イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS声明・日本語訳】パリ連続襲撃・ロシア旅客機爆破についての「巻頭言」全文(ダービク12号)

◆ISパリ連続襲撃・ロシア機爆破~ダービク巻頭言・全文
武装組織イスラム国(IS)は11月18日、機関誌ダービク(DABIQ・英語版)で、パリ連続襲撃とエジプトでのロシア旅客機爆破についての文章を掲載した。巻頭言ではあるが、短文の犯行声明よりも踏み込んで事件に言及している点で実質的な声明文と受けとれる。コーランの一節や指導者バグダディの言葉を散りばめながら、攻撃の「正当性」を並べ立てている。そして自分達の行為を「テロ」といってはばからない。なお文中の日付に「カッコ」が付けられているのは、ISは通常ヒジュラ暦を用いており、西暦は英語読者向けに便宜的に使用していることを意味している。【宗教的な表現も多用されているため、翻訳は一部補足の上、平易に意訳した箇所もあります】

ダービク第12号・巻頭言

【彼らはその砦のみでアッラー(の攻撃)から守れるのだと考えていた。だがアッラーは彼らの予期せぬ方向から襲い、彼らの心に恐怖を投げ込み、信仰者たちと一緒になって、みずからの手でかれらの住まいを破壊した。ゆえに、見る目を持つ者よ、戒めとするがいい。】コーラン・追放章(アル・ハシュル):第2節〕

東西に分かれる十字軍どもは、卑劣にもカリフ国のイスラム教徒に爆撃をしたため、自らのジェット戦闘機上では安全だなどと思いこんでいた。【かれらが一緒でも、しっかりと防御した村とか防壁の陰でない限りは戦わないであろう。】〔追放章(アル・ハシュル):第14節〕

だがアッラーは戦争を仕掛ける十字軍どもに対し、彼らの予期せぬ方向から罰をお与えになった。かくしてロシア人とフランス人に対する祝福されし攻撃は、イスラム国に対する国際諜報戦にもかかわらず成功裏に遂行されたのだ。これら2つの十字軍の国は、イスラムイスラム教徒、そしてカリフ国のイスラム総体への敵対行為の結果、まぎれもなく自らの手によって自分の家を破壊することになったのである。

シリアのイスラム教徒に対する戦争において、ヌサイリ圧政※訳註:アサド政権のこと)を長年にわたり支援し続けてきたロシアは、「2015年9月30日」、この戦争に直接的に、自らの航空兵力を参加させることを決定した。カフカスコーカサス地方)のイスラム教徒に対して仕掛けてきた、たびかさなる戦争攻撃だけでは物足りないかのごとく、それはロシアの無分別きわまりない決定であった。

f:id:ronahi:20160406042006j:plainISが発行する英語機関誌・ダービク第12号表紙。 パリ襲撃事件(2015/11/13)の5日後に発行された。表紙のJUST TERRORは、「テロあるのみ」と「正義のテロ」とJUSTに2重の意味を持たせている。このほか、別の特集ページでは、バングラデシュでの日本人殺害にも触れ、安倍首相を名指しで批判するなどしている。

 


シャルム・エル・シェイク国際空港での警備システムに侵入する方途を発見した我々は、イスラム国に敵対するアメリカ主導の西側同盟の国に属する航空機を墜落させることを決定するに至ったのち、標的はロシアの航空機へと変更された。 爆弾は機内に密かに持ち込まれ、219人のロシア人、ほか5名の十字軍構成員を死へと導いた。まさにロシアがあの無分別なる(シリア空爆の)決断を下してからわずか1か月のうちのことである。

その1年前、「2014年9月19日」、フランスはカリフ国に対する空爆を不遜にも開始した。ロシアのごとく思い上がりによって耳目を失っていたのだ。カリフの地からの地形的な遠さが、我らジハード戦士の正義の裁きから守り通せるなどと思い込んでいたのである。さらに預言者ムハンマド
(彼に平安あれ)への侮辱行為※訳註:シャルリ・エブドー誌のこと)に対する、我々の報復がいまもって十分には成し遂げられていないことも彼らは理解していないままである。

ゆえにして、イスラム国は不埒なる十字軍どもの本土での戦争を遂行するため、勇敢なる騎士を送り込み、パリとその住民を「衝撃と畏怖」の只中に叩き込んだ。
※訳註:「衝撃と畏怖」は2003年、アメリカのイラク攻撃の作戦名。圧倒的な軍事力を見せ付けて、敵を恐怖せしめ戦意喪失させて一気に制圧する意からつけられた)

