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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS動画・日本語訳】イスラム国(IS)フロリダ銃撃事件、フランス警官殺害を称賛

◆「シリア入り呼びかけ」から、各地での単独決起扇動へと変化

6月12日に起きたアメリカ・フロリダでの銃撃事件は、死者49人を出す惨事となった。銃乱射事件での犠牲者としてはアメリカ史上、最大の犠牲者だ。直後にフランス・パリ郊外で警官夫婦の殺害事件が起きる。いずれも容疑者は武装組織イスラム国(IS)に忠誠を表明したとされる。ISは事件を称賛し、同様の「決起」を呼びかけるメッセージ映像を公開した。映像はIS支配下の地方県が作成したもので、アメリカ人、ロシア人、インドネシア人、ウズベク人、フランス人戦闘員らが登場する。

【IS映像】フロリダ銃撃を称賛し、各地での決起を呼びかけ (転載禁止)
フロリダ銃撃事件から1週間後に、イラク西部の「フラット県・広報局」が公表した映像。映像タイトルの「あなたは自分に対してのみ、責めを負わされている」はコーランの一節で、ここでの「あなた」はアッラームハンマドに対して言ったもので、信者たちを激励せよ、と記述された部分。(映像は短く編集しています) 

ちょうど1年前、ISはフランス語での宗教歌(ナシード)を公開したが、このときは「IS地域に移住し、ともに戦おう」と求めるものだった。また、パリ襲撃事件は、組織的な準備の下に遂行された。最近の声明や動画では、自分が住んでいる地域で行動を起こせ、と単独型の決起を煽るものが増えている。

〔動画〕「手を伸ばし忠誠を」(フランス語) (転載禁止)
1年前、ISが公開したフランス語のナシード。このときは「IS地域に移住し、ともに戦おう」と求めている。映像では、フランスからトルコ国境と思われる場所を越境して、軍事訓練ののちに戦闘に向かう様子が描かれている。

「シリア入り」でなく、世界各地での決起を奨励するものに変化した背景には、シリア入りのおもな経路だったトルコ国境線の警備が厳しくなり、外国からの志願者が入り込むのは以前より厳しくなったことも背景にある。
ISは自分たちを壊滅させようとする国際社会との戦いを「イスラム教徒と十字軍同盟」の戦いにすり替えようとしている。

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フロリダ銃撃事件とフランス警官殺害事件の直後に出されたISのアラビア語機関誌アン・ナバア。このときフロリダ事件については情報が錯綜し、当初は「オマル・マティーン容疑者は同性愛者で私怨の可能性も」と伝える一部メディアもあった。一方、フランス警官殺害は、容疑者が動画メッセージを残し、IS指導者バグダディ師への忠誠を明確にしている。49人死亡のフロリダ事件が小さな扱いで、フランス警官殺害に大きく行数を割いたのは、こうした事件直後の状況が影響した可能性もある。のちにマティーン容疑者がISに忠誠を表明するメッセージを残していたことなどから、犯行には思想性があったとする報道が増えた。

f:id:ronahi:20160626072303j:plainアルカイダの英語機関誌インスパイアが掲載したフロリダ銃撃事件を称賛する記事。マティーン容疑者は事件直前にISへの忠誠を表明していたとされるが、インスパイア誌は、ISについては触れず、「どの組織に関係していたとしても行動は称賛する」としている。乱射事件を、単独決起型ジハードの指針として扱い、今後も同様の一匹狼タイプの武装襲撃が増えることを示唆。インスパイア誌も、文中でコーランの一節を引用しているが、今回のIS動画と同じ箇所「あなたは自分に対してのみ、責めを負わされている」(婦人章:84節)となっている。

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6月13日、フランス・パリ近郊マニャンビルで、警官とその妻を刃物で殺害したラロッシ・アバッラ(アブダラ)。フランス生まれで、モロッコ系と言われる。夫婦を殺害後、フェイスブックに約12分にわたる動画メッセージを残している。左がフェイスブック上でIS指導者バグダディに忠誠を表明する様子。

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ラルッシ・アブダラは、警官夫婦を殺害し、3歳の子供を人質に立てこもった。警官隊の突入でアブダラは射殺され、子供は救出された。写真は殺害された警官と妻。(フランス警察当局公表写真)

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動画では「IS地域入りは難しくなっている」と戦闘員が認めるが、逆に言うと、今までは容易だったということである。ISの戦闘員が入りこんだおもなルートはトルコ国境経由。トルコの国境警備は当初、部分的にザル状態な地域もあり、戦闘員志願者が大量に流れ込んだ。こうした国境警備の背景には、シリアのクルド組織(YPG)の拡大を阻止するために、ISとの戦いでYPGを消耗させたかったトルコの思惑も見え隠れする。写真はトルコ・シリア国境地帯にトルコが設置している有刺鉄線。刃先がカッター状になっている鋭いタイプだ。トルコ国境警備隊装甲車が頻繁に巡回し、赤外線監視装置や地雷も敷設されているが、地元密輸業者は「抜け道」を知っている。IS問題が国際社会の深刻な脅威となりはじめると、各国からの要請もあり、トルコの国境警備は以前よりも厳しくなった。(撮影・坂本)

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