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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【写真24枚】イスラム国(IS)戦術分析(1)◆自爆車両突撃

◆IS関連 ◆IS戦術分析

◆自爆突撃が作戦の一部に【写真24枚】
日本の防衛政策に大きな転換点をもたらすことになる安保法制。これを「平和貢献」とするか、「戦争参加」ととらえるか、さまざまな議論はあってしかるべきだ。だが、今後、「駆けつけ警護」などで自衛隊が出動する現場で、隊員がどのような状況に向き合うことになるのか、冷静な分析や想定がどれほどなされているだろうか。 武装組織イスラム国(IS)のいるシリアやイラクの戦闘地域に自衛隊がただちに派遣されることはないだろうが、駆けつけ警護などでその周辺国や中東近辺の海域に部隊が送られる状況は、さほど遠くない時期にやってくる。このシリーズでは軍事的な側面から、ISがどのような戦術を使い、またどんな武器を有しているのかを分析する。

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ISがもっとも得意とし、同時にもっとも敵を苦しめている戦術が、自爆車両による突撃だ。この2年でISが公式に公開した自爆が映る映像だけで100本以上。1回の攻撃で車両5台が連続自爆する例もあり、「追い込まれて自決する自爆」ではなく、明確に作戦上の主要な手段として組み込まれている。写真はイラク北部のクルド・ペシュメルガ部隊基地に突入する自爆トラック。車体は鉄板で覆っている。(イラク・2015年・IS映像)

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イラク軍には米軍の軍事顧問が派遣され、基地防衛も強化された。自爆突入対策のマニュアルができつつある。一方、ISも自爆突入車両の装甲強化など「改良」を加えている。前面だけでなく車両全体が鋼板とフェンスですっぽり覆われるトラックが増えた。フェンスは対戦車砲の威力を減衰させるためのもの。これは大型ダンプだが、その面影もないほど装甲化。戦闘員が旗を振って出撃を見送る。(イラク・2015年・IS映像)

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シリア・ホムス南東の町での自爆作戦に使われた大型トラック。荷台には爆弾が満載されている。赤いケーブルが運転席の起爆スイッチにつながっている。積み込む爆弾は標的の規模によって異なるが、5トン爆弾を積み込んでの突入だと、空爆なみの爆発で基地を吹き飛ばすほどの威力がある。波状攻撃の場合は、1回目の自爆で敵陣の防護壁を吹き飛ばし、続けて2波、3波で突入することもある。(シリア・2015年・IS映像)

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爆弾満載のトラックに乗り込む戦闘員。この作戦では2回の連続自爆攻撃をかけている。指一本を立てているのは、「神は唯一、アッラーのみ」のこと。ISの旗に記された文字の意味でもある。(シリア・2015年・IS映像)

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日本の中古トラックが自爆に使われた例。車体には、西日本にある生コン会社の名前が残ったままだ。麦わらで荷台の爆弾を隠し、起爆ケーブルが運転席に延びている。自爆に向かう男は「アブ・バクル・マグリビ」とあり、名前から判断するとモロッコからイラク入りした戦闘員と思われる。標的はイラク警察の建物。トラックは激しい銃撃を受けながらも、警察署に突入し、自爆。2013年頃は、まだ突撃車両の装甲化がそれほどはかられていなかった。(イラク・2013年・IS映像)

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日本の中古トラックの自爆車両が警察署に炸裂。(同・IS映像)

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警察署への自爆攻撃敢行に続けて、写真手前にいるIS後続部隊が突撃する。(同・IS映像)

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これはIS戦闘員がイラク警察官の制服を着て、偽装警察車両で突入した例。荷台には赤白黒のイラク国旗を模したペイントまで施している。車両は警察の検問に近づき爆発。周到に作戦を準備したことをうかがわせる。イラク軍に偽装することもあるが、警察のほうが内通者が多く、制服なども入手しやすい。消防車、食品納入業者のトラックを使うこともある。(イラク・2015年・IS映像)

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自爆突入の際に対戦車砲などで阻止されないように、車体に鉄板とフェンスを溶接し、装甲化を図ったトラック。前部の車輪は撃ち抜かれないよう、とくに大きく覆う。フロントガラスも小さなのぞき窓だけを残して鉄板で取り囲む。イラク軍から奪った米国製軍用車両ハンヴィーから取り外した防弾ガラスを取り付けたものもある。(イラク・2015年・IS映像)

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ISがイラク軍から奪った戦闘車両ハンヴィーも自爆攻撃に使われる。防弾フロントガラスにさらに鉄板をかぶせている。ハンヴィーはアメリカがイラク軍に納入したもの。防弾装甲強化型ハンヴィー(UAH)の価格は日本円で1台2000万円前後するといわれるが、ISは惜しげもなく自爆車両として活用。装甲化されたハンヴィーの突撃は成功率が高いという。(イラク・2015年・IS映像)

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これがハンヴィーに積まれた爆弾。ポリ容器に火薬が入っていてケーブルで運転席の起爆スイッチに連結されている。(イラク・2015年・IS映像)

