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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

【IS映像・日本語訳】イスラム国(IS)戦闘員の「忠誠式」とは

◆IS関連

どこの国の軍隊でも、入隊や新兵着任にあたってはたいてい宣誓式というのがある。米軍は「私は、国内外のあらゆる敵に対し、合衆国憲法をささえ、守ります」から始まる誓いだ。自衛隊の場合は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め」という服務の宣誓である。じつは武装組織イスラム国(IS)の戦闘員も、入隊するときに宣誓の言葉を唱える。これはバヤア(忠誠)と呼ばれる。 

IS動画に映る宣誓式の部分を1分ほど抜き出してみた。約10人前後の分隊で円陣を組んで右手を重ねあい、忠誠を唱和する儀式をおこなう。映像の冒頭の茶色い髭の男は、グルジア出身のアブ・オマル・シシャニ司令官。映像の若者たちのほとんどは、コーカサス中央アジアから参加したと見られる。

〔動画〕「バグダディ師への忠誠」 (一部意訳・転載禁止)
『アミール(指導者)、アブ・バクル・バグダディ・アル・クライシ師への忠誠。師(の言葉)を聞き、従う。順境にあっても、逆境にあっても。 盛隆にあっても、苦難にあっても。無私の心をもって。命令を下す地位にある者の取り決めに不和をなすことはない、アッラーからの証しがあるものに明確な背信があったときを除いて。タクビール!(アッラーを讃える唱和) アッラーは偉大なり!』 

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ISが「アミール・アル・ムッミニーン(信徒の長)」とし、スンニ派カリフと呼ぶアブ・バクル・アル・バグダディ・アル・クライシ師。本名はイブラヒム・アワッド・アル・バドリだが、預言者ムハンマドにつながるクライシュ族を呼び名に入れることで、ISが一方的に宣言した「カリフ制国家、イスラム国」の指導者であることを正統だと印象づけようとしている。クライシュ族とどの程度の縁が実際にあるのかは不明。この忠誠の言葉の原型はハディース(言行録)にもその一部が見られ、ISが独自に作ったというわけではない。バグダディ登場以前の「イラクイスラム国」(ISI)の頃にも使われていたが、現在はバグダディの名前を最初に冠して唱和が始まる。

この忠誠の言葉は入隊時だけでなく、突撃作戦で仲間どうしで士気を高める際や、集会で高揚したときなどにも唱和される。さらに、ISに制圧された町や村では部族長老や住民の男たちが集められ、この言葉を言わされる。シリア北部のクルド村の住民がモスクで唱えさせられている映像では「こうしてここの住民も忠誠を表明した」と強調されていた。拒否すれば背教者として処刑されるのだから、人びとは従うしかない。

こうした忠誠をもって、バグダディ師を指導者とする「スンニ派カリフ国家」の建設を押し出したことが、他のスンニ派武装諸組織と大きく差をつけた要因となったと言える。 バグダディのもとに忠誠を表明し、「我々は不和をなすことはない」と唱えているものの、ISの地方組織では部隊どうしで主導権や資金繰りをめぐって戦闘まで起きている。 


リビアやイエメンでも武装組織が忠誠を経て、ISに組み込まれた。最近ではナイジェリアのボコ・ハラムやフィリピン南部のアブ・サヤフ系部隊を名乗る組織がこのアラビア語の忠誠の言葉を読み上げている。この動きは忠誠はシリア、イラクを越え、各地に広がりつつある。今後は、バグダディに忠誠を表明する若者たちが、その地で過激な襲撃事件を引き起こす事態があいつぐかもしれない。

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