イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

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〔シリア・イラク〕 イスラム国(IS)日本人人質事件(10) 日本人殺害「声明」全文

◆IS・日本人殺害「声明」ダービク巻頭言・全文(日本語訳)
ISは2月12日、機関誌ダービク(DABIQ・英語版)の巻頭言で、日本人人質、湯川遥菜さん、後藤健二さんの殺害に関する文書を公表した。2ページにわたるその全文をここに掲載する。この文書には「今後、日本人も攻撃対象とする」の記述も見られるなど、日本に関するISの方針が見て取れる。この「巻頭言」をどう読むか、については、次回の【解説】で記述するのであわせてお読みいただきたい。 【翻訳:坂本・原文は英語。宗教的な表現も多用されているため、一部、補足の上、平易に意訳した箇所もあります】

ダービク(DABIQ) 第7号 巻頭言【全文】 
「日本が我々に何の関係があるというのか?いったい誰が、この困難で、力強く、そして苛烈な戦争のなかに...、そしてパレスチナのわが息子たちに対する犯罪のなかに、日本を引きずり込んだのか?日本は我々に対する戦争の道に入り込むことを避けることはできぬ。それゆえに、自身の立場をあらためて考え直すべきなのだ。遠き南の地にあるオーストラリアが我々に、そして無力なアフガニスタンパレスチナの人びとに、いったい何の関係があるというのか?不信仰者、十字軍たること以外に、ドイツはこの戦争に何の関係があるというのか? リチャード獅子心王や、神聖ローマ皇帝(フリードリヒ1世赤髭王)、ルイ・ド・フランスらの軍勢に率いられた過去の十字軍の再来ではないか。ブッシュが十字紋を振りかざしたのに応じ、いま再び、十字軍の同盟国どもが馳せ参じた。この十字軍にアラブ諸国はいったい何の関係があったというのか?なぜゆえ彼らは白昼堂々と恥ずかしげもなく身を晒し、公然と十字軍に加わったのか?それはこのアラブの者どもが十字架の支配を喜び、歓喜したからなのだ。」 (インタビュー:2001年10月)


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IS機関紙・ダービク第7号表紙。 全83ページからなり、ヨルダン人パイロット 焼殺やフランスのシャルリー・エブド襲撃 事件などが特集されている。

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首長オサマ・ビン・ラディン(彼に神の慈悲が与えられんことを)が、上記の言葉を述べたのは13年前である。アフガニスタン侵略に向けて十字軍連合にあまたの国々が集結したときのことである。日本は非キリスト教国でありながら、そしてその「平和主義」憲法にもかかわらず、さらにアフガニスタンからはるか遠くの地にあるにもかかわらず、この十字軍に参加した。

当時の愚かなる首相 - 小泉純一郎-は西洋十字軍諸国の軍勢どもに、後方支援をおこなった。イスラム教徒に対する十字軍同盟に参加することで、日本はいったい何を手にすることができるなどと期待していたのか? それ以降、日本は - 小泉のリーダーシップの下 - イラクでの十字軍に加わり、その十字軍を支えるために、イラクに「自衛」隊を派兵したのである。さらに、首長アブ・ムサブ・ザルカウィ(彼に神の慈悲が与えられんことを)指揮下のジハード戦士たちが、日本人の十字軍尖兵、香田証生を捕らえ、日本の軍隊がイラクから撤退しなければ処刑すると突きつけた際、日本は「テロリスト」には屈しないなどと不遜にも言い放った。それゆえ、ニック・バーグ、ケネス・ビグリーを含む十字軍同盟に属する捕虜に対しなされた処断と同様、香田の首は切り落とされたのだ。

それからほぼ10年たった今、「平和主義国」日本は、イスラム教徒に対するあらたなる十字軍に分け入ることをもって、再び道理に反する道を選択したのだ。そして今度は、「ノーベル平和賞」の受賞者、オバマのリーダーシップの下においてである。すなわち、こうして「平和」国家が、最初から敗北することが分かりきっている戦争へと、ノーベル「平和」賞の受賞者によって導かれたのだ。2億ドル以上をイスラム国との戦争に使うと広く明言することをもって、安倍晋三は日本がどんな利益が得られるなどと思ったのか?わがカリフの国が怒りを知らぬ無邪気な相手だとでも思っていたのだろうか。

わがカリフ国のシナイ県の兵士たちに戦争を仕掛ける圧政者、シシ(訳注:アブドルファッターフ・シシ・エジプト大統領)が用意した演壇に立ち、無分別な宣言をするほど(安倍は)傲慢に成り果てたのか?  日本人2人をイスラム国が捕虜とし、日本の指導者の失態の成り行きを見守っていることを、彼(安倍)は「忘れ去る」などということがどうしてできたのか? アッラーを信じぬ救いようのない輩徒どもが、アッラーの御手なる(はから)(ごと)からひとたりとでも安堵できるなどあろうものか。ゆえに、イスラム国は2億ドルの要求を日本政府に突きつけた。それはすなわち日本の首相が、十字軍と背教の輩徒どもに対し、なにより先に約束したのと同じ額である。わがカリフ国は、そもそもカネなど必要とはしておらず、日本がそのような額を支払うことなどないと我々はすでに承知していたのだ。
しかしながら我々は、- この要求を突きつけることによって - 第2次世界大戦このかた、西側に隷属する各国政府に首を並べる日本政府のその傲慢さを、恥辱にまみれさせんと、この断を下したのである。