何年にもわたりイスラム教徒たちの顔を足蹴にしてきたフランスに対し、ついに8人の騎士が決起しパリを踏みしだいたのだ。自動小銃と自爆ベルトのみで武装された8戦士の決起が、フランス全土に非常事態宣言が出されるまでに至らしめたのだ。

かくして、ジェット戦闘機の操縦席にいるかのごとく安全だと信じ込んでいる者どもをまさに狙って、報復は成し遂げられた。

信徒の指揮官 アブ・バクル・アル・フセイニ・アル・バグダディアッラーよ 彼をお守り給え)はこう仰せになった。 「アッラーの御助力をもって我々は報復を成し遂げる!報復を成し遂げる!たとえ時間がかかろうとも、報復を成し遂げる。ウンマイスラム共同体)にあらゆる敵対行為を加える輩には、さらなる大勢からなる反撃がなされるのだ。【何か横暴な仕打ちをされた場合には互いに助け励まし合う人びと】〔相談章(アッ・シューラー):第39節〕まもなくアラーのお認めのもと、ムスリムがあらゆる地で主人として尊厳に満ち、威風堂々と歩き回ることができるであろう。ムスリムに手出しをする輩には戒めが加えられ、その手は切り落とされるのだ。

ゆえに我々は今日、新たな時代を迎えたということを世界に知らしめよ。無知なる者のすべてが心せよ。眠りこけていた者よ、今、目を覚まさせてやろうぞ。衝撃と畏怖を加えられし者、おのれの立場をとくと思い知れ。今日、ムスリムは声を轟かせ、雷鳴のごとく響きわたる声明を抱き、重き戦闘靴をまとっている。その声明とは、テロとは何たるかを世界に聞かせ、思い知らしめるもの。そして戦闘靴とは国家主義の偶像を踏みしだき、民主主義の偶像を打ち壊し、真理の本質に叛く正体を暴くものである。」 〔バグダディ師:ラマダン月のウンマイスラム共同体)のジハード戦士とムスリムへのメッセージより〕

かくのごとくアッラーの御意のもと、カリフ国は、その信仰とその民に対するあらゆる攻撃に対しては、すぐにであろうと、あとになろうと、必ずや報復がなされるのだ。この天空と大地はアッラーのものなのだとうことを、愚かなる者どもに存分に思い知らしめよ。 【ムーサーはその民に言った。「アッラーの御助けを祈り、耐え忍べ。まことこの大地はアッラーのもの。かれは御好みになる下僕たちに、これを継がせられる。最後は(主に対し)義務を果たす者に、帰するのである。】〔高壁章(アル・アアラーフ):第128節〕

いやさて十字軍どもがイスラムムスリムへの敵対をいつ終わらせるというのか? カリフ国が厳然と存在していることをいつになれば分かるのか? あの者どもの哀れな動揺の解決の方途は、その閉ざされたすぐ目の前にあるのだということをいつになれば分かるのか? それが分かるようになるまで、奴らの心臓部のふところ深くに向けた正義のテロは続くことになるのだ。

ゆえにここにおいて、不信仰者と無神論者の敵どもの膝元に突撃し、殉教をなしたカリフ国の「孤高の」騎士たちを称賛することを我々は忘れえぬ。彼ら勇ましき戦士はジハードの戦闘の報せに接するだけでは心は満たされず、むしろベドウィン族の間に身をおいて、あなたがたの消息を尋ねる(立場になる)ことを願っている】ような者、そして【またもしかれらがあなたがたの中にいても、僅かの者のほかは戦わないだろう】〔部族連合章(アル・アハザーブ):第20節〕のごとくの者のもつ性癖から距離を置かんとした者たちであった。 彼らは(イスラム国への)移住の途上で、不信仰者が築いた障害を、敵に立ち向かうジハードを棄てる言い訳に使いはしなかった。彼らは年齢的な若さと訓練の満たなさを、口実に使おうなどとは思わぬ者たちであった。彼らはアッラーのご満悦をひたすら追い求め、高貴なる行ないをもって自らの魂を犠牲としたのだ。我らは彼らをかくのごとく捉え、アッラーこそがその判断をお下しになられる。

これら唯一神とジハードの勇敢なる騎士たちのなかには、「2015年10月2日」にオーストラリアの地で十字軍の者を1名を殺したる15歳のファルハッド・ハリル・ムハンマド・ジャバールもいた。
※訳註:シドニー近郊の警察本部前で警察職員1名がイラン生まれの15歳のクルド人少年に銃撃されて死亡した事件。少年は駆けつけた警官によって射殺された。)

