イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS動画】「ジハード戦士は破滅の人生ではなく幸せ」とイスラム国(IS)戦闘員

◆クルド勢力の奪還戦続くシンジャル
イラク北西部ニナワ県シンジャルが武装組織イスラム国(IS)に制圧されたのは2014年8月。シンジャル一帯に暮らしていた住民のほとんどが、少数宗教ヤズディ教徒(ヤジディ教徒)だった。 冒頭に出てくる戦闘員はウズベク人と思われ、「この地を浄化する」という言葉を使う。ISはヤズディ教を悪魔崇拝の邪教と決めつけ、「殺して当然」と考えている。シンジャルが制圧された際は、ヤズディ教徒は集団殺戮にさらされ、女性は拉致され戦闘員の奴隷として性的暴行を加えられ、強制結婚させられた。

動画が表示されない場合はadblockをOFFにしてみてください
【動画】イラク・シンジャルでクルド部隊と戦うIS戦闘員メッセージ (転載禁止)
この映像が公開されたのは昨年11月。IS戦闘員の発するメッセージから彼らの思考の一端が読み取れると思う。背後にそびえるシンジャル山にはクルド部隊・人民防衛軍(HPG)が展開し、ふもと一帯の町を支配下に置くISとの激戦を繰り広げている。映像にはHPGを攻撃する様子が映り、ISが殺したHPGのクルド人戦闘員の教導隊修了証(いわゆる身分証)がアップになっている。「1996年・シリア・コバニ生まれ」とあるので、20歳に満たない年齢で戦死したと思われる。

後半に登場するアラビア語を話す戦闘員は、「ジハード戦士は破滅と労苦の人生ではなく、幸せだ」と強調する。イスラム圏を含む外部世界で自分たちがどう思われているかを意識したこうした言い方は、彼の家族や友人たちも念頭に置いて発した言葉ではないかとさえ思えてくる。そして同時に「死んだら天国に行ける」と自分に言い聞かせているかのようでもある。

f:id:ronahi:20160207211318j:plain
ISは大部隊を送り、町や村をあいついで襲撃。ヤズディ住民に銃を突きつけてイスラムへの改宗を迫り、受け入れなかった者は次々と殺害した。十万を超える住民が町を奪われ、クルディスタン地域に避難。逃げ遅れた住民はシンジャル山で孤立し、衰弱死もあいついだ。ISに拉致された千人を超える女性の多くがいまも行方不明だ。地図は2014年のシンジャル制圧時。現在は、クルド勢力がシンジャルの一部を奪還したが戦闘は続く。

シンジャルの一部は、イラククルディスタン地域のペシュメルガ兵とHPGのクルド合同部隊が奪還したが、全長50キロに及ぶシンジャル山周辺の町や村はまだISの支配下にある。「ジハードだ」と外国からやってきた戦闘員に「悪魔」と決め付けられ、家族や親戚を殺害されたヤズディ教徒。故郷を奪われた多くの住民は帰還の見通しもたたないまま、難民キャンプでの暮らしを強いられ、ISに拉致された娘や姉妹の行方を捜し続けている。

f:id:ronahi:20160207211334j:plainシンジャル山でISと戦っているは、クルド地域政府のペシュメルガ兵と、クルディスタン労働者党(PKK)の軍事部門・人民防衛軍(HPG)だ。写真はイラク山岳地帯で野営するHPGを取材したときのもの。クルド伝統の踊りを踊り、団結を強める。PKKは傘下の軍事組織を、シリアでは人民防衛隊(YPG)、イラク側ではHPGと部門を分けている。(2006年・撮影:坂本)