」ということだった。クルド組織・人民防衛隊の場合は、基本訓練は以前は約3~4か月だったが戦闘が激しくなると新兵補充のために短くなったところもあるという。ただそういう場合は後方任務に配置し、いきなり前線ということはしていないようだ。ISの場合、戦局がかなり逼迫し、軍事予算も減っているので、訓練期間短縮を迫られている地域もあるのではないか。(シリア・IS映像)

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これは寝袋のように見えるので行軍訓練か。体力準備(身体養成)というような意味のキャション。(シリア・IS映像)

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軍事訓練と同様にISが重要視するのが、イスラムの学習。各自がコーランを手にしている。ISは戦闘員に給料を支払うことで、地元からの新兵調達を可能にした。とくにシリアでは内戦で混乱するなか、家族を食べさせるためにISに加わったものも少なくない。信仰心よりも経済的理由で加わった者は、思想的に弱い。戦闘ですぐ降伏したり、敵軍に拘束されて転向し秘密を漏らすのは、こうした経済的理由から参加した地元戦闘員だった。このためISは軍事キャンプの教育課程で教義の学習に大きな比重を置いている。ISが独自に解釈した教義で思想的に強固にするのと、容赦なく敵を斬首処刑できる「宗教的根拠」を信じ込ませるためでもある。(シリア・IS映像)

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PC画面をプロジェクターで映して戦術講習。(シリア・IS映像)

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プロジェクター画面「攻撃目標の推定方法~場所・埃・色・動きから判別」というようなことが書いてある。タスクバーにスカイプが・・・。(シリア・IS映像)

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一応、きちんとノートをとって勉強しているようだ。(シリア・IS映像)

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