これに続き、アメリカの十字軍を仕留めるため、ファイサル・ムハンマドが旗と短剣を持って「2015年11月4日」に決起し、その脆弱なる本土を奴らの薄汚い血で満たしたのだ。
※訳註:リフォルニア大学マーセッド校キャンパスで18歳の青年がハンティングナイフを振り回し4人を負傷させた事件。動機や事件の背景は不明。青年は大学警備の警官によって射殺された。)

それに先立つ「2015年10月10日」、16歳のイシャーク・カーシム・バドラーンが憎むべきユダヤ人国家で、刃物を手にその市民どもを突き刺し、阿鼻叫喚の巷へと至らしめた。
※訳註:エルサレムで16歳のパレスチナ人青年がナイフでユダヤ教徒男性らに切りつけた事件。青年は警官によって射殺。これに続いてパレスチナ人らによる刃物による殺傷事件があいつぎ、11日間でイスラエル人4人、パレスチナ人19人が死亡している。)

イシャークの決起ののち、「2015年10月18日」、ムハンナド・アル・アクァビが自らの武器をもって、高度に警備された鉄道駅において、ユダヤ軍の「エリート部隊」の兵士1名を殺害し、残る臆病な兵士どもを引き下がらせた。
※訳註:イスラエル南部のベエルシェバで21歳のベドウィン男性が銃を乱射し兵士1名が死亡、11名が負傷した事件。犯人は射殺されたが、現場にいたエリトリア難民が兵士の誤射で死亡している。このISの文章では鉄道駅となっているが、事件はバスターミナルで起きた。)

さらに「2015年11月9日」、自らの職を改悛したアンワル・アブ・ゼイドは十字軍アメリカ人とその不信仰者の同盟の輩を攻撃し、十字軍アメリカ人2名、不信仰者ヨルダン人2名、十字軍南アフリカ人1名を殺した。
※訳註:ヨルダンの警察施設内で29歳のヨルダン人警官が、アメリカ人2名を含む5人に発砲し殺害した事件。犯人はその場で射殺されている。動機は不明だが、犯人は過激主義とは関係なく、職場ストレスで鬱状態にあったとする報道もなされた。)

これらはいずれも、再興したカリフ制の道に従いし行ないである。敵にいかなる喜ぶ隙も与えず、自身の信仰とウンマイスラム共同体)のための復讐が敵の血で満たし尽くされるまで続くこととなろう。

イスラム国への)移住をなせない唯一神信仰者たちを、いま居るその地にてジハードを成し遂げるべく、自身の偽善を少なからしめる各々の支部として磨き上げさせるべく支えよ。 その者がたとえわずかひとりであろうとも、その意志を記録し、忠誠をあらたに表明させ、カリフ国の御旗を抱かせ、十字軍と邪教の徒、そしてその不信仰者の結託者を叩き討たせるのだ。 その者はこれを心に刻みたまえ。 【アッラーを信頼するものには、かれは万全であられる。】〔離婚章(アッ・タラーク):第3節〕

そして十字軍どもには、その武器庫がどれだけ豊富にあろうとも、イスラム国は永劫、残り続けるのだということを思い知らしめよ。 【言ってやるがいい。「あなたがたには、栄光ある2つのことの1つのほかに、(どんな運命が)期待できようか。だが私たちには、あなたがた(不信仰者)のために、アッラーがご自身で懲罰なされるか、または私たち(ムスリム)の手による、(処罰)を期待することができる。それであなたがたは待ちなさい。私たちもあなたがとともに待つものである。】〔悔悟章(アッ・タウバ):第52節〕

f:id:ronahi:20160406120518j:plainダービク誌巻頭言で掲載された、パリ襲撃事件の写真。事件現場を視察するオランド大統領を「臆病者」とし、「カリフ国(イスラム国)の襲撃戦敢行後の惨状」「フランスの悪夢は今始まったばかりだ」などとキャプションを添えている。(IS機関誌より)

f:id:ronahi:20160406120526j:plain2015年10月30日にエジプトで起きたロシア旅客機墜落事件では、子どもを含む乗員乗客224人船員が死亡。事件直後にISが犯行声明を出していたが、今回、初めて「爆破に使った爆弾」とする写真【右】がダービク誌上で公開された。(IS機関誌より)