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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS動画・日本語訳】フランス・パリ連続襲撃事件・イスラム国(IS)戦闘員映像(襲撃前にシリアで撮影か)

【動画】「奴らを見つけ次第、殺せ」(日本語訳つき) (転載禁止)
(残酷映像にはボカシを入れていますが一部過激なシーンも含まれます)
武装組織イスラム国(IS)は、昨年11月に起きたフランス・パリでの同時多発襲撃事件の実行者とみられる戦闘員が映る映像を公開。下の図の治安当局公表写真とつき合わせると同一人物だろう。映像の戦闘員はいずれも自爆死、または射殺されている。フランスに向かう前にシリアで訓練を受け、準備が進められていたことが伺える。アブ・ウマル・ベルジキと出てくるのが主犯格のアバウド容疑者(死亡)。襲撃事件の背景を知るため映像を全訳した。

コーランを独自に解釈し殺戮行為を正当化
映像のタイトルとなっている「奴らを見つけ次第、殺せ」はコーランにいくつか出てくる箇所からつけたと思われる。「聖月が過ぎたならば多神教徒を見つけ次第殺し…」とある一節は、ときにイスラムの不寛容さを示す事例として反イスラム主義者からの攻撃材料ともなってきた。だがこれに続く文章は「かれらが悔悟するならかれらに道を開け。アッラーは寛容な御方」とある。また、別の一節では「かれらが戦わない場合は、戦う道をアッラーはあなたがたに与えない」とされている。ムハンマドの時代、多神教を土着宗教として持っていた諸部族からメッカが攻撃されていた当時の状況もあわせて見なければならない。ISは文言を都合よく解釈し、コーランの実践者気取りでいる。こうしたことも押さえておくべきだろう。

映像からわかるのは、パリでの作戦決行前に主要メンバーが映像メッセージを収録し、殺戮に手を染めていたということである。殺害されるのは「背教徒」とあることからシリア政府軍または敵対勢力関係者と思われる。軍事訓練と処刑の実践を経た戦闘員がシリアからベルギー・フランスに密入国し、武器を調達して事件に至ったことからは、ISの作戦遂行力と組織力の高さをあらためて示すものともなった。

f:id:ronahi:20160416201905j:plain事件の経過を図にまとめてみた。エリゼ宮(大統領府)からもさほど遠くないまさにパリ中心部で襲撃作戦が実行された事がわかる。フランス・ベルギーの捜査当局が公表した容疑者の写真と、今回IS映像で公表されたヨーロッパ入りする前にシリアで撮影されたIS映像に出てくる戦闘員たちの顔を照合すると、名前は組織名であるが実際に彼らがシリアで軍事訓練を受けて処刑に携わったのちに、いくつもの国境を密かに超えてフランスに入ったことがわかる。(写真の逃亡中の2人以外は、自爆・射殺などで死亡) 自爆ベルトや自動小銃を準備し作戦を遂行していることからISが相当の地下ネットワークを持っているのは間違いない。

パリ襲撃に及んだ戦闘員たちに共通するのは「我々への空爆を続けるのならさらなるテロを遂行する」という文言だ。うがった見方をすれば、世界が「イスラム国」の領土を認めれば、エスカレーションを止めることもありうると読むこともできる。

9・11事件を起したアルカイダをかくまったとしてアメリカが壊滅する宣言したタリバンは、多国籍軍の攻撃にさらされながらも存続している。そしていまアメリカは交渉の糸口を探っている。欧米諸国がテロ組織と規定するクルドPKKの関連組織、シリアの人民防衛隊(YPG)はシリア北部で独立自治地域の確立を進め、米軍の軍事支援を受けてISと戦う状況になっている。歴史はどう動くかはわからない。このままISが支配地域を維持し続ければ、「国家」として承認するイスラム諸国も出てくるかも知れない。イラクがシーア、クルド、スンニで分割されればISメンバーがスンニ地域で逃げ延びることもありうる。

「テロとの戦い」はISの台頭に行き着いた。IS問題は1~2年で片付くものではなくなっている。未曾有の凶悪な組織を前に、各国の苦悩は続く。

f:id:ronahi:20160129035018j:plain一連の襲撃作戦を立案したとされるアブデルハミド・アバウド容疑者。1987年生まれでモロッコ系ベルギー人として育ち、2013年にシリアに渡ったのち、ISの軍事訓練を受け、再びベルギーに戻り、フランスでの事件を準備したと思われる。パリ襲撃事件後、逃亡先のパリ北部のアパートで治安部隊に突入され銃撃戦ののち死亡。(IS映像ではウマル・アル・ベルジキという組織名で登場している。アル・ベルジキとは、ベルギー出身を意味する)

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