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イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

イスラム国(IS)・イラク・シリア・クルド情勢

〔シリア・イラク〕 イスラム国(IS)日本人人質事件(4) ISとの「交渉」とは

◆IS関連

◆交渉の可能性は捨てない
人質事件で武装組織イスラム国(IS)は、再びメッセージを公表し、ヨルダンまで巻き込んで日本を揺さぶり続けている。人質解放交渉というのは難しい。人命を楯にされ、殺すと脅迫されながら、同時に相手を「信頼」することを強いられる。 例えば、銀行強盗の立てこもり事件の場合、警察に包囲された犯人は、逃亡のための切り札である人質を殺してしまうと、その場で警察に突入されてしまう。ゆえに人質はギリギリまで生かしておく必要性に迫られる。警察は犯人を刺激しないよう説得を試み、時間を引きのばし、食事をよこせと求められたら差し入れる。

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1月24日サイト上で公開されたメッセージでは、湯川さんと思われる人物を殺害写真を持つ後藤さんの写真とともに、後藤さんの音声でイラク人女性死刑囚の人質交換要求が出された。後藤さんの顔と首にところどころアザのようなものが見られるのは暴行の形跡とも推測される。

今回は、IS支配地域で人質殺害が予告されている。「交渉に応じれば、解放するし、応じなければ殺す」というのが彼らの立場で、日本人人質に自ら手をかけたとしてもたいした損失ではない。それが今回の交渉を難しくしているところだろう。 24日、後藤さんの肉声と思われる音声メッセージがIS系サイトにアップされ、身代金ではなく後藤さんとイラク人女自爆未遂犯サジダ・アル・リシャウィ死刑囚との引き換え要求が出された。もちろん後藤さん解放のチャンスに望みを託し、交渉を模索することは続けるべきという前提での話だが、ISという組織は交渉が通じる相手なのかどうか、も押さえておきたい。

昨年、イラク北部の大都市モスルがISに制圧された際、キリスト教徒は恐怖した。逃げる余裕のなかった住民は町にとどまるしかなかった。ところがキリスト教徒地区にやって来た戦闘員は丁寧な物腰で住民に接し、それまでの凶悪集団のイメージと違う彼らの姿に誰もが驚いたという。だが1か月半後に突然、キリスト教徒追放を宣言、家も財産もすべて没収した。少数宗教ヤズディ教徒の町を襲撃した際も、家に白旗を掲げれば手荒なことはしない、と布告し、住民はそれに従い降伏したが、少女を含む女性達が何台ものバスで強制連行され奴隷として戦闘員に分配され、いまだに多くが行方不明だ。2004年のファルージャでの高遠さんらの日本人3人の人質事件では宗教指導者や部族らへの働きかけで、人質は解放された。しかしISはそうした力学で動く相手ではないことを認識していおかなければ交渉に失敗することになる。

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2005年11月のヨルダン・アンマン連続自爆攻撃事件で逮捕されたサジダ・アル・リシャウィ死刑囚。カメラの前で自爆ベルト装着を再現して尋問に答えている。自爆ベルトには爆発時の殺傷力を高めるためのベアリング鉄球数百個が仕込まれていた。(ヨルダンTV映像)

こうしたISの側面を見ると、ヨルダンが死刑囚釈放の要求を受け入れようとも、人質が解放されるかどうか、明確な保証があるわけではない。合意しておきながら、約束を反故にして殺害する場合もある。「逃亡を企てた」や「自殺した」など彼らにはいくらでも理由づけをすることはできる。狡猾な相手だからこそ、どの局面でも楽観できないし、人命を考えて慎重に対応しなければならないだろう。ISの人質事件でも過去には解放に至ったケースもあり、そこは銀行強盗の立てこもり犯を相手にするのと同じで、交渉の糸口さえ見つかれば解放の可能性も開けてくる。

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ISは先月24日にラッカで墜落したヨルダン軍機パイロットを拘束している。後藤さんに加え、このヨルダン人パイロットと、リシャウィ死刑囚との「パッケージ」交換で人質解放があるのではないかという憶測も出ている。(IS映像)

音声メッセージの声が後藤さんとすれば、あの文章は間違いなく読まされているのだろう。「すべての責任は自分にある」としてある意味で死をも覚悟して現地に入っていった後藤さんが、ISの言うままに日本政府を脅迫するようなメッセージを読むだろうかと最初は思ったが、ISは、本人が拒否しても、「お前がメッセージを読まなければこの子どもを殺す」と目の前で子どもに銃を突きつけることさえやる集団である。あのようなメッセージを読まされた後藤さんの心中は複雑だったに違いない。 (つづく) (2015/01/26)
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