イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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【IS動画+写真20枚】イスラム国(IS)戦術分析(3)◆基地奇襲の自爆突撃

IS◆自爆突入で駐屯地制圧【動画+写真20枚】
今回は基地(駐屯地)への自爆突撃。町の外にあるイラク軍駐屯地が標的となっている。この駐屯地は高い防護壁で囲まれ、M1エイブラムス戦車も見える。それでも装甲車に大量の爆薬を積んで突入されれば、防御は難しい。

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【IS動画】イラク軍駐屯地への自爆奇襲戦 (転載禁止) 一部死体の映像も含まれます
イスラム国(IS)の自爆車両はM113装甲車1台。そのあとに戦闘員を乗せたM113装甲車数台が続く。かなり速度でいくつもの盛り土を難なく越えて突入している。プロパンガンダ映像ということに留意しても、自爆奇襲を有効に使い、攻略に成功したことがわかる。
(1) IS部隊が迫撃砲や機関砲で駐屯地攻撃 
(2) 自爆用M113装甲車が駐屯地の防護壁に突入し自爆
(3) IS部隊を乗せたM113が進撃
(4) 駐屯地を制圧、イラク兵を殺害し武器弾薬を強奪
この戦闘は先月、首都バグダッドから約60キロのイラクファルージャ近郊でのもの。ファルージャはすでにISが制圧し、周辺地域でイラク軍と攻防戦が続く。「カリフ国」というのは「バグダディ師を首長カリフとするイスラム国」の意味。「ラフィダ」「サファウィ」とはIS用語で、シーア派を侮蔑的に呼ぶときに使う。「イラク政府も軍もシーア派が支配している」とISはみなしている。

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これはことし2月、イラク東部ディアラでのイラク軍駐屯地への奇襲攻撃。ダムを警備するイラク軍とシーア民兵部隊拠点が標的となっている。ISはドローンを偵察に使い、かなりの高度まで飛ばしている。周囲は起伏のある地形で、右下に延びる道路の警備さえ強化すれば、トラックによる自爆攻撃は難しい。この作戦では、道路からではなく丘から攻め込んで自爆する戦術がとられている。テロップには「イスラム国軍・無人機映像」とある。(イラク・ディアラ 2015年・IS映像)

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自爆突撃は映像に映るだけで、3回連続で敢行されている。ここではロシア製の戦闘車MT-LBが使われている。手前の戦闘員の胸の白いカードは無線機の周波数リストで、今年になってから各戦線で広く使われるようになった。これをぶら下げているのは、たいてい分隊長や小隊長など指揮系統にいる戦闘員とみていい。(同 IS映像)

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自爆に向かうシリア人戦闘員。映像ではメッセージを残している。「息子がいるが、天国で見守るよ。不信仰者どもにアッラーのお力が示されることを」。(同 IS映像)

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車内は爆薬が詰まったドラム缶とポリタンクが満載されている。青いケーブルが操縦席にのび、戦闘員が起爆スイッチを押すと爆発する。(同 IS映像)

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仲間たちが抱擁し、「殉教戦士の出撃」を祝福する。(同 IS映像)

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自爆突入車体の白いスプレー文字は「お前らのイカした兵器が、お前たち自身に向かっていく」。(同 IS映像)

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この駐屯地襲撃ではまず装甲ブルドーザー(ホイールローダー)が、道を切り開いて丘を登っていく。この作戦ではブルドーザーは自爆しないが、最初に突入するので、鉄板で装甲化し、対戦車砲よけの鉄枠で車体を囲んでいる。(同 IS映像)

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ブルドーザーが開いた道に、自爆車両が続く。(同 IS映像)

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キャタピラ戦闘車は起伏のある丘をたやすく走り、フェンスを倒して突入。残りの部隊は駐屯地に激しい砲撃を加える。左にブルドーザーが見える。(同 IS映像)

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下が自爆車両。上のイラク軍車両ハンヴィーはいっせいに逃げ出す。ここまで近づかれたら爆発に巻き込まれるのでいったん逃げるしかない。(同 IS映像)

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イラク軍車両を追いかけながらあいついで自爆。映像には3回自爆が映っている。(同 IS映像)

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IS部隊が駐屯地に突入。すでにイラク軍兵士は死亡したか、逃走している。(同 IS映像)

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イラク軍駐屯地にあった車両。「連邦のラコタ」に見えるが、おそらくイラン製機動車サフィル。米軍や自衛隊も使っているM40 106ミリタイプの無反動砲を搭載しているようだ。イラクでは民兵部隊がこの機動車をよく使っている。「イスラム国の戦利品にした」とある。(同 IS映像)

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イラク軍の戦闘車M113。米国製の装甲兵員輸送車だ。これも「戦利品」に。(同 IS映像)

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RPGロケット砲は弾頭が装填されているが、自爆強襲に反撃できなかったようだ。(同 IS映像)

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負傷し、ISに拘束された兵士。映像の最後には兵士の顔とともに「乞うご期待」とテロップが入っている。(同 IS映像)

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のちにISが公開した別の映像。上の作戦で拘束した兵士を斬首して殺害した。(同 IS映像)

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これは以前、イラク軍基地を取材したときのもの。コンクリート防護壁に加え、「ヘスコ防壁」という防護壁が使われる。かつては土のうをひとつずつ積んで造った遮蔽壁も、いまでは折りたたみ式の大きなフェンス枠にシートを張ったものにパワーショベルで大量の砂を詰め込んだヘスコ防壁にとって代わられつつある。設営も早く兵士の労力も少なくてすむこともあり、米軍がよく使う。(バグダッド・2007年・撮影:坂本)

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こちらはTウォールと呼ばれるコンクリート防護壁。住宅地にあるイラク軍の検問所では、車両を防護壁で挟み込んで検問していた。自爆されても被害を最小限に食い止め、また、兵士が狙撃で狙われるのを防ぐためだ。イラクで防壁製造会社に値段を聞いたところ、この高さ(約3メートル)タイプだと、1基15~20万円ほどだったと思う。(バグダッド・2007年・撮影:坂本)

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これはけっこう古い写真で、2004年、バグダッド日本大使館前で撮影。コンクリート壁を交互に立てて、車が直進できないようにしてあった。手前の車止めは、日本の国会議事堂前などで警察が使っているのと同じもののようだ。おそらく外務省が日本からイラクに持ち込んだものと思われる。自爆がそれほど頻発していなかった当時は有効だったかもしれない。(バグダッド・2004年・撮影:坂本)

今回、動画ではあえて、ISに殺害されたイラク兵の死体も入れた。やはり戦場では「殺すか、殺されるか」が否応なしに迫られる。 近い将来、自衛隊も戦闘地域に派遣されることになるだろう。国会の安保法制の採決では、誰が殴った、セクハラしたと騒いだり、焼香パフォーマンスしたりと、政治家もメディアも国会をエンターテイメントのようにしてしまった。だが、自衛隊員の過酷な現場、そして日本国民が向き合う「戦争」は、これから始まる。戦闘現場では何が起きるのか、どんな装備や準備が必要なのか、地元住民を守り、自衛官のリスクも減らすにはどうするのか。こうした戦場でのリアリティーを含めた議論をこそ、きちんとすべきではなかったか。
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