イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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音声動画【日本語訳・ISラジオ】フロリダ銃撃事件を速報したISニュース報道

◆フロリダ銃撃「攻撃はイスラム国戦闘員」とISがいち早く認めた理由はどこに

6月12日起きたフロリダ銃撃事件では、武装組織イスラム国(IS)が運営するラジオ放送アル・バヤンが早くも事件を報じ、襲撃を称賛した。6月14日放送のニュース(約6分)をあえて全部、日本語字幕をつけてみた。(宗教・軍事用語が多いので一部補足の上、意訳しています)

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【ISラジオ・日本語訳】フロリダ銃撃事件と各地の戦況(2016/06/14放送)
フロリダ事件のことばかりが注目されているが、ISラジオ・アル・バヤン【きょうのニュース】のほとんどは、各地での戦闘を伝える戦況報道である。要するに大本営発表で、毎日、「勝利」しか伝えない。ISのメディアや彼らの思考を知る上でもいちど聞いてみていただけると、どういうものなのかがわかると思う。フロリダ事件について「今回の攻撃戦は16年前のマンハッタン攻撃以来の死者を出した」としているのは9・11事件のことと思われる。16年前とあるのは、イスラム暦の換算方法が異なるからではないか。また「無神論クルド人」は左翼的性格の強い人民防衛隊(YPG)を指す。「北バグダッド県」 など一部の県はISが勝手に作った行政区。

ラジオ・バヤンよりも先に伝えたのは、同じIS系のメディアのアマーク通信だ。事件直後は「称賛する」だったものが、数時間後には「IS戦闘員 による攻撃である」と明確にした。

昨年11月のパリ襲撃事件の際は、シリアで軍事訓練を受けたIS戦闘員がひそかにヨーロッパに入り、協力者の手立てで武器や爆発物を準備し、襲撃を決行している。つまり攻撃が「成功」すれば声明をすぐに出せた。だがフロリダの容疑者の場合は、いわゆる「一匹狼」型行動ではないかとされる。ネットなどでISの過激主義に感化され、自分で犯行に至ったスタイルだ。もしISが攻撃指令を出したのでなく、また実行者についてわからない状態であれば、勇み足的に「声明」を出すのはリスクも伴う。例えば銃乱射が酒や薬物によるものだったり、「容疑者は同性愛者で私怨による犯行」とするような報道がのちに出た場合、攻撃を称賛したISの立場がなくなるからだ。

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IS系アマーク通信はフロリダ事件発生が報じられてから数時間のうちに「IS戦闘員による攻撃」と伝えた。アマーク通信はアラビア語や英語でISの側に立った報道をする機関だが、ISのメディア・出版物がすべてヒジュラ暦しか使わないのに対し、アマークは西暦を使用している。

それでも、今回のようにいち早く「攻撃は自分たちによるもの」としたのは、何らかの確信があったか、間接的な協力者がいるか、あるいは、先月、IS報道官 アドナニが欧米での市民攻撃を呼びかけたことの「効果」を宣伝する意図があったとも推測される。先日のアドナニ声明は、市民に対する無差別攻撃を呼びかける過激さを見せてはいるが、過去に出した勝利の確信に満ちたような声明と比べるとトーンダウンしている。これはISがシリア・イラクでの攻勢を受け、かなり追い込まれているからとも思えてくる。早々にフロリダ事件を「称賛」したのも、そうした焦りがあるのではないか。

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ISのラジオ放送アル・バヤン。ニュースでは連日の戦況報告が中心。後藤健二さんら日本人人質事件の際は、人質の殺害についてこのラジオ・ニュースで読み上げられた。写真はアル・バヤンの放送スタジオ。(IS映像より)

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アル・バヤンの番組表。はIS支配地域の都市で放送されている。番組はニュースのほかに、コーラン朗読、ジハード戦士のあるべき姿、健康相談など。楽器を使う音楽はISが禁止しているため、宗教唱歌以外の音楽はない。受信周波数は町によって異なるが基本的にFM放送だ。ISは衛星テレビ放送視聴を禁止し、受信アンテナの摘発を強化。一方、アル・バヤンの視聴を推奨している。(IS映像より)