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ハンヴィーのトランクにドラム缶の爆弾を積んだもの。これもケーブルが見える。(イラク・2015年・IS映像)

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【写真左】サイドブレーキに巻きつけられたボタン型の起爆スイッチ。【写真右】榴弾の起爆ピンにケーブルをつなげたもの。こちらのほうが多く使われる。不発に備えて、2重に起爆スイッチをつなげている場合や、運転者が死亡しても遠隔操作で起爆できる車両もある。(イラク・2014 - 2015年・IS映像)

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イラク軍から奪った装甲兵員輸送車で自爆突撃の準備をする。車内の青いポリタンクが爆弾。車両は米国製M113。前部にRPG対戦車ロケット砲を防ぐためのフェンスを取り付けてある。ロケット砲を防ぐといっても、砲弾をフェンス部分で炸裂させて車体への直撃を減衰させる程度。だが場合によってはRPG弾の貫通を防ぐこともできるという。イラク軍は基地周囲を土堀や塹壕で取り囲んで何重もの防護壁を立て要塞化しているが、キャタピラ車両は土堀や盛り土を越えて、防護壁を倒して突入してくる。たとえ阻止できてもその場で爆発し、爆風で反撃力を奪われたところにIS部隊が突撃する。運よく爆発させずに仕留めても、自爆戦闘員がいる車体のハッチを開けて起爆装置を解体して爆発物を無力化するのは容易ではない。(イラク・2015年・IS映像)

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標的と突入路の選定は、Google earth の衛星地図(左)と、ISが飛ばしたドローン映像(右)が使われる。Google earth は軍事施設にズームアップできないようになっている場所が多いうえ、最新の防護壁の配置や砲台、戦車の布陣が確認できない。そのためISは独自にドローンを飛ばして確認する。(シリア・2014年・IS映像)【ISはどのようにドローンを使っているか】

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車両2台が連続して自爆突撃する映像。後ろの車はイラク警察のパトカーに鉄板を貼って自爆車両に改造している。(イラク・2015年・IS映像)

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ドアの分厚さがすさまじい。運転席の周りを鉄板で覆い、途中で阻止されても拘束される前に自決できるように、ドアと車体を鎖かワイヤで結んで鍵をかけ外から開けられないようになっているようだ。(イラク・2015年・IS映像)

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イラク軍基地に突入した自爆が成功し、黒い煙が立ち上る。仲間の戦闘員は歓喜し、地面にひれ伏して、アッラーに感謝を捧げる者も。(イラク・2015年・IS映像)

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イラク軍がIS拠点から押収した自爆車両。フロント部分が念入りに装甲化されていて、車輪部分も鉄板で覆っている。(イラク・2015年・イラク軍映像)

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イラク軍陣地に突入する連続自爆攻撃の第一突入要員となった戦闘員。ダンプカー全体が装甲化されドアさえも埋められている。自衛隊がISと直接交戦することはなくても、派遣される周辺地域でこうした攻撃に晒される可能性はある。死ぬことで「天国に行ける」と思って突っ込んでくる人間だ。恐怖心克服のための興奮剤を服用している例もある。「止まれ!」といって止まるわけもなく、威嚇射撃も意味はない。連続して突撃して来る車両にどう対処するか。(イラク・IS映像)

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シリア政府軍がISの自爆車両を阻止した例。4段重ねの爆弾缶が積まれている。缶1つあたり50~60kg前後と言われるので、相当の爆発力になるだろう。(シリア・2015年・シリア政府軍映像)

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これはISのリビア・バルカ支部部隊が使用した自爆トラック。荷台の爆弾の上に家財道具を載せて農民のトラックに偽装して至近距離まで運転し、自爆に成功している。明らかな装甲自爆車両なら突入時に対戦車砲で阻止できても、地元業者や農民を装って基地や施設に近づかれれば、躊躇せずに応戦するのは難しいだろう。(リビア・2015年・IS映像)

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もはや何だかわからない自爆突撃車両。確実に「進化」を遂げている。今年に入って目立つようになった最強の装甲車両だ。大型ダンプを改造したものと思われる。車体を鋼板で覆い、突入時のロケット砲直撃回避のためのフェンス(スラットアーマー)がフロント部分を覆う。1回きりの使用なのにこれほど手の込んだ車両を製造するところに執念が見て取れる。(シリア・2015年・IS映像)

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バグダッドイラク軍取材中に、近くで自爆車両が爆発したことがある。広角レンズなので遠くに見えるが、実際はもっと近い。爆発音とともに地面や電線が揺れた。イラク軍基地の屋上から撮影する。このとき米軍の少佐が右横にいて、立ちのぼる黒煙を一緒に眺めていたのだが、「こういうときは第1波に続く連続自爆や砲撃をまず警戒する」と教えてくれた。シーア派スンニ派の混住地区で、この自爆攻撃はスンニ派武装組織「イラクの聖戦アルカイダ」によるものと見られる。この組織がのちにISとなる。(イラクバグダッド・2007年)

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