最初の通告期限を過ぎたのち、ヨルダン背教政府に日本の代表特使が慌てふためき駆けつけるなか、日本人の捕虜、湯川遥菜は処刑された。イスラム国は、後藤健二と引き換えに、10年にわたりヨルダン圧政政府によって投獄されている聖戦士、サジダ・アル・リシャウィを釈放し、わがカリフ国の地に移送するよう求めた。ヨルダン政府は愚かにも、パイロットの引き換えを持ち出すことによって、日本人捕虜のための交渉を複雑化させたのだ。

我々は、背教徒パイロットとほかの計略が策謀されていたことを知り、ゆえにヨルダン圧政者の代理人- アシム・タヒル・アル・バルカウィ - とのこの交渉を、わがカリフ国はきっぱりと拒否したのだ。そして最終的に、両政府がイスラム国の警告に耳を貸そうとせず、無視をしたことをもって、バルカウィを雇った背教徒と、日本人捕虜の両方ともが処刑されたのだ。後藤健二、ならびに背教徒パイロットの親族が非難の矛先を向けるべきは、アメリカの十字軍どもに取り入り、奉仕する、自国の政治家どもに対してである。

安倍晋三による、この十字軍支援の無分別なる宣誓がなされる以前は、日本はイスラム国の標的のトップリストには名を連ねてはいなかった。だが、安倍晋三のその愚かさゆえ、今後、すべての日本国民とその権益が - それがどこであろうと見つけ次第 - あらゆる場所で、わがカリフ国の兵士たち、そしてその協力者たちの標的となるのだ。 日本はついに、困難な状況へと陥った。この脅威からどのように逃れられるのか? 安倍晋三が、わがカリフ国の憤怒の前に傲慢にも投げ晒すことになった自国民を、何らかの手立てでもって救うことができるか? 

侮辱的かつ傲慢なる宣言をおこなった安倍は、イスラム国に対するこの戦争への(日本による)支援を中止する勇断を広く宣することができるか? いや、そのようなことは、はなはだ疑わしいことだ...。 わがカリフ国の剣は、いまや鞘から引き抜かれた。アッラーの全能と御力をもって、アッラーを信じぬ日本の輩徒どもに対しては、いついかなるときでもその刃が向けられる状態となったことを(安倍は)国民の肝に銘じるよう周知せねばならなくなったのだ...。

【訳注1】 カリフ国:カリフとはもともと預言者ムハンマド亡きあとのイスラム共同体(ウンマ)、またはイスラム国家における最高権威、指導者の称号。イスラム国(IS)は、指導者バグダディ師をカリフとし、シャリーアイスラム法)に統治されるスンニ派イスラム国家の建設を掲げている。とくにバグダディ師が公然と姿を現した2014年以降は、「カリフ国」(カリーファまたはヒラーファ)という表現が目立って使われるようになっている。


【訳注2】アシム・タヒル・アル・バルカウィ:本名アブ・ムハンマド・アリ・マクディシ。1959年生まれのイスラム法学者ヨルダン川西岸ナブルス出身。現在も過激派勢力に思想的影響力を持ち続けている。ザルカウィ組織の精神的支柱となったと言われるが、のちにシーア派攻撃を志向したザルカウィと対立したとされる。ヨルダン当局に逮捕されたが2014年に釈放される。ISに拘束された英国人の人道活動家ヘニング氏については、「ムスリムのための慈善活動に献身的に従事した人物であり解放を求める」としたが、ISは2014年10月に殺害した。バルカウィ師は今回の人質解放交渉で仲介役のひとりとされたが、ISは「ヨルダン背教徒政府の使者だ」などとし、事件後、同師を批判するビデオ、文書をあいついで公表している。


【訳注3】DABIQ(ダービク): ダービクとはシリア北部アレッポ近郊の小さな町の名前。アルマゲドンに関するハディース(預言者の言行録)で、「イスラム教徒とローマ(いわゆるキリスト教徒の十字軍)の最終決戦の地」として言及されているとして、ISの機関誌にその名がつけられたとされる。ダービク誌の冒頭には毎号必ず、「イラクから火の手は上がり、十字軍どもをダービクで焼き尽くすまで炎は燃え続ける」と、イラクの聖戦アルイカイダ指導者であったアブ・ムサアブ・ザルカウィの言葉が記されている。
(つづく) (2015/02/22)

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