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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)戦闘員 なぜみんな右腕時計なのか

◆ジハード戦士が右腕時計を好むナゾ
イスラム国(IS)の映像や写真を見ていて気づいた人もいるかもしれない。全員とは言わないまでも、かなりの戦闘員が右手に腕時計をしている。なぜ右腕時計が多いかというのには諸説あるらしい。「らしい」というのは、イスラム教徒でもその理由を知らない人が多いからだ。

f:id:ronahi:20160424202933j:plainアルカイダビンラディンは左に時計をつけることもあったようだが、写真ではやはり右腕時計で映るもののほうが多い。写真左はタイメックス社ではないかと言われたが、コピー品かも知れず不明。右はカシオの名機 F-91W と思われる。

右腕時計についてはスンニ派イスラム教徒の個人SNSサイト上でもいまだに「どちらの手に時計をすべきか」と議論が続いていて、イスラム法学者からは、「左手でも教義に反しているわけでなく、とくにこだわる必要はない」という見解が出たりしている。なにぶんムハンマドの時代に腕時計は存在しなかった。また、預言者の言行録(ハディース)に「ムハンマドが右側を好んだ」というような例が右腕時計の根拠となっているともわれるが、それすら定かではない。

f:id:ronahi:20160424201043j:plainアブ・ムサアブ・ザルカウィも右腕時計である。アフガニスタンアルカイダキャンプからフセイン政権崩壊後のイラクで宗派対立を仕掛け、いまのイスラム国(IS)の前身組織「イラク・聖戦アルカイダ」を結成した。イラクで拉致された日本人青年、香田証正さん殺害(2004年)に関与したとされる。ザルカウィは2006年、米軍の空爆で死亡。

このほかには、「信仰深いイスラム教徒のなかには、なんでもかんでもキリスト教徒のやっていることの反対のことをしないと気がすまない人がいる」という説。信仰心の「熱い」イスラム教徒ほど、この『逆さま主義』を貫いている人が多いという。例えばシーア派のイランではスーツは着ていてもネクタイをしない人がほとんどだ。その理由のひとつがネクタイを「西洋文明の象徴」とみなすからともいわれる。「襟とネクタイを結ぶ構図がキリスト教の象徴、十字のように見えるから」という人までいる。この説の真相は定かではないが、こじつけのようでもあるし、妙に説得力があったりもする。
右腕時計の人に信心深い人が多いのは事実で、イスラム圏で取材をする際、男性の右手をさりげなくチェックするようにしている。その人の信仰への距離感を知るひとつの目安になることもあるからなのだが、もちろん右腕時計のイスラム教徒すべてが深い信仰心ゆえというわけでもない。

f:id:ronahi:20160424201054j:plain2014年、イラク第2の都市モスルを制圧後、「カリフ制復活」を宣言する演説に臨んだIS最高指導者、アブ・バクル・バグダディ。時計はやはり右手。欧米メディアはロレックスではないかとしたが、ムスリム向けの腕時計「ファジルWA-10S」と見られる。礼拝時にアラームで時刻を知らせてくれる機能つき。通販サイトでも購入可能のようだ。

左利きだから右腕に時計をしている場合もあるだろうし、トイレで左手でお尻を洗うとき、左腕時計だと汚れやすいなどの実用的な理由かもしれない。あるいは多くの国で一般には左手で握手をしないのと同じ程度かもしれない。なにより余計な先入観は予断と偏見にもつながる。ただ、相手の信仰への距離感がわかれば、会話などの話題を微妙に選択することにも役だつので、自分なりに注目ポイントのひとつとしてきた。 

イラク人の友人たちにこの話をすると、それは考えすぎと笑われたりする。 「イスラム教徒がキリスト教の逆さま主義で右腕に時計するのなら、それはキリスト教へのコンプレックスの裏返しではないか」 。 一方で、「右腕時計に信仰深い人がいるのはその通りかもしれない」と、思い起こしながらうなずく者もいた。日本人の若者にも、数珠のようなブレスレットをする人がいるが、そういうかんじの「験(げん)担ぎ」なのかもしれない。イスラムの信仰上、「験(げん)」が認められるかは知らないが。

f:id:ronahi:20160424201113j:plainIS戦闘員は、右腕が多い。全員というわけではないものの、8割ぐらいが右腕時計ではないか。左腕時計の戦闘員もいるので、とくに規則はないようだ。戦場で銃を扱う際に引き鉄側に時計をすると、やはり不便なのではとも思うのだが、預言者にあやかりたい気持ちのほうが強いのか…(IS映像)

ISは支配地域でイスラム法シャリーア)による統治を徹底させていて、ヒゲの伸ばし方やズボンのすその長さ、女性はヒジャブのかぶり方など、こと細かく規定している。だが、IS戦闘員には一部に左腕時計の人もいるので、命令として右腕時計が規定されているわけではないようだ。
いまだにナゾの多い右腕時計。過激主義者は別にして、一般のイスラム教徒に対しては、どちらの手に時計をしていようと、きちんと敬意を払うことだけは忘れないでおこう。

f:id:ronahi:20160424201139j:plain戦闘員に右腕時計が多いのがわかる。これはバグダディ師への忠誠を唱和するバヤアという儀式で必ず右手を差し出す。入隊時の「宣誓式」で行なわれるほか、作戦前に部隊の志気を高めるために、大声で唱和する。(IS映像)

f:id:ronahi:20160424201219j:plainIS支配地域で売られているISロゴマーク入りの時計。こういうのは数千円程度なので高価ではないが、戦闘で使えるような防塵・防水ではないだろう。G-SHOCKなどは流通も限られていて高価だが、戦闘員の実用的アイテムとして人気があるようだ。日本人がシリア以外の周辺国でこうしたIS時計を入手しても、話のネタにと持ち出せば経由地のヨーロッパで見つかって「テロ容疑者」として禁固刑も含む重い処罰もあるので、手に入れようなどと思わないように。(IS映像)

さて、おまけだが、左利きで知られるオバマ大統領は時計を左手にしている。
一方、ロシアのプーチン大統領は、右利きながら、右腕時計である。理由は不明だが、画像を集めるとこんな感じになった。キムタクも一時、右腕に時計をしていて話題になった。なんとも奥深い右腕時計のナゾである。

f:id:ronahi:20160424201506j:plainプーチンは右利きなのだが、時計は右腕時計。オバマ左ききだが、左腕時計。

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