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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画】イスラム国(IS)報道~実像をどうつかむか(1)◆「さらなる攻撃宣言」は地方県発

◆IS関連

フランス・パリ襲撃事件とロシア民間機の爆破。いずれも武装組織イスラム国(IS)が関与したと見られる大きな事件を受けて、世界は「ISとの全面戦争」を加速させようとしている。あふれる「IS情報」はどう読み解けばいいのか。

◆攻撃予告というより「挑発映像」
パリ襲撃事件直後、「ISが新たにテロを予告」とメディアがあいついで報じた。だが一連の「攻撃予告」は、いずれもIS支配下の地方広報局が制作した映像である。ISはこれまであったシリア・イラクの国境を解体した上、独自に行政区分し、「県」を置いた。各県にはメディア部門が置かれ、それが毎日いくつものビデオ・写真リポートを制作し、ウェブで公開する。

【動画】「パリ襲撃事件を称賛するイラク・サラハディンの戦闘員」(日本語訳)
パリ襲撃事件後にISが出した動画はいずれもIS統治下の地方県から出されている。これはサラハディン県広報局制作のもの。「ワシントンを必ずや攻撃してやる」と戦闘員が話す。メディアはパリに続く攻撃予告映像と大きく報じたが、実際は「挑発映像」に近い。「すでにワシントンに爆弾をセットしたぞ」として映像を出した印象は受けない。むしろこうした映像に感化される各国の過激な組織や個人が行動を起すほうが可能性として高い。ISはいまパリ事件を最大限に利用している。ISの宣伝手法に振り回されず、実像をつかむことが重要だ。(IS映像)

現在までのところパリ襲撃事件以降に出た「テロ警告動画」とされるものは、サラハディン県・キルクーク県、フラット県(いずれもイラク)、ホムス県(シリア)の名が付せられている。各地の戦闘員が、「アメリカよ、ワシントンでもやってやるからな」と動画でメッセージを話しているのを、「ISがワシントンで新たなテロを警告」と、まるで米国内での攻撃準備ができたかのように大仰に報じるのは、すこし危うい。ISはいま、自分たちがいかに強大で、恐怖の存在かを世界にアピールしようとしている。ISを決して過小評価すべきでないが、過大評価をしてしまうとかえってその術中にはまることになる。ISが狙うのは各国間の軍事的緊張を高め大国を衝突させ、戦争に引きずり込むことでもある。それを見極めながら各国がIS対策で連携すべきだろう。

9・11事件のとき、悲しみとパニック、怒りと報復感情は、米軍のアフガニスタン空爆を後押しする空気を作り出した。その時の戦争-「テロとの戦い」は、いまも続き、アメリカ建国史上最も長い戦争となっている。そして今度はその戦争に、日本も巻き込まれることになりつつある。こうしたときメディアは冷静に情報を取り扱い、検証し、多角的な視点から報じることが求められる。(つづく 次へ>>)

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ISがシリア・イラクの支配地域で、独自に行政区分をしている地域の名称。フラット県、ジャジーラ県など、制圧後に新たに創設したり、名称を変えた県もある。その各県にメディア部門を置き、毎日、戦闘映像や統治下の市民生活などを伝える動画リポートを公開している。地図には右下のイラク・ジャヌーブやシリア沿岸部のようにIS支配の及んでいない地域も含まれている。リビア、エジプト、イエメン、アフガニスタン地域(ホラサン)、西アフリカなどISが登場する地域は広がりつつある。(IS映像)

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パリ襲撃事件後に出たサラハディン県発の映像。これだけも様々な情報がある。右上のロゴはサラハディン県の地方メディア部門。県によりロゴが異なる。外国人人質殺害などはフルカーンというISメディア広報部門のロゴになり、重要視される。このロゴをきちんと見ることもひとつのカギである。右腕時計は預言者ムハンマドが右側を好んだとか、左腕時計主流の欧米社会への反発の意志表明など諸説あり、思想的に強固な戦闘員ほど右腕時計が多い。自爆ベルトは「いつでも殉教できる覚悟」を示すアイテムとして、とくに過激な外国人戦闘員に好まれる。手榴弾と同じようにリング状のピンを抜くと爆発する。テロップに示された組織名からすると、この戦闘員はアルジェリア人と思われる。(IS映像)

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これは先月公開されたディジラ県発の映像。ディジラはチグリスを指すので後ろの川はチグリス川と思われる。子供が腰に自爆ベルトをして、「ローマの犬、オバマへのメッセージ」とするスピーチをおこなっている。ISはこれまでにも何度もこの手の映像は出してきた。各県のメディア広報局がそれぞれ制作し、ほぼ毎日のようにウェブ上にアップされる。ヨルダン人パイロット焼殺事件など大きな動きがあると、各県で同じテーマで地元戦闘員を使って映像メッセージを作り、公開する。県のロゴを冠した動画のほかに、短い戦闘速報や、写真リポートが多数公開される。(IS映像)

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