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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画+写真18枚】イスラム国(IS)戦術分析(2)◆市街地の自爆突撃と自爆車両製造工場

◆IS関連 ◆IS戦術分析

◆自爆車両量産し前線に送り込む【動画+写真18枚】
前回記事
に続けてだが、自衛隊がただちにイスラム国(IS)と交戦することはないだろう。だがPKOのような非戦闘地域を前提とした枠組みであっても、ISの活動する周辺国や近海に出動することはありうる。あらためてISの自爆戦術を知っておきたい。

【動画】イラク軍拠点に対する3連続自爆攻撃(転載禁止)
これは今年3月、イラク・アンバル県ラマディの市街地での自爆攻撃の映像。イラク軍と民兵隊の拠点に3回連続自爆攻撃が加えられている。いわゆる「ISジェットストリーム・アタック」である。
(1) 小型トラックが防護壁で自爆
(2) 装甲ブルドーザーが大型防護壁を突破してビルで自爆
(3) 装甲消防車がブルドーザーの開けた道に突入、ビルで自爆。ビルは崩壊
イラク兵は左からロケット砲で応戦するものの阻止できないのがわかる。ラマディでは自爆があいつぎ、映像の2か月後、町は陥落しISに制圧された。この動画の説明は以下の写真参照。

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イラク民兵隊拠点への第1波攻撃の小型トラック。荷台に爆弾が積んであるのがわかる。防護壁の上の布の幕は、狙撃で狙われるのを防ぐためイラク軍が張ったもの。(イラク・アンバル 2015年・IS映像)

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第2波のブルドーザーの自爆戦闘員はシリア人とある。「じゃあ行ってきます」とばかりに手を振っているのがもの悲しい。(同 IS映像)

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装甲ブルドーザーは防護壁を倒し、対戦車ロケット砲攻撃を受けても走り続け、後続の装甲消防車のために侵入路をつくり、ビルに到達して自爆。(同 IS映像)

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ブルドーザーに続いて第3波の消防車が突撃。自爆したのはヨルダン人戦闘員。(同 IS映像)

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ビルは完全に崩壊した。消防車の爆発がもっとも大きく、相当の爆薬を積んでいたと見られる。この作戦敢行日は今年の3月14日とある。ラマディでは自爆攻撃があいつぎ、米英豪の空軍は地上のイラク軍を支援してIS拠点に空爆をおこなったが、この映像の2か月後、町はISに制圧された。(同 IS映像)

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これはISが6月に公開したイラクファルージャの自爆車両製造工場。イラク・シリアの各地にこうした秘密工場がある。(イラクファルージャ 2015年・IS映像)

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こうした工場はまっさきに空爆の標的になるため、情報漏れにも警戒している。(同 IS映像) 

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鋼板で車体を覆ったのちに、鉄枠のフェンスを取り付ける。対戦車ロケット砲の直撃を減衰させるためにつけられている。米軍の装輪装甲車ストライカーと同じ仕組みといえる。タイヤは撃ち抜かれないようにとくに念入りに囲む。(同 IS映像)

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完成した自爆車両。突入時に狙われるフロント部分の装甲がすさまじい。尖塔形にしたフェンスは対戦車砲の直撃を少しでもかわす狙いがあると思われる。正面の鋼板は15センチほどの隙間をつけて2重になっている。ハンヴィーなどの戦闘車からとりはずした防弾ガラスがつけられているようだ。(同 IS映像)

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背後に完成した車両数台が確認できる。自爆車両の量産化がはかられていることがわかる。(同 IS映像)

