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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画+写真25枚】イスラム国(IS)戦術分析(14)◆戦闘員養成1(軍事キャンプの一覧)

◆IS関連 ◆IS戦術分析

◆ジハード戦士はどのように作られるのか【動画+写真25枚】
武装組織イスラム国(IS)は、どのように戦闘員を養成しているのか。今回から軍事キャンプについて取り上げてみたい。地域によって戦闘員の状況も異なるため、ISが公開した映像と、これまでのイラク、シリアでの軍部隊取材経験などを元に考察する。軍事キャンプの映像はプロパガンダ効果も高く、多くの動画・写真が公開されている。各キャンプや訓練メニューを見比べるために、数回に分けて紹介する。今回の動画は昨年6月に公開されたイラクの地方部でのおもに地元戦闘員の養成訓練。

【IS映像】ザルカウィ軍事キャンプ(イラクキルクーク (一部意訳)
教官が戦闘員の足元に容赦なく銃弾を撃ち込んでいるのがわかる。軍事訓練に加え、信仰で武装することも戦闘員に課せられている。映像では教官がジハード戦士の軍人精神を語るが、「アッラーがついているから負けるわけがない」という精神主義による兵力の消耗も激しい。新たな志願者を獲得する目的もあってISは積極的に軍事キャンプの映像を公開する。一方、戦闘現場で使い捨てのように死んでいる現実が伝えられることはない。

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軍事キャンプにはそれぞれ隊旗があって、これはイラクキルクークの「アブ・ムサブ・ザルカウィ・キャンプ」の旗。(イラク・IS映像)

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これも映像に出てきたザルカウィ・キャンプ。ザルカウィはISの前身組織・イラク聖戦アルカイダの指導者で、2004年の香田証生さん殺害事件に関与したとされる。米軍の空爆で2006年に死亡。いまでもISの精神的支柱のひとりとなっている。(イラク・IS映像)

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【IS軍事キャンプの一覧】ISは支配地域に戦闘員を訓練する軍事キャンプ(ムアスケル)を置いている。常設キャンプというより、空爆を避けるために場所を変えたりするので、図ではキャンプではなく「訓練隊」とした。新規戦闘員はこれらの軍事キャンプで訓練を受ける。自衛隊で言うところの基本教練にあたる。各隊には名前があり、過去に死んだ高名な指導者や指揮官などの名が付けられる。キャンプ名が不明のものもあるものの、それぞれ各県に分散しているのがわかる。シリアのラッカ、ハマにもキャンプが存在するが名前は公開されていない。イラクでもニナワ県のような人口の多い地域では、複数のキャンプが置かれている。図で示した以外にも小規模なものが各地に多数存在する。この図は2014年6月に、「イスラム国」が宣言されて以降に公表されたシリア・イラク地域内でのものを集計。すでに失った拠点地域も含む。図を拡大表示する

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まずは入隊風景から。シリア東部デリゾール(IS呼称ではハイル県)での新規戦闘員招集。(シリア・IS映像)

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身の回り品を入れるカバンひとつで、年齢も様々だ。ISは他の組織と違って、戦闘員に給料を支給した。これが新規戦闘員獲得につながった。シリアとイラクで物価は違い、また年齢によっても給与額が違うが、イラク・モスル近郊で戦闘中にイラク治安当局に拘束されたIS戦闘員の話だと、地元入隊組で家族持ちの場合、日本円換算でひと月2万円前後。4、5人の部下を持つ分隊長で約4万円だった。なんとか生活できるということなので決して低い額というわけでもない。戦局が逼迫した現在、給料が定期的に支払われているかは不明。今年に入って、「空爆激化」を理由に給与を減らす通達が出されたとも報じられている。(シリア・IS映像)

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まだ若い少年たちがいるのがわかる。シリア・ラッカを脱出し、友人が何人もISに参加したという青年から聞いたところ、独身の若い末端兵の給料は、日本円換算でひと月5千円~1万円前後と話した。妻子がいればもう少し多いだろう。シリア北部地域で学校教師(家族持ち)の給料が2万円なので、地元物価からからすると青年末端兵にとっては低い額ではない。戦乱で収入源を失った家族を支えるために、学校を辞めて志願した青年も少なくない。(シリア・IS映像)

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バスで出発。このあとISキャンプに「入営」し、基本教練が始まる。(シリア・IS映像)

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ISの戦闘員は、地元出身者(アンサール)と外国からの移住した戦士(ムハジール)から構成されている。この写真は多くが地元出身者と思われる。外国人戦闘員の場合は給料は高額で、地元採用組との軋轢も内部で起きているとラッカの住民から聞いた。(シリア・IS映像)

