イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS動画+写真21枚】イスラム国(IS)戦術分析(4)◆自爆戦闘員の心理とは

◆聖戦と殉教の死生観 【動画+写真21枚】
毎日、繰り返されるイスラム国(IS)の自爆攻撃。自爆突撃におもむく戦闘員の死生感とは何なのか。イスラムでは自殺は許されてはいない。しかしISは自爆を「ジハード(聖戦)の中での崇高な死」と位置づけ、爆弾車両で突撃する戦闘員を「殉教戦士」と称える。
「ジハードこそ信仰の最も高み」「アッラーのために命を捧げる」と信じて彼らは自爆車両に乗り込む。「殉教の誉れを達成して来い」と命令され、拒否できぬまま死に赴く者もいるだろう。ただ自爆に失敗し、自決できずに捕まり、のちに改悛した戦闘員も少なからずいる。人間を次々に自爆へと駆り立てる狂気のなかに、わずかながら人間らしさを見るとすればここにある気がする。今回は、IS自爆戦闘員が出撃前に遺すメッセージを短く抜き出してみた。

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【IS動画】IS自爆殉教戦士の最後の言葉 (転載禁止)
自爆戦闘員のメッセージを3つ抜き出してみた。①は、ドイツ・フランクフルトで育った27歳のモロッコ系移民で、2013年にシリア入りしたと報じられている青年。彼らの言葉に共通するのは「自爆は殉教であり、天国への近道」としていることだ。ISは「現世はジハードのために棄て、殉教して名誉を授かった来世にこそ本当の意味がある」と戦闘員に呼びかけてきた。アッラーの名を持ち出し自爆の巻き添えにされる住民、子どもはたまったものではない。

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イラクで自爆攻撃が日常化し始めたのは10年ほど前。それまでは、「戦闘での『名誉の戦死』はあっても、自爆で殉教という思考はイラク人にはない」と皆が言っていた。普通のイラク人にとっては、自爆攻撃とはパレスチナなど国外での縁遠い出来事だったという。かつてフセイン政権に忠誠を誓う部隊「サダム殉教者団」というのがあったが、フェダーイン(自己犠牲)という言葉が使われていた。米軍がバグダッドで占領統治を始めたとき、自爆ベルトや車両で突撃するのは外国人戦闘員が多かった。いまではイラク人が自爆戦士になるのがあたりまえのようになってしまった。ISは自爆戦士にイスティシャハディ(殉教志願者)という言葉を使う。写真はサマラのイラク軍基地で自爆したイラク人のIS戦闘員。胸元のケーブルが起爆ピンと思われる。(イラク・2015年・IS映像)

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自爆出撃の戦闘員の多くは、静かな口調でメッセージを遺すが、この白い自爆ベストを着ている少年は異例だった。突然、泣き出すのだ。それでも「道を誤ったシーア派を殺し、そして我々も死んで殉教する」と続ける。自暴自棄ではなく、気持ちが高ぶったからだろうが、涙を浮かべて声を振り絞る少年の姿が悲しかった。(イラク・2014年・IS映像)

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イラクでもっとも自爆攻撃が繰り前されている町のひとつがラマディだ。日本の援助で造られたというこの橋は「日本橋」(ジスル・ヤバニ)の名がついている。ラマディとファルージャを結ぶ地域に位置する。この橋をめぐって凄まじい攻防戦が戦われている。この春だけで10回以上自爆攻撃が敢行され、イラクの「遠すぎた日本橋」とも言えるような激戦となっている。(イラク・2015年・IS映像)

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イラク軍が「日本橋」を失うと、ラマディ・ファルージャの戦局に大きく影響する。このためイラク軍第1師団は橋とその周辺にM1エイブラムス戦車や装甲車を配置して防衛。それでもISは連続自爆攻撃を繰り返した。戦闘ではエイブラムス戦車も破壊されている。(イラク・2015年・IS映像)

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橋を守るイラク軍拠点に突撃した自爆車両のひとつ。フロントは鉄板で装甲化され、防弾ガラスがはめられている。(イラク・2015年・IS映像)

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ポリ容器が爆弾で、ケーブルは運転席の起爆スイッチにつながっている。(イラク・2015年・IS映像)

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ISは、イラク軍から奪ったポーランド製装甲車Dzikも自爆車両にして橋の攻略戦に使用。(イラク・2015年・IS映像)

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激戦の末、3月末に「日本橋」はついにISに陥落。(イラク・2015年・IS映像)