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有志連合に参加するオーストラリア空軍が公開した映像。「今年7月、イラク・モスルのIS爆弾車両製造工場を戦闘機 F/A-18Aホーネットで空爆」との説明がつけられている。工場を特定したということは、地上に地元情報要員がいるということである。ただ地元協力者が正確な情報を送ってくるという保証はない。建物を誤認したり、情報が古くすでに軍事拠点ではなく民間人がいる建物となっていた場合、あるいはISがわざと民間人を軍事拠点付近に住まわせていると、誤爆が起きる。空爆にはこうした不安定要素が必ずつきまとう。一方、ISはスパイ狩りを徹底させていて、摘発すると「十字軍のスパイ」として斬首するなど、残酷な手法で処刑している。(オーストラリア国防省公表映像)

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もうここまでくると、どうしようもない自爆ダンプ。前に立つ戦闘員が自爆搭乗員。ホムス南東の町でのシリア政府軍への攻撃に使われた。鉱山や採石場で使われる超大型ダンプを改造したようだ。(シリア 2015年・IS映像)

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爆弾8トン搭載とある。マッドマックスや北斗の拳のような世界が、いま現実にイラク・シリアに存在し、それがエジプト、リビア、イエメン、アフガン、ナイジェリアと広がろうとしている。いちばん苦しんでいるのは住民である。イスラム教徒の住民はだれもこんな過激主義を支持していないし、自分たちが生まれ育った土地や隣人関係が引き裂かれていくことに胸を痛めている。(同 IS映像)

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自爆用の小型トラックの荷台に積まれている青いポリタンクが爆弾。運転席は防弾ガラスがはめ込まれている。(イラク・アンバル 2015年・IS映像)

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イラク軍基地に自爆を仕掛けるシリア人戦闘員。腰から延びる青いケーブルは、自決用に体に巻いた自爆ベルトの起爆スイッチと思われる。下の写真が、乗り込んだ自爆車両。(イラク・サラハディン 2015年・IS映像)

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装甲を黒くぺイントしている。車体の白いロゴは、ISの旗のものではなく、部隊名が書いてあると思われる。(同 IS映像)

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イラク軍基地に突入し、自爆。ISはイラク軍とは呼ばず、ラフィダ軍やサファウィ軍と呼ぶ。ラフィダはスンニ過激派がシーア派を侮蔑的に呼ぶ呼称。サファウィとはサファビー朝ペルシアのことで、イランを指す。イランのシーア派イラク・シーア政権を操っているとし、「イラク・シリアでの戦闘はスンニによるシーア派絶滅戦争であると同時に、キリスト教十字軍同盟諸国に対する聖戦」などとISは位置づけている。(同 IS映像)

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IS映像ばかり使いたくないのですこし古いですが取材写真も入れておきます。これはバグダッドの住宅地にあるイラク軍基地。このときはスンニ派シーア派双方の武装組織が住宅地のなかから狙撃やロケット砲で攻撃を加えてきた。機関銃を向ける先には子どもと女性がいる。「武装組織のやつらは、こちらが住民に向けて容易に発砲できないのをわかってて住宅地のあいだから狙ってくる」とイラク兵は話した。もし自衛隊が戦闘地域に派遣された場合、こうした難しい選択も迫られることになる。(2007年・バグダッド 撮影:坂本)

ISが活動しそうな周辺地域にもし自衛隊が出動するにしても、周囲に何もない場所に設営する基地と、市街地に作られた施設を防御するのは方法も異なる。
市街地での施設防御は在外公館などの施設も含むのだが、自爆攻撃から守る手立ては防護壁しかない。不審車両と判断しても、近辺に住宅地があれば対戦車砲も容易には使えない。もし誤射で近隣住民を殺してしまったら、住民は「日本が殺した」となる。

安保法制反対派は「徴兵制がくる」などと「自国民視点」で反論を展開したが、相手国の市民を殺したらどう責任をとるのか、ということがどれだけ語られただろう。自衛隊を海外に送ると決めたのは国民の負託を受けた国会なのに、住民を誤射や誤爆で殺せばその責任を自衛隊員に押し付けるのではあまりに勝手すぎる。安保法制で日本が向き合うべきは、いつかやってくるこうした事態ではないか。(つづく)

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