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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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〔トルコ〕アンカラ爆弾事件(2)◆クルド武装組織TAKが「犯行声明」

◆クルド関連 ◆各国・各組織声明文

◆PKKとTAK「クルディスタン自由のタカ
2月17日、アンカラでトルコ軍兵士を含む多数の犠牲者を出した自爆攻撃事件では、当初、トルコ政府は、シリアのクルド政党PYD(民主統一党)、武装組織・人民防衛隊(YPG)の関与を発表したが、19日になって「クルディスタン自由のタカ(TAK)」を名のるクルド武装組織が攻撃を認める声明を出した。

TAKはこれまでもトルコ国内で爆弾事件を繰り返してきた組織で、「クルディスタン労働者党(PKK)から分岐した独立組織」と自分たちでは主張している。だが、トルコ政府は同じ指令系統の組織で一体のものと見なしている。過激な闘争を繰り返すTAKとはいったい何者なのか。

f:id:ronahi:20160227211600j:plainTAKとは「Teyrêbazên Azadîya Kurdistan」(テイレバゼン・アザディヤ・クルディスタン)=「クルディスタン自由のタカ」を意味する。写真のロゴの文字テイレンバゼは旧式で、現在はテイレバゼンを使っている。

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TAKが登場したのは、2004年頃といわれる。トルコの観光地などを狙い、経済的ダメージを与えるような爆弾事件を繰り返し、その後、銀行ATM、バス、インターネットカフェなどターゲットは多数のいる市民がいる場所へと攻撃が無差別化した。しかしPKKは、これまでこの組織やその事件との関連を公式的には否定している。

TAKは、声明の中で「オジャランPKK指導者万歳」を掲げながらも、「PKKのトルコ政府に対する闘争方針は消極的だ」としてきた。TAKは、PKKとは別の独自の戦闘方針で爆弾闘争を続けてきたとするが、これまでのTAK自爆攻撃の戦闘員は、ほぼPKKに関係していたメンバーである。

TAKが活動を活発化させた時期は、ちょうどエルドアンが政権基盤を固めていった頃と前後する。エルドアンは、国内のクルド問題については欧米諸国の圧力もあり、クルド人の文化的権利の一定程度の拡大をもたらす姿勢も見せてきた。

かつては「クルド人そのものが存在しない」としてきたトルコからすれば、国営TRTテレビでクルド語放送を開始するなど大きな政策転換をはかったのがエルドアン政権だ。PKK支持のクルド系政治家らはTRTクルド語放送をはじめとした文化的権利の拡大を「欺瞞的な融和政策」と批判したが、一般市民までも巻き添えにしてきた30年に及ぶトルコ政府とPKKの流血の衝突を終わらせたいと願うクルド人・トルコ人の言論人や人権活動家のあいだからは、「PKKも武装闘争を放棄し、政治運動として合法路線に転換すべし」という声も上がった。PKK幹部はヨーロッパに亡命させ、ゲリラには恩赦を与えて武装解除をはかるという具体案まで出たが、こうした議論が起きるたびにPKK内部で党内闘争が繰り返され、一部幹部は追放された。

f:id:ronahi:20160227213815j:plainTAKが2月19日、サイト上で公表した「トルコ軍バス爆破攻撃」に関する声明。エルドアン大統領を激しく糾弾する内容となっている。
【この攻撃は(南東部の町)ジズレでファシストエルドアンとその一味によって殺されたクルド人民の報復である。トルコ・ファシスト国家に対する報復戦争は今後も続く。クルド人民虐殺に荷担したくない者は、エルドアンファシスト独裁政策を支援するな。またトルコの観光地も標的とする。外国人がこうした観光地域で犠牲となろうと我々の責任ではない。トルコ・ファシスト国家打倒!オジャラン指導者万歳!クルド人民・クルディスタン万歳!】とある。

声明では「観光客を狙う」としているが、これはPKKが90年代にトルコに経済的損失を与えるため観光地での爆弾事件を起こしたのを踏襲している。観光客襲撃は人権団体からも批判の声が上がり、PKKはこの戦術を一端収束させた。もしPKKが背後で関係しているのであれば、TAKを使い分けていることになる。TAKはまた、クルド語でトルヒルダンという言葉をよく使う。これは「復讐」という意味だが、クルド社会ではもう少し意味が重い「恨みのこもったかたき討ち」というニュアンスを含み、例えば部族どうしの衝突で自分の一族から数名の死者が出た際に、同じ数だけ相手の部族を殺すような場面や、父母兄弟が殺された時のあだ討ちのようなで形で使われてきた。だが観光客などの民間人攻撃予告は、クルド人の「復讐」にはならないうえに、この行動に支持が得られることはない。

トルコ政府がPKKと停戦をしても、TAKが爆弾事件を起こしてきた。TAKがPKKの別働組織として動いているなら、停戦自体の意味はない。「PKKはTAKを巧妙に使っている」とトルコ政府も右派系メディアも主張する。一方で、PKK支持のクルド人には、トルコ政府も対面上は「平和的解決」と言いながら、情報機関MiTが様々な工作をしたり、軍や警察がクルド系政党の政治家を逮捕してきたのだから、戦争にきれいごともなにもない、と話す人もいる。

しかし、人びとの声を聞くと、もう一般市民を犠牲にする爆弾闘争をやめるべき、という思いを抱いている人びとが少なくないことも感じる。そうした声を押し潰すように、TAKもPKKも闘争を激化させてきた。(つづく
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