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後ろにあるのが「日本橋」。ISは「日本橋を完全制圧」と表現。その後、イラク軍とシーア派民兵部隊が奪還戦を敢行し、夏、日本橋をISから取り戻したといわれる。だが一進一退の攻防は続いている。(イラク・2015年・IS映像)

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同じ3月、「日本橋」戦闘と連携して、ラマディでは連続自爆攻撃が敢行された。この時の連続自爆にはチュニジア人、ウズベク人、ベルギー人、エジプト人、オーストラリア人など各国からの外国人戦闘員が加わっている。写真の装甲ブルドーザー(ホイールローダー)で自爆したのはカフカス人とあり、ロシアからの戦闘員と思われる。ショベル部分(バケット)を鉄板で覆っていることから、この中に爆弾が積まれていると見られる。(イラク・2015年・IS映像)

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ラマディで自爆突撃し死亡したオーストラリア人は、ジェイク・ビラルディという18歳の青年。イスラム系移民ではなく、いわゆる「青い目の白人」の未成年による自爆である。学校でいじめ体験をし、癌で母を亡くしてから過激主義に傾倒するようになり、シリア入りしてISに加わったと報じられている。(イラク・2015年・IS映像)

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少年ジェイク・ビラルディはオーストラリアでネットを通してISを知ったといわれる。彼と同じようにネット宣伝映像に感化された青年が世界中からISに参加している。ISの恐怖支配や住民殺戮の実態と知ったときには逃れることもできず、自爆しろ、と命令されれば拒否もできない。(IS戦闘員撮影映像)

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今年、バグダッド北西部で、イラク軍基地に自爆突撃をして死んだドイツ人戦闘員(中央)。IS機関誌ダービクは、このドイツ人戦闘員が数年前までドイツ連邦軍兵士としてアフガニスタンに派兵されていた、としている。自爆用の装甲車 M113の前に立ち、ドイツ語でメッセージを遺している。(イラク・2015年・IS映像)

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その自爆したドイツ人は双子の兄弟だった。ふたりとも戦士として殉教、とIS機関誌は記述している。ドイツ内務省はこれまでに600人以上のドイツ国籍保持者がシリア・イラク入りしたと発表している。(イラク・2015年・IS映像)

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シリア・コバニで自爆に向かうIS戦闘員。イラク軍から奪った米国製戦闘車ハンヴィーをシリアに持ってきて自爆に使っている。車内に積まれた赤いキャップのポリタンクが爆弾。(シリア・2015年・IS映像)

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コバニ近郊の村のクルド組織・人民防衛隊(YPG)の陣地が標的となっている。Google earth衛星写真や、ドローンで撮影した偵察映像で突入経路を決めている。(シリア・2015年・IS映像)

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昨年11月のコバニ市内での自爆攻撃による爆発。コバニはクルドYPGが多数の戦死者を出しながらも徹底抗戦したため、ISもYPG拠点に繰り返し自爆攻撃を仕掛けた。(シリア・2015年・IS映像)

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昨年12月に取材したコバニの自爆現場。大量の爆薬を積んだ車両が突入し、十数名が死亡した。爆発から2週間後だったが、地面は大きくえぐられ、左の建物は倒壊していた。(シリア・コバニ 2014年12月・撮影:坂本)

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2005年にイラク国内の治安施設で取材したリビア人「殉教志願者」の戦闘員。自爆で殉教することを目的にイラク入りし、治安当局に拘束された。「日本にはカミカゼの思想があるではないか。崇高な使命に命を捧げることはどこの世界でもあることだ」と話した。カミカゼという言葉が出たことは驚きだった。国家どうしの戦争でのカミカゼという戦術と、住民を巻き込む自爆攻撃は同じか、と聞くと「これはジハードという戦争。むしろ国どうしの戦争よりも高みにある」と答えた。終始、落ち着いた表情で信仰のために殉じることの意味を語り続けた。(イラク 2005年)

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これは2005年のイラク・アルビルでの自爆直後の現場。アンサール・スンナ軍が声明を出している。地面は血だらけで、一帯に血なまぐさい匂いが漂い、人びとの泣き叫ぶ声が響いていた。(イラク・2005年・撮影:坂本)

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自爆攻撃に巻き込まれ、病院に搬送されてきた子ども。武装組織は、いちど自爆して救護の人が集まったところに、さらに2人めが自爆を仕掛けるなど戦術も巧妙化させている。こんな残酷な行為と宗教と何の関係があるのか、と住民たちは言う。(イラク・2005年・撮影:玉本)

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