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これはISがいまのように大規模な武装組織になる前、地方の地元の男たちを集め、砂漠を移動しながら訓練していた頃のもの。当時は服がバラバラで普段着だったり、動きにも統一感がないのがわかる。写真はイラク北部タラファル近郊と思われる。そんな集団が米軍に訓練されたイラク軍を各地で撃破し、のちに200万人都市モスルを制圧し、いまや全世界の脅威となっている。(イラク・IS映像)

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これもイラク北部タラファル近郊と思われる。基礎訓練では高度な技能習得よりも、基礎体力向上と部隊行動規範、信仰教育が徹底される。年齢も様々な新兵集団を、統率のもとに動かし、戦えるようにするのも訓練の重要な役目だ。(イラク・IS映像)

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写真はイラク東部ディアラ県のキャンプ。こういう質素な普段着で訓練しているのは、たいてい地元入隊組(アンサール)と思われる。地元組の場合、思想的背景や政府軍への復讐などの理由もあるが、やはり給料がもらえるので生活のため、家族を養うため、という経済的理由も大きい。戦争と混乱が生活を破壊し、家族を食べさせるために戦闘員になるという負の循環構造が出来上がってしまった。またISに恭順した地方部族からの人員供出として参加させられる若者もいる。(イラク・IS映像)

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ISの支配地域拡大にともない、訓練体系も整備され始める。とくに2014年6月にイラク北部のモスルを制圧すると、銀行から大量の現金を強奪したこともあり、軍備財政が豊かになった。キャンプによっては統一したジャージをそろえたところもある。写真はイラクにあるアブ・ムサブ・ザルカウィ軍事キャンプ。かなりの人数がいるようだ。(イラク・IS映像)

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膝を曲げた姿勢で前進。基礎体力の獲得と、集団行動を叩き込まれる。地方部の戦闘員には、学校を出ていなくて、体育のような集団行動の経験がない者もいる。命令のもとに機敏に動かねばならない軍隊組織では、集団行動を身につけることが求められる。(イラク・IS映像)

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ジャージの背中には、「ザルカウィ・キャンプ」の文字がプリントされている。特別に発注したようだ。軍事教練のほかに、イスラム法や教義などについても学ぶ。戦闘で怖気づかない強固な精神を鍛えるのもキャンプの重要なプログラムだ。(イラク・IS映像)

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これはイラク北部ニナワのアブ・アハマド・ジブリ・キャンプのもの。ここもジャージが支給されている。仲間を背負って渡河訓練。最後尾はちゃんと後方を警戒している。(イラク・IS映像)

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写真はアブドル・ラハマン・ビラウィ軍事キャンプ。イラクバグダッド近郊の西南地域と思われる。(ISはジャヌーブと呼称)。これはシャリーアイスラム法)の講習。ISの特徴は、軍事訓練課程の中に、信仰上の教義やイスラム法の学習を組み込んでいることだ。ISの過激な思想・信仰解釈で武装させることで、心おきなく殉教できる心理を作り出し、また敵の首を生きたまま切り落とす人間に変えてしまう。そして戦闘で逃げ出したり敵の捕虜になったときに寝返ったりしないようにするためでもある。実際には、地元入隊組の戦闘員には家族もいたりすることから、降伏したり、寝返る例も少なくない。(イラク・IS映像)

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応急手当の講習とある。負傷時の処置や、仲間の救護なども各キャンプで共通したプログラムに入っている。(イラク・IS映像)

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キャンプの食事風景。ご飯に羊肉を載せている。こうした映像でも勧誘したりするので、食事写真も選んでいるだろうが、宣伝映像からだと各キャンプとも食事は一応、充実しているように見える。(イラク・IS映像)

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炎の上を行くのは、クルド組織もよくやっている。実戦を想定してのこともあるが、根性をつけたり、自信を持たせるためでもある。(イラク・IS映像)

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でもそれなりに熱いと思う。(イラク・IS映像)

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有刺鉄線をくぐるのもイラク軍やシリア武装各派もやっているので、IS独特というものではない。(イラク・IS映像)

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指導教官がすぐ横から容赦なく実弾を撃ち込む。これで負傷している戦闘員もいると思われる。(イラク・IS映像)

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ペアになって腹筋。ニーパッド、エルボーパッドを装着しているのが見える。揃いの戦闘服は支給されたものだろう。このキャンプでの戦闘服はイスラム風「アフガン・ローブ」に加え、上衣裾の短い普通の戦闘服も使われているようだ。(イラク・IS映像)

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ナツメヤシの木がたくさん並ぶところにイラクの地域性が感じられる。北部にはこうした場所はあまりない。(イラク・IS映像)

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キャンプで1回に訓練を受ける人数は小さい規模で10人前後、大きくなると30人ぐらいになるので一個小隊といったところだろうか。(イラク・IS映像)

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