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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【動画】歌から読み解くシリア・イラクでの戦争(8) イスラム国(IS) ウイグル人に接近「家族移住」促す

◆IS関連 ◆歌から読み解く戦争

ウイグル語の歌とメッセージで呼びかけ
武装組織イスラム国(IS)には、アジア各地からの戦闘員も加わっている。そこには中国からのウイグル人もいることは、写真特集「ISアジア人戦闘員」で紹介した。ことしに入るとウイグル人の子どもが登場する映像まで公開されている。一連の映像から判断すると、中国・新疆から第三国を経由してシリア入りしたとみられる。ISは、戦闘員志願の男性だけでなく、女性や子どもも含む家族ごと支配地域に受け入れ、「集団移住」をさせるシステムを作ろうとしているようだ。

〔動画〕「来たれ 友よ」(ウイグル語)【転載禁止】
シリアへの移住を呼びかけるウイグル語のナシード。様々な国からの戦闘員や子どもの姿が映し出され、「家族移住」を意識させる内容になっている。ウイグル語はトルコ系諸語のカザフ語やトルコ語にも近く、そうした国々の若者にアピールする効果も意図されている。シリア内戦には早い段階からイスラム系武装組織に東トルキスタンウイグル諸派が合流しており、ISのウイグル人「取り込み」は比較的遅かったと言える。

f:id:ronahi:20160202023732j:plain写真は、シリア入りしISに家族で合流したと見られるウイグル人グループ。このほかIS以外の武装組織にもウイグル人が合流しており、子どもも含めて相当数がシリアに入っていると見られる。東トルキスタンイスラム勢力の「囲い込み」の点ではISは出遅れたといえる。だがISは資金力や支配地域の基盤の強さから「家族移住」という戦略を積極的に押し出し、ウイグル人勧誘の動きをすすめつつある。(IS映像 2015年)

f:id:ronahi:20160202023747j:plainウイグル人戦闘員の自爆もあいついでいる。自爆要員となって死ぬと「殉教者」として宣伝に利用される。写真は昨年11年にイラク・サラハディンでイラク軍拠点への自爆車両突撃で死んだ戦闘員。アブ・アブドラ・トルキスタニとあるので、ウイグル人と思われる。(IS映像 2014年)

f:id:ronahi:20160202023759j:plain中央アジアのカザフ人やウズベク人の家族移住は2013年ごろから確認されていた。彼らはラッカに集められたとみられるが、最近あいついで公開されたウイグル人が登場する映像は、ISのアレッポ広報部制作となっている。ウイグルの子どもたちが支配地域の学校で授業を受ける様子も映っており、ウイグル家族を受け入れる拠点のひとつがアレッポ県内にあるのではないだろうか。そうであれば支配基盤のある町マンビジとみられる。写真は「トルキスタン同胞へのメッセージ」とする映像に登場する女児。ウイグル人と思われる。(IS映像 2015年)

ウイグル語による歌「来たれ、友よ」では、イスラムの法(シャリーア)に統治される信仰共同体(ウンマ)に参集せよ、と繰り返し呼びかける。

一切の財産や執着を捨て、「新しき村」や「コミューン」のような理想郷を思い見て、若者たちが集った例はどこの国でもあるだろう。 だが、ISはシリアへの移住を「ヒジュラ」と呼んで宗教的意味を持たせ、「カリフ=バグダディ師のもとに結集して国づくりをすること」を、あたかも信仰上の義務であるかのように見せかける。

「来たれ、友よ」の映像で気づくのは、様々な国の人種、民族の戦闘員や子ども姿を入れ込み、世界中からIS支配地域に集っていることを印象付ける編集に仕立ててあることだ。ISの映像に女性が映ることはないので、父親と幼い子どもがほとんどだが、それでも家族でシリア入りした外国人の多さがわかる。

家族も含めたウイグル人がIS支配地域に入るほぼ唯一の経路はトルコである。国際社会の批判を受けたトルコは、国境管理を厳しくする措置をとったものの、実際には国境線にはさまざまな抜け道があり、地元には支援者や斡旋業者もいる。

トルコ系イスラム教徒同胞としてウイグル人が中国での迫害に抗する運動をしていることに共感するトルコ国内の民間組織も多く、彼らの手引きのもとシリア入りすることも不可能ではない。

◆中国がウイグル住民弾圧の口実にする懸念も
中国・新疆で弾圧を受け、同化にさらされ、宗教的、民族的権利を制約されてきたウイグル人のなかには、こうした宣伝に感化されるものも出てくるだろう。ISはそうした人びとの思いまで過激主義にからめとろうとしている。

ISは、欧米とそれに追従するとみなす国(日本も含む)はサリビーン(十字軍同盟)と規定しているが、中国政府に対しては「共産主義者のクッファール(アッラーを信じぬ者)」と別の呼称を用いている。 このかんの映像はいずれもウイグル人にシリア入りを呼びかけるもので、ISが東トルキスタンに運動を広げるとか、中国政府を明確に攻撃対象とするような姿勢を押し出してはしない。とはいえ将来はISが中国への浸透や、関連機関攻撃を視野に入れることも十分ありうる。

主要なウイグル団体は「過激主義はウイグル人の人権運動とは別物」としており、一部がISに参加したことをもってウイグル人全体が過激主義を支持していると見るべきではない。 しかし今後、中国共産党政府が、ISとの関与を口実にして国内のウイグル人弾圧を拡大させ、正当化することも懸念される。 IS問題が中東だけでなく、ヨーロッパやアフリカにも飛び火するなか、中国にもその影響が及ぼうとしている。 

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