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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS動画・日本語訳】歌から読み解くシリア・イラクでの戦争(16) イスラム国(IS)「わが復讐」フランス語でパリ・ブリュッセル襲撃を称賛

◆襲撃犯を英雄扱い
武装組織イスラム国(IS)が今月上旬に公開したフランス語によるナシード。ナシードとは本来、イスラム宗教歌を含む唱歌である。ISの映像クリップはもはや宗教とは関係ない。残酷で激しい映像と歌詞ばかりが並ぶ。残虐シーンが多いので短く編集したが、フランスやベルギーでの一連の事件を称賛する内容になっている。

【動画・日本語訳】「わが復讐」(一部意訳・転載禁止)
ISが公開した、パリ・ブリュッセル襲撃事件を称賛する歌。シリアで軍事訓練を受ける襲撃犯も映っている。冒頭のヴァルス首相は昨年11月のパリ襲撃事件翌日の仏TF1の番組に出演した際のもの。最後のアブドラ・ラロッシは6月にパリ郊外で警官夫婦を殺害した男。フランスを悲しみと不安が覆うなか、ISに毅然とした態度で立ち向かうことを表明し、このあとIS支配地域への空爆が強化された。

最近のISのナシードに共通するのは、「お前たちが攻撃を加えたから我々も反撃する」という理由付けだ。空爆で殺される子どもたちの映像を映し、その報復として市民無差別殺傷を正当化する。また、映像クリップに挿入される斬首映像も増えている。

ISに参加した外国人戦闘員の背景も様々だ。高学歴の者で信仰に目覚めた者、鬱屈した移民社会への反発からシリア入りした者。外国人戦闘員は高給で優遇され、ジハード戦士のほかに、「理想社会」で警官や行政機関での役職にも就くことができる。また奴隷として拉致したヤズディ女性を妻として買うこともできる。そうした情報を彼らがSNSで発信し、さらに国外から仲間を呼び寄せた。

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「わが復讐」の映像には昨年のフランス、今年3月のベルギー、先月の警官夫婦殺害の実行犯が次々と登場。いずれも英雄視し、行動を称賛する。パリ、ブリュッセル襲撃の実行犯は笑顔で写っているが、手には斬首し血まみれになった生首を持っている者もいる。昨年11月パリ、今年3月ブリュッセルの襲撃犯は実際にIS地域で軍事訓練や殺人を行なったのちにヨーロッパ入りしたことがわかる。

一方で、シリア、イラクの地元戦闘員の末端は、貧しく仕事のない青年たちもいて、外国人に比べ給料も低い。なかにはISに共鳴した者もいるが、家族を養うため、という理由で参加した例も多い。じつはこれがISの弱点でもある。初期の段階ならば、外国人と地元戦闘員を分断すればよかった。外国の家族、子どもまで入り込んでしまったいま、その完全な壊滅は容易ではない。

そしてトルコの国境警備が国際社会の圧力で以前より厳しくなると、こんどはシリア移住を促すのではなく、各地で決起せよと呼びかけるようになった。今後、アメリカ・フロリダ銃乱射やパリ警官夫婦殺害のような「単独型決起」がさらに各地に広がるかもしれない。

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南仏ニースで起きた市民を狙った悲劇を伝えるフランス各紙。事件がIS共鳴者による攻撃とすれば、組織的な襲撃というより、単独決起型という可能性がある。

f:id:ronahi:20160718135818j:plainトラックを運転していたとされるのは、チュニジア系のモアメド・ラウエジュ・ブレル容疑者(31)。

f:id:ronahi:20160718135901j:plain7月14日に起きたニースでのトラックによる大量殺人事件について、ISからは明確な声明はまだ出ていない。IS系のアマーク通信は「IS兵士による作戦」としたが、根拠は示されていない。

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ニース襲撃事件については、IS共鳴組織が、ISラジオ放送アル・バヤンの報道を元に事件を称賛する画像を作成。「カリフ国の兵士が大型トラックを用いて十字軍同盟フランスのニースにてフランス国民をひき殺した」などとある。こうした画像がツイッターなでで出回っている。これはヌスラット・アル・マクディシ(エルサレム征服団)というロゴが入っていて、IS公式ではない。ただ、IS公式でなくとも、SNSにあふれる情報に感化された者が次の事件を引き起こす可能性はありうる。

f:id:ronahi:20160718140026j:plainツイッターではフランスでの一連の襲撃事件をまとめた図が出回った。一番下にニース襲撃が早くも掲載されている。だが、この図に入っているロゴはIS本体ではなく、ISの関連組織とされる「アイシャの末裔たち(孫娘たち)財団」という女性関連組織である(アイシャは預言者ムハンマドの妻のひとり)。 パリ襲撃やバングラデシュ事件ではすぐにIS公式声明が出たが、現状では外郭組織しか出ていない。それぞれの情報元を見ておくこともISが事件をどう位置づけているかを知る上で参考